昨シーズン、小林可夢偉以来7年ぶりの日本人F1レギュラードライバーとなった角田裕毅。デビューイヤーの序盤は苦労も少なくなかったが、シーズン終盤にかけて調子を上げていき、最終戦アブダビGPでは自己最高の4位入賞となった。 日本人F1ドライバ…

 昨シーズン、小林可夢偉以来7年ぶりの日本人F1レギュラードライバーとなった角田裕毅。デビューイヤーの序盤は苦労も少なくなかったが、シーズン終盤にかけて調子を上げていき、最終戦アブダビGPでは自己最高の4位入賞となった。

 日本人F1ドライバーの歴史をたどると、フル参戦を果たしたのは1987年の中嶋悟を皮切りに、鈴木亜久里、片山右京、井上隆智穂、中野信治、高木虎之介、佐藤琢磨、中嶋一貴、小林、角田の10名。1990年には鈴木、2004年には佐藤、2012年には小林が日本人最高位の3位を獲得している。



今シーズンからFIA F2に挑戦する20歳の岩佐歩夢

 現在は角田がファンの期待を一身に背負っているわけだが、彼に続けとばかりに着々とF1の舞台に近づいているドライバーがいる。それが20歳の岩佐歩夢だ。

 大阪出身の岩佐は、両親がレーサーだったこともあって幼少時からカートに乗るなど、物心ついた時からモータースポーツに触れる機会があった。通常なら名門カートチームに所属して腕を磨いていくのが一般例だが、岩佐は親子二人三脚でレースを転戦していった。

「家族みんなで協力してレースを回っていました。親子でやっていた分、技術的なこともわからなかったので、ずっとノーマルなセッティングのままで走って、そのなかで『どうしたら速く走れるのか?』と自分で考えるような癖はついていきました」

 当時はマシンのセッティングに頼るのではなく、自身のドライビングで速さを引き出すことに没頭していたという。

 カートで経験を積んだあと、2017年からフォーミュラカーレースに参戦するチャンスを得て、2018年にはFIA-F4日本選手権にスポット参戦を果たす。しかし結果は振るわず、2019年は鈴鹿サーキット・レーシング・スクール・フォーミュラ(SRS-F)に入校する。

 そこで、同年からSRS-Fの校長に就任した佐藤琢磨の目に止まった。

F1直下のカテゴリーに昇格

 自身の走りを存分にアピールした岩佐は、見事にSRS-Fのスカラシップを獲得。海外のレースに参戦できるチャンスを掴んだ。

 2020年、岩佐はフランスF4にフル参戦。日本からはホンダ育成ドライバーとして佐藤蓮も同シリーズに参戦し、2台とも常にトップ争いに加わるレースを演じた。だが、頭ひとつ抜き出ていたのは岩佐だった。開幕戦でいきなり優勝を飾ると、その後も勝利を重ね21戦中9勝をマーク。佐藤に競り勝ち、シリーズチャンピオンを獲得した。

 この成績が次のステップへの足がかりとなり、翌2021年はひとつ上のFIA F3に挑戦する。これまで多くのF1ドライバーを輩出したレッドブルの若手育成プログラム「レッドブルジュニアチーム」のメンバーに選出され、強力な体制でレースに臨んだ。

 世界各国から将来F1を目指す若手ドライバーが集まるカテゴリーということもあり、FIA F3のレースは毎回熾烈なバトルが繰り広げられる。わずかな差が勝敗に大きく影響し、岩佐はうまく噛み合わないことで苦しむこともあったが、着々と力をつけていった。

 そして、ハンガリーで行なわれた第4戦R1では、序盤からアグレッシブな走りをみせてトップ争いを展開。ライバルたちがトラブルやペナルティで脱落したこともあり、トップに浮上して初優勝を飾った。その後、オランダで行なわれた第6戦R1で3位を獲得するなど、ランキング12位に入る活躍を見せた。

 このFIA F3に先立って、岩佐は2021年1月より開催されたF3アジア選手権にも参戦。優勝こそなかったものの15戦のうち14戦で入賞する安定した走りを披露した。

 注目の2022シーズン。岩佐はF1直下のカテゴリーであるFIA F2に、ついにステップアップする。GP2シリーズ時代に中嶋一貴や小林可夢偉も在籍し、シリーズチャンピオン経験のあるDAMS(ダムス)に加入することが発表された。

F2参戦1年目ながら勝負の年

 1月に行なわれたホンダのモータースポーツ活動計画発表会には、ビデオメッセージという形で岩佐が出演した。SRS-F時代とは違って、引き締まった表情になっていたのが印象的だった。

「昨シーズンはFIA F3にステップアップし、初めてヨーロッパのチームとともに戦い、今までと環境が変わって苦戦した面もかなりありました。そこで戦っていくなかで、ドライビングだけでなく、さまざまな面で学び成長することができました。

 今年はF2に参戦するので、まだまだ勉強中ですが今まで経験してきたことを生かし、少しでもいい成績を残し、角田選手の背中を追えるように頑張っていきます。結果を残していけるように頑張りますので、応援をよろしくお願いします」

 岩佐の言葉からもわかるとおり、角田の存在はかなり意識しているようだ。いつかは自分もF1の舞台に上がり、彼を追い越したいと強く思っている。

 このFIA F2で好結果を残せば、F1のレギュラーシート獲得の可能性は大きくなる。参戦初年度ではあるものの、岩佐にとって勝負の年となることは間違いないだろう。

 角田に続き、新たな日本人F1ドライバー誕生となるか。岩佐の2022シーズンから目が離せない。