2022シーズンF1注目ポイント@後編 待ちに待った2022シーズン開幕。ホンダF1が有終の美を飾ってから早3カ月、最速を目指す世界各国のトップドライバーが再び集結した。バーレーンGPから始まる今季23戦のレースでは、果たしてどんなドラマが…

2022シーズンF1注目ポイント@後編

 待ちに待った2022シーズン開幕。ホンダF1が有終の美を飾ってから早3カ月、最速を目指す世界各国のトップドライバーが再び集結した。バーレーンGPから始まる今季23戦のレースでは、果たしてどんなドラマが待ち受けているのか。今季F1を楽しむ注目ポイントをピックアップする。

「今季F1フェルスタッペンの対抗馬は?」
「新生ホンダも2025年までサポート、再びF1参戦の可能性も?」

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2020年にはアルファタウリでF1テストも経験した佐藤万璃音

(7)コロナ禍を乗り越えてF1史上最多の23戦は実現するか?

 2022年は史上最多23戦を転戦するカレンダーが予定されていた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、FIA(国際自動車連盟)はロシアGPの開催を見送る決定を下した。

 しかしF1としては、グレード1認証を持つサーキットでの代替戦を新たにカレンダーに組み込み、シーズン23戦を維持したい構えだ。レース数が増えれば増えるほど開催権料やスポンサー収入、そしてファンへのリーチが増えると考えているからだ。

 昨年はコロナ禍の影響でオーストラリアGPや中国GPなどがキャンセルとなり、前半戦はヨーロッパを中心としたカレンダーになった。後半戦はシンガポールGPや日本GPがキャンセルとなった一方で、アメリカ合衆国やメキシコ、ブラジルでの開催は再開し、さらにトルコGPやカタールGPを組み込むことで史上最多の22戦を確保した。

 ヨーロッパではすでに、ワクチン接種を軸としてコロナ感染対策規制を緩和する方向に大きく舵を切っている。それに呼応するかたちで、F1も積極的に新たな展開を見せようとしている。

 F1に関わるすべての人を対象にワクチン接種を義務づけ、たとえばメディアもワクチン証明書がなければ取材パスを受け取ることは許されない。昨年終盤戦からはパドックやグリッドの立ち入り規制を撤廃するなど、ヨーロッパ各国の舵取りと同じようにワクチンを接種することで、行動の自由を与えるという方式だ。

 完全なる「ゼロコロナ」を目指して必要以上の対策をするというよりも、何をすれば感染拡大を抑えられるのか、重症化を避けられるのかを科学的に把握したうえで、合理的な対策をする方針だ。

 もちろんパドックでのマスク着用やバブル方式など、各国の規制以上のルールで感染拡大を防いでいる。ただしそのなかでも、たとえば適正にマスクを着用していれば15分以内の会話なら感染リスクはないという科学的知見を反映させて、「バブルのあり方」を見直している。

 つまり、「やってもいいこと」「やらなくてもいいこと」「やってはいけないこと」の線引きを、より現実的に引き直している。これによってF1は過去2年間のコロナ禍シーズン以上に、従来どおりのレースを展開していくつもりだ。

(8)2019年以来、3年ぶりの日本GP開催なるか?

「2019年以来、開催されていない日本GPが今年こそは復活するのか」

 日本のファンの期待は高まっている。それと同時に、不安もある。

 過去2年間もずっとそうだったが、問題は鈴鹿サーキットでもなく、F1でもなく、日本の入国規制だ。

 前項で説明したとおり、F1も欧米諸国もすでに新しいスタンダードに移行している。出入国にワクチンを接種していれば陰性証明や隔離期間は必要なく、新型コロナウイルスとの共存の仕方をここに定めていると言ってもいい。

 それに比べると、日本の入国規制はまだまだ厳しい。3月からかなり緩和されて外国人もビジネス目的の入国は再開しつつあるが、厚生労働省の水際対策は感染状況次第でいつ変更されるともしれず、世界各地を転戦するF1関係者の隔離措置なしでの入国を保証できない。

 この方針が8月まで変わらなければ、仮にその瞬間に入国が可能な状況であったとしても厳しい。10月の日本GPの時点で確実に入国し、すぐに準備作業に取りかかることができると保証できなければ、F1側としては中止リスクのあるグランプリは避けたいと考えるからだ。

 日本政府や厚生労働省が諸外国のような「ウィズコロナの世界観」に踏み出せるか。日本GPの開催可否は、そこにかかっている。3月からワクチン3回接種者の隔離措置がかなり緩和されたことを見ると、その可能性は決して低くはないようにも思えるが......。

(9)次なる日本人F1ドライバーはいったい誰だ?

 2022年のF1には角田裕毅が唯一の日本人ドライバーとして参戦するが、直下のFIA F2にはふたりの日本人ドライバーがF1昇格を目指して戦っている。

 まずひとりは、ホンダとレッドブルの育成プログラムに所属する岩佐歩夢(いわさ・あゆむ/20歳)。昨年はFIA F3で序盤こそ苦しんだものの急成長を見せ、FIA F3王者となったデニス・ハウガー(ノルウェー/19歳)とともにレッドブルジュニアドライバーとしてF2昇格を許された。

 岩佐は丁寧で堅実なレース運びが持ち味。だが、FIA F3のような激しいレースでは積極的すぎるくらいに攻めなければ前に出ることはできないと学び、スタイルをどんどん変えていった。それと同時に、コンサバティブだったチームのセットアップをアグレッシブな方向に変えさせ、予選でも決勝でも高いピークパフォーマンスが発揮できるマシンへと作り替えていった。

 結果はランキング12位と目立たないものではあったが、ハンガリーでは優勝を果たすなど、内容的には十分にレッドブル上層部を納得させるだけのものがあったと言える。

 今季は名門チームのひとつであるDAMSからFIA F2に参戦する。昨年はチームランキング8位と低迷したが、レースペースのよさに定評があるDAMSだけに、岩佐は持ち味を生かしつつアグレッシブなレースを見せてほしい。

 そしてもうひとりは、佐藤万璃音(さとう・まりの/22歳)。育成プログラムに所属せず、自力でここまで戦ってきたドライバーだ。2019年のユーロフォーミュラオープンではスポット参戦の角田よりも速く王者に輝き、2020年末には角田とともにアルファタウリでF1テストも経験している。

 過去2年間は下位チームのトライデントで思うようなレースができていないが、今季は周冠宇(アルファロメオ)が昨年ランキング3位となったUNIビルトゥオーシに移籍。トライデントでは実力を量ることが難しかったが、競争力のあるマシンに乗った彼がどんな走りを見せるのか、非常に楽しみだ。

 現時点でどの育成プログラムにも属しておらずF1チームとのコネクションがない佐藤にとって、F1への筋道はかなり険しい。その状況を打破するためには、F2で初めて乗るコンペティティブなマシンで周囲を圧倒的に驚かせる走りを見せるしかない。そのことは彼自身がよくわかっているはずだ。

 いずれにしても、F1と併催されるF1直下のカテゴリーは、サーキットやタイヤなどF1に向けたいい学習になる。そして今季は1ラウンド3レース制で混乱も少なくなかった昨年とは違い、1ラウンド2レース制に戻る。

 また、予選のトップ10台がリバースグリッドとなるレース1は1位10点から10位1点までと比重が軽く、予選結果どおりのグリッドで行なわれるレース2は1位25点から10位1点までのポイント配分となり、実力が反映されやすい制度に変更された。エンタメ性よりも純粋なレースとしてのあるべき姿だ。

 2022シーズンはそのステージで日本人ドライバーが幾度も日の丸を揚げ、君が代を聴かせてくれることを期待したい。