宮司愛海連載:『Manami Memo』第31回 フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第31回は、北京オリンピックについて。…
宮司愛海連載:『Manami Memo』第31回
フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第31回は、北京オリンピックについて。印象に残ったシーンや約3週間にわたる北京での生活のことなどを振り返ってもらいました。
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北京オリンピックの取材、中継から帰って来ました!
冬季五輪では過去最多、18個のメダルを獲得した今大会の日本。
フィギュアスケート団体の銅メダルや羽生結弦選手の4回転アクセル挑戦、スキージャンプ・ノーマルヒル小林陵侑選手の金メダル、カーリング女子日本代表ロコ・ソラーレ涙の銀メダルなどなど......心に残る場面はたくさんありますが、個人的に最も印象に残っているのはスノーボード男子ハーフパイプ・平野歩夢選手の金メダルです。
3本滑る決勝の2本目、完璧な滑りを見せるも得点が伸びず、悔しさを抱え臨んだ3本目で圧巻の滑り。しびれました。
金メダル獲得会見で「自分だけのルーティンを見せられた」と話す姿に、世界で平野選手たった1人しか大会で成功させていない技『トリプルコーク1440』へのこだわりと、スタイルを貫く強さ、カッコよさを感じました。
さて、今大会は「ゼロコロナ」を掲げる中国のもとバブル方式で行なわれ、選手や関係者の方々はもちろん、取材者に対しても厳しいルールが設けられていました。
今回は、そんな厳戒態勢のなか開催された北京オリンピックの裏側についてお話ししたいと思います。
大変だったのは日々の「移動」
北京入りしたのは、開幕約1週間前の1月29日。
中国から指定された病院で、出国の96時間以内に2回、PCR検査が義務づけられ、アプリを通じての健康管理関係書類の提出や、体温報告などが求められました。念のため検査の2週間ほど前から仕事以外で自主隔離を行ない、無事陰性証明書を手にして北京入りすると、まず空港の様子に驚かされます。防護服姿の職員に、がらんとした空港内。渡航が制限されているため、空港にいるのもオリンピックの関係者のみだったのですが、見慣れない防護服とあまり経験のない物々しい雰囲気に、少し動揺しました。
諸々の手続きと喉と鼻の粘膜の2種類PCR検査を終えたあと、やっと空港を出ることができました。
今大会は「クローズドループ」と呼ばれる、ある一定のエリア内のみで取材活動が許されるバブル方式でのオリンピックだったため、どんなに会場が近くても徒歩で移動することが許されず、バスやタクシーなど車での移動となりました。
メディア向けのバスはさまざまな路線があり、ほぼすべての会場で1時間に1本以上の便が用意されていたのですが、それでも移動が最も大変だったかもしれません。たとえば、拠点のメインメディアセンターからカーリング会場などは歩いて行ける距離にあるのに、バスに乗り規制された道路で遠回りして行かなければならなかったり、試合直後にはメディアでバスが混み合ったり。仕方ないことだと理解してはいましたが、徒歩やほかの移動手段があれば、と思ったのは一度や二度ではありません。
また、メディアセンターはじめ会場の周りはフェンス等で仕切られ、警備員も多く配置されて不思議な雰囲気が漂っており、ホテルの前にも高く頑丈なフェンスが設置されていたため、「ちょっと歩いて買い出しに......」という訳にもいきません。車の窓も開けてはならず、完全に外部と断絶されたオリンピックでした。
もちろん、PCR検査は毎日受けなければなりませんでしたし、陽性となればすぐ隔離用のホテルで隔離となってしまうため、検査結果に毎日冷や冷やしていました。人との接触を最低限にしていてもかかる時はかかってしまうのがコロナウイルス。中でも外でも油断ならない......そんなプレッシャーとともに過ごしていた毎日でした。
ホテル生活で大活躍したもの
次に大変だったのは、やはり食生活。
海外での長期滞在でもっとも苦労するのが食だと思いますが、今回は食事をとれる場所がホテルかメインのメディアセンター、各会場のメディアセンターのみに限られ、選択肢の少なさゆえに気持ちが落ち込んでしまうことも少なくありませんでした。
メインメディアセンターにはロボットが調理する食堂があり、物珍しさから世界的に話題になっていましたが、それをエンタメ的に楽しめた面と、すこし味気のなさを感じる面と、両面あったような気がします。いろいろな国の人たちの口に合うようになのか味は全て薄味で、日本から持って行った調味料が大活躍でした。
料理を運ぶロボットが話題になりました
こんなこともあろうかと、日本からトラベルクッカーとアルミ鍋を持って行ったのは大正解! ほぼ毎朝部屋でお米を炊いてインスタントのお味噌汁と食べ、余ったご飯はおにぎりにして取材現場へ持って行っていました。
トラベルクッカーを持参してよかった!
余談ですが、今回はホテル住まいだったため洗濯も部屋ですることに。ホテルのランドリーサービスを利用してもよかったのですが、時間もお金もかかりますし、身の回りのものはちゃちゃっと洗えたほうがよいなと思い、手回しのバケツ型洗濯機を日本から持って行きました。みんな口を揃えて「脱水がとにかく大変」と話していたので、洗濯から脱水までハンドルを回すだけでできるこの手動洗濯機には助けられました(笑)。
手動洗濯機も大活躍
こうして約3週間北京で過ごして感じたのは、長い期間に渡ってふだんと違う生活を送るなかで、ふだんどおりのパフォーマンスを発揮することの難しさ。
メディアの我々ですら、制限の多さにじわじわと精神を蝕まれるような感覚すら覚えたのに、選手のみなさんはこの状況で自分のベストパフォーマンスを出そうとしているのだと、改めて頭の下がる思いでした。体験してみると、そのすごさがよくわかった気がします。
伝え手として悩んだこと
さらに、今大会は選手のみなさんのパフォーマンス以外のところに注目が集まってしまうことが多い大会でもあったように思います。悲しい気持ちになることも多かったですし、伝え手としてどう伝えるべきか悩むこともありました。
競技特性を踏まえて何が起こったか言葉にすることがこんなにも難しいのかと感じ、ルールが選手の皆さんを守り、気持ちよく競技するために導くものであってほしいと心から思いました。
最後に、オリンピックが「平和の祭典」であり続けることを祈るとともに、コロナウイルスの蔓延が世界で早く収束し、以前のような環境が一日でも早く戻ってくることを願っています。
PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)
7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。福岡県出身。血液型:0型。スポーツ・ニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。
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