Tリーグ4季目にして、初のプレーオフファイナル進出を果たしたT.T彩たま。その躍進の立役者となったのが曽根翔(愛知工業大)だ。“快速ブルドーザー”という異名を持つ19歳の若武者は、威力満点のバックハンドドライブやチキータで数々の強敵を打ち破…

Tリーグ4季目にして、初のプレーオフファイナル進出を果たしたT.T彩たま。その躍進の立役者となったのが曽根翔(愛知工業大)だ。

“快速ブルドーザー”という異名を持つ19歳の若武者は、威力満点のバックハンドドライブやチキータで数々の強敵を打ち破ってきた。シングルスでは張本智和(木下マイスター東京)、戸上隼輔(琉球アスティーダ)らに勝利し、11勝をあげ、後期MVPを受賞している。

今回、曽根のお父さんが卓球場をオープンしたとのことでお邪魔させてもらい、曽根に今季の活躍について話を伺った。




【曽根翔(そね かける)】2002年12月1日生まれの19歳。愛工大名電中高を経て、現在愛知工業大学1年生。TリーグT.T彩たまでは2020-2021シーズンにはダブルスでベストペア賞、2021-2022シーズンにはシングルス11勝をあげ後期MVPを獲得した。持ち味は恵まれた体格から放たれる威力抜群のバックハンドやチキータ。

今季躍進の裏に2つの理由




写真:Tリーグファイナルでの曽根翔(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

――この1年は手応えのあったシーズンだったと思うのですが、どうでしたか?曽根翔:2つきっかけがあって、1つはラケットです。

Tリーグ開幕から9月3連戦で不甲斐ない試合をしてしまい、4試合目はベンチ入りだけでした。その際に、ラケットの話を岸川さんとして、岸川さんのラケットをお借りしてから、全日学では戸上選手に負けちゃったんですけど、手応えがありました。




その全日学では曽根翔のベンチに坂本竜介氏が入った

――ラケットを変えたということですか?曽根翔:いや、同じゼクスギア アウトなんですけど、硬さが全然違って。岸川さんのゼクスギア アウトは自分のより柔らかくて安定していたんで、そっちの方に変えたらよくなりました。




全日学では戸上隼輔(明治大)にフルゲームで敗れた

――同じラケットでも個体差でそこまで変わるものなんですね。

もう1つのきっかけは?

曽根翔:世界選手権のスパーリングパートナーとして同行してそこで得られたものが大きかったです。トップ選手のプレーだったりとか、画面越しじゃ見られない中国選手の調整などを見られ、すごく勉強になりました。




写真:世界選手権ヒューストン大会の様子/撮影:ラリーズ編集部

――具体的には中国選手のどこが参考になりましたか?曽根翔:練習を見ていても全く無駄な練習がなく、自分が試合で調子を上げるための調整をわかっているんだなというのが見てて、すごく勉強になりました。

それが、帰国後の12月20日のTリーグの戸上選手との試合で活かせて勝てました。そこからも波に乗って、このシーズンは自分の実力以上のものが出せたかなと思います。




Tリーグ4thシーズンではシングルス11勝5敗、ダブルス4勝5敗の成績を残した

コロナ禍の転機

――曽根選手は、高3のインハイが中止、今年の全日本も棄権とコロナに狂わされている印象があります。曽根翔:高校2年生の最後から1か月半くらいは、愛工大名電高校から実家に帰っていました。元々兵庫出身でしたが、愛知県に引っ越してきて、卓球台もなくて練習できる場所もなくて、何もできないまま1ヶ月半が過ぎました。

その途中に今枝一郎先生から「インターハイが中止になりました」というメールが来て、なるかなと思っていたので「仕方ない」と気持ちは切り替えられました。




写真:曽根翔(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

曽根翔:試合がなくなった分、NT(ナショナルチーム)合宿にたくさん呼んでもらえて、そこで日本のトップ選手の球を受けられて、成長することができました。――試合がなくなったネガティブな面だけでなく、ポジティブな面もあったんですね。曽根翔:試合がない分、自分の強化ができたんでそこは良かったかなと思います。




写真:曽根翔(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

――ただ、モチベーション維持は難しかったのではないでしょうか?曽根翔:その時は本当に難しくて、次の大会もわかりませんでした。何を目指しているのかがわかりませんし、試合がないので自分の実力が上がったのかもよくわからない状態でした。

ただ、12月にT.T彩たまにお誘いいただいて、試合に出させていただいたおかげで、勝ちたいという気持ちがどんどん大きくなっていっていきました。




Tリーグファイナルでも起用され、T.T彩たまでレギュラーを掴み取った

今のモチベーションは?




写真:LION CUPでの曽根翔(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

――今は卓球に対してどういうモチベーションですか?曽根翔:今はパリ五輪選考会が始まったり、次も国際大会に自費参加できたりするので、そういった大会に向けてモチベーションを持って卓球をやっています。――第1回のパリ五輪選考会は張本智和選手が優勝してますし、直近の全日本選手権では戸上隼輔選手が優勝しています。昔から曽根選手は各大会の上位でその二人に阻まれている印象もありますが、彼らはどういう存在ですか?曽根翔:自分とほぼ同世代で、日本のトップになったり、世界選手権に出たりしているので一番の目標というか。

その二人だったりトップの人を倒さないと代表になっても試合に出られないと思うので、その二人を倒すのが目標というか今のモチベーションですし、ありがたい存在です。




Tリーグファイナルでは張本智和に敗れた

卓球場をオープン

――Twitterで「今年は変化を楽しみたいと思います。曽根翔動きます!」とありましたが、あのツイートの意図は?

曽根翔:父親が卓球場を開きます、ということですね。




写真:3月7日オープンのS_ONE卓球スタジオ/撮影:ラリーズ編集部

――曽根選手は今後このS_ONE卓球スタジオとはどういう関わり方でいくんでしょうか?曽根翔:親からは月1くらいで愛工大の練習が休みの日に帰ってきてちょっと見る感じで、とは言われてるんですけど、まだ具体的には決まってないですね。




実際に指導にあたることも?今回はバックハンドドライブなどを習いました(詳しくは動画で)

――もしかしたら曽根選手のレッスンや講習会が月1くらいであるかもしれないんですね!大きなアピールポイントですね。曽根翔:そうですね。いつ来るかはわからないんですが、自分が来れるのがアピールポイントです。

現役選手でそんなに卓球場に来るのは少ないと思うので。




写真:卓球台6台が置かれ、赤マットでプレーできるS_ONE卓球スタジオ/撮影:ラリーズ編集部

曽根翔:ちょっと自分も始めるの早すぎるんじゃないかなと思ったんですけど(笑)。もうちょっと強くなってからでも…と思ったんですけど、これから自分が名をあげれば人ももっと来てくれると思うので、そこが新しいモチベーションにもなっています。




写真:曽根翔(愛知工業大)/撮影:ラリーズ編集部

取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)