2022シーズンF1注目ポイント@前編 待ちに待った2022シーズン開幕。ホンダF1が有終の美を飾ってから早3カ月、最速を目指す世界各国のトップドライバーが再び集結した。バーレーンGPから始まる今季23戦のレースでは、果たしてどんなドラマが…

2022シーズンF1注目ポイント@前編

 待ちに待った2022シーズン開幕。ホンダF1が有終の美を飾ってから早3カ月、最速を目指す世界各国のトップドライバーが再び集結した。バーレーンGPから始まる今季23戦のレースでは、果たしてどんなドラマが待ち受けているのか。今季F1を楽しむ注目ポイントをピックアップする。

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昨季初のF1王者に輝いたフェルスタッペン

(1)マシン完全刷新によって勢力図は一変?

 2022年はマシンが完全に刷新されることにより、F1勢力図は大きく動くと予想されている。新レギュレーションをうまく解釈すれば中小チームでも一気に飛躍することが可能で、逆に解釈を誤ればトップチームでも大きくつまずくこともあり得るからだ。

 もちろん、トップチームは強力な設備と人材、そして長年にわたるノウハウの蓄積があるため、大きな崩れはないかもしれない。だが、コストキャップ(予算制限)や空力テスト制限があるため、出遅れからの挽回はそれほど容易ではないと見られている。

 開幕前テストでは、アグレッシブなマシンを投入したもののポーパシング(バウンシング)の問題を解決できず、マシン本来の性能を引き出しきれていないメルセデスAMGは、開幕からトップ争いは難しそうだ。

 逆にレッドブルとフェラーリは、それぞれまったく異なる設計哲学であるものの、いずれも順調な走行で開幕前テストを締めくくっている。まずは彼らがトップ争いの常連になりそうな予感を漂わせた。一方の中団グループでは、マクラーレンやウイリアムズ、アルファロメオが最後に好調さを見せてきた。

 ただし、今年はあまりにマシンが大幅に変わったため、開幕前テストのプログラム内容がチームによって大きく異なっており、レースシミュレーションなどを通しての相対評価は非常に難しい。自己ベストタイムも参考にはなるが、各車の燃料搭載量やパワーモードがわからず、パワーが10kW違えばタイムは0.25秒、燃料の重量が30kg違えばタイムは1秒近く違ってくるからだ。

 テスト最終日の最後に見せたマックス・フェルスタッペン渾身のアタックが昨年の2.7秒落ちということからも、マシン側ではまだまだマージンを残して走っていることは間違いなさそうだ。逆にマクラーレンのように、トラブルに見舞われて十分なテストが完了できていないチームもあり、彼らは開幕戦の金曜フリー走行でやらなければならない作業がまだまだあるだろう。

「フタを開けてみるまでわからない」というのが開幕前の常套句だが、例年ならばテスト内容からある程度の予想はできる。しかし2022年の勢力図は、本当にフタを開けてみるまではまったくわからない。バーレーンGPの予選が始まってみなければ、真の勢力図はわからないと言える。

(2)グラウンドエフェクトカー導入で超接近戦が増加?

 2022年に導入されたグラウンドエフェクトカーは、前走車から受ける乱気流が少なく、さらに前後ウイングよりも乱流の影響を受けにくいフロア下でダウンフォースを生み出すため、接近戦が可能だ。さらにタイヤも2022年は、多少のスライドではオーバーヒートしづらく、多少の温度上昇ではグリップを失わないように設計されている。

 テストでも時折、その影響を確認するように2ワイド(2台並走)や3ワイドで走るドライバーたちが見られた。実際に乱流によるダウンフォースロスや突然のスライドは少なくなっているという。そしてサイドウォールが短いタイヤゆえに、滑り出しても急激にスナップせず、ドライバーがステアリング修正で対処することも可能だ。

 もともとが空気抵抗の少ないマシンだけにスリップストリーム効果の減少が懸念されたが、バーレーン合同テストを見るかぎりではメインストレートやターン4でのDRS(※)を使ったオーバーテイクも可能だ。一度抜かれても前走車についていけるため、次のDRS区間で抜き返すといった場面も見られた。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 今年はまさに「抜きつ抜かれつ」のバトルが見られそうだ。

 つまり、一度抜いたらそれでオーバーテイク完了というわけではなく、その後に抜き返されないような駆け引きが必要で、バトルの仕方もこれまでとは少し違ってくるだろう。そのあたりのドライバーたちの工夫も見どころになる。

(3)「フェルスタッペンvs.ハミルトン」ドライバーズチャンピオンの行方は?

 ドライバーズチャンピオンの最有力候補が、昨シーズン異次元の戦いを繰り広げたマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンであることは間違いない。ドライバーの腕という点でも、長いシーズンを高いレベルで戦い続けるという点においても、抜きん出た力を持っているのがこのふたりだからだ。

 もちろん、レッドブルの同僚セルジオ・ペレスも今季は加入2年目で、チームとの親和性も向上している。オーバーステア傾向がひどくない2022年型マシンなら、彼の実力もしっかりと発揮できるはず。

 一方、メルセデスAMGも若手ジョージ・ラッセルの躍進に期待がかかる。開幕時点ではトップ争いに加わることはできないかもしれないが、ポーパシングが発生していないコーナーでの車速は高く、いずれこの問題も解決して実力を発揮してくるだろう。

 メルセデスAMGはシーズン序盤に勝てないなかでも、ダメージを最小限にとどめることができれば、シーズン中盤戦以降のタイトル争いに入ってくることも可能だ。

 対してフェラーリは、今季躍進する期待が高い。マシンの出来によっては、シャルル・ルクレールとカルロス・サインツがタイトル争いに加わってくるかもしれない。

 ただし、ルクレールは2019年以降の勝利がなく、サインツも未勝利で、勝ち方を知っているドライバーもいなければ、タイトル争いの経験もない。それは現在のチーム主要メンバーにも言えることで、マシンの性能向上とともに争う位置が変わってくればレースの戦い方も違ってくる。そこにチームとドライバーがいかに素早く適応できるかが勝負になるだろう。

 総じて言えば、現段階ではカーナンバー1をつけたフェルスタッペンが最もチャンピオンに近い位置にいるように見える。しかし、そのリードはあっという間になくなり逆転され得るのが2022年シーズンであることは、レッドブルとフェルスタッペン自身が最もよくわかっているはずだ。

(中編につづく)