西村優菜インタビュー(前編)プロデビューした2020年は樋口久子 三菱電機レディスで初優勝を遂げ、2021年には国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップを含め3大会で優勝を飾った。コロナ禍によって1年半に及ぶ長いシ…

西村優菜インタビュー(前編)

プロデビューした2020年は樋口久子 三菱電機レディスで初優勝を遂げ、2021年には国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップを含め3大会で優勝を飾った。コロナ禍によって1年半に及ぶ長いシーズンで計4勝を挙げた西村優菜は、賞金ランキングでも5位と、シーズン前に掲げていた目標を達成。古江彩佳や吉田優利らとともに2000年に生まれた「ミレニアム世代」の牽引者は、2022年シーズンでは「複数回優勝」「海外メジャーへの積極参戦」を見据え、さらなる飛躍を誓った――。


――ちょうど1年前にも取材させていただきましたが、その時に公言していた

「複数回優勝」「賞金ランキング5以内」という目標を昨年、見事に達成しました。

「まずは目標をクリアできて本当によかった。14試合が行なわれた2020年、初めてシーズンをフルで戦った2021年を通じて、すごく勉強になりました。

 2020年は1勝することができたんですけど、リカバリー率(パーオンしないホールでパーかそれより良いスコアを獲得する率)が悪くて。その数値を上げようとオフに取り組んだ結果、最終的には4位(67.9%)のスタッツで、それが(2021年の)好成績につながったと思います。

 この1年半にいろんな選手とラウンドすることができましたし、他の選手から学ぶこともたくさんありました。とにかく、充実したシーズンを過ごせました」

――2020年は樋口久子 三菱電機レディスで、最終日に6打差を逆転して初優勝を遂げました。デビューイヤーに1勝を挙げられたことは、"2年目(2021年)"を迎えるうえで気持ち的にラクだったのではないですか。

「1勝目は自分でも驚くほどすべてがうまくいった結果。ですから、プロの戦い方がわかったというような感覚はまったくなかったです。1勝はしていても、2021年の開幕戦からはまた、気持ちをリセットして臨むようなイメージでした。

 ただ、初戦は自分の調子が上がらず、2戦目の明治安田生命レディス ヨコハマタイヤでは予選落ちしてしまいました。スコアメイクに苦しんだ序盤でした」

――いわゆる"試合勘を取り戻せていなかった"ということでしょうか。

「オフにしっかり練習はしたんですけど、どこか不安もあって。もちろん、不安は常にあるものだし、これから2022年シーズンを迎えるにあたってもあるんですけど、開幕戦は久しぶりの試合ということで、自分がどこまでできるのか、未知の部分があります。自分がとり組んできたことを信じて思いっきりやるだけだとは思うんですけど、開幕戦はそういうメンタル的な部分での難しさがありますね」

――それでもその後、国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップで優勝。すぐにツアー2勝目を挙げることができました。

「(2021年の)開幕戦からうまくいかない時期が続いてはいたんですけど、だからといってすごく調子が悪いという感触はありませんでした。スコアにつながっていないだけだったんです。微調整を繰り返しながら、重要な試合と位置づけていたメジャータイトルに照準を合わせていました。

 そうして、サロンパスカップの前週のパナソニックオープンレディースで最終日を最終組で回って、優勝争いに加わることができました(結果は10位タイ)。その勢いを、翌週につなげられたと思います」

――最終日は3打差を逆転して優勝。1勝目に続いての逆転勝利となりましたが、やはり追われる立場よりも、追う立場で最終日を迎えるほうが戦いやすいのでしょうか。

「う~ん、どうなんでしょう......。最終組でしたし、コースも難しかったので、『チャンスはある』と言い聞かせてプレーするだけでした。

 サロンパスカップはコース(茨城GC東コース)が難しいですし、距離もありますから、とにかく頭を使った4日間でした。そういった状況もあって、自分がしたいマネジメントがうまくできて、気持ちもコントロールできての優勝だったので、1勝目とはまた違ううれしさがありました」

――プロゴルフ界ではよく「1勝目よりも2勝目のほうが難しい」と言われます。

「正直、それほど時間を置かずに2勝目を飾れたことで、気持ち的にはラクになりました。しかも、メジャー大会に向けてしっかり調整して、その大舞台で優勝できたわけですから」

――以前から「(自らの)飛距離には限界がある」と話している西村プロですが、そのビハインドをものともせず、アイアンショットやショートゲームの精度に活路を見出して、見事にメジャータイトルを手にしました。自信も深まったのではないですか。

「特にサロンパスカップは長いコースでしたし、現に練習ラウンドの時は『本当に戦えるのかな......』と思うくらい、不安を感じていました。でも、マネジメントをしっかりして、アプローチとパターで(パーを)拾っていければ優勝できるんだとわかって、確かに自信にはなりましたね」

――マネジメントで意識するのはどういった点でしょうか。

「難しいコースだと、ピン位置の確認をより重視します。それから(逆算して)ティーショットを打ちます。どこに運べばピンに対して簡単な2打目になるか、常に考えるようにしています。そうやって、できる限りコースが簡単に見えるようにプレーしています」

――台風の影響で36ホールの勝負となった9月の住友生命Vitalityレディス 東海クラシックもまた、5打差を逆転する劇的な展開となりました。

「最終組から1時間近く前にスタートする組で回っていて、優勝はまったく意識していませんでした。前半でパターが入ってくれて、すごくいいスコア(4バーディー、ノーボギーの32)でハーフターンして、とにかくトップ10を目指そうと思って後半に入りました。

 それで、14番あたりでボードを確認した時に、初めて自分が優勝争いしていることがわかって。そこからは(バーディーを)とれるだけとって、ダメだったら仕方ないぐらいの気持ちで、開き直って戦いました(最終スコアは63でツアー自己ベスト)」

――この優勝がきっかけとなって、住友生命保険相互会社とスポンサー契約を結びました。

「ありがたいです。連覇がかかる今年の住友生命Vitalityレディス 東海クラシックはホステスプロとして出場する大会となります。やはり、特別な思いが芽生えますし、モチベーションがひとつ、増えました」

――そして、翌週のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、初日から首位を守る完全優勝で2週連続の勝利を飾りました。

「練習ラウンドの時から『得意コースだな』とは感じていたんです。このコース(利府GC)は起伏のあるグリーンが多くて、ピン位置によって2打目、3打目の置き場所が異なるという、マネジメントが重要になってくる大会でしたから。

 ただ、初日、2日目といいスタートを切れましたが、最終日は(2位と)5打差あった分、余計にプレッシャーを感じて、難しい戦いになりました」

――西村プロはマネジメントが重要になるコースが得意なのでしょうか。

「得意というより、頭を使ってゴルフをするのが好きなんだと思います」

――コースとの相性は、練習ラウンドの時点でわかるものですか。

「大会中のピン位置を想定しながら練習ラウンドをしますが、その時に考えることが多いと、楽しんで試合ができそうだなと思いますね。

 私は練習ラウンドの時に、コースやグリーンの状態を細かくチェックするタイプで、どこにティーショットを置くか、どこに外したらダメか、このピン位置ならあそこに置くとか、事細かく(ヤーデージブックに)メモしています」

――1年半と長いシーズンで51試合に出場し、トップ10に入った回数はツアー2位の22回。それだけ、優勝争いに絡んだということになります。

「最終日をどんな順位で迎えようとも、トップ10を目指してプレーするように心がけていますし、トップ10に入った回数を多く積み重ねられたことが、賞金ランキング5位以内と複数回優勝という目標を達成できた要因だと思います」

――バーディー数もツアー2位の551個。ドライビングディスタンスがツアー64位ということを考えると、驚きの数字です。

「正直、それは自分でも驚いています。もちろん、バーディーをたくさんとれたことがトップ10の回数につながっているんですけど、あくまで自分が意識していたのはトップ10の回数でしたから」

(つづく)後編はこちら>>

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020-2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。逸材がそろう「ミレニアム世代」の代表格のひとり。身長150cm。血液型O。