劇的なクオリファイ(決勝トーナメント進出)から一夜明け、前日に敗れたスイスと再び準決勝で対戦したカーリング女子日本代表のロコ・ソラーレ。世界選手権2連覇中の優勝候補を相手に見事に投げ勝って、日本カーリング史上初の五輪ファイナリストとなった…

 劇的なクオリファイ(決勝トーナメント進出)から一夜明け、前日に敗れたスイスと再び準決勝で対戦したカーリング女子日本代表のロコ・ソラーレ。世界選手権2連覇中の優勝候補を相手に見事に投げ勝って、日本カーリング史上初の五輪ファイナリストとなった。



日本カーリング史上初のファイナル進出を決めた日本代表のロコ・ソラーレ

 準決勝で特に際立った活躍を見せたのは、リードの吉田夕梨花だ。難易度の高いウィック(アウトにならないように相手のストーンを動かすこと)4投を含めて、圧巻のドロー18投。この大一番で、ショット率99%という準パーフェクトの数字を叩き出したのだ。

 日本はほとんどのエンドにおいて、セカンドの鈴木夕湖、サードの吉田知那美の計4投のどこかでいいショットが決まればチャンスメイクができるような、余裕を持ったゲーム運びができた。それは間違いなく、吉田夕の盤石なセットアップによるところが大きい。

 さらに、スキップ・藤澤五月のプレーも光っていた。彼女のショット率も、ラウンドロビン(総当たりのリーグ戦)9戦の平均81%から89%へと上昇。その結果、チーム全体のショット率も83%から88%へ向上し、先攻の際には相手にプレッシャーを与えるショットを残すこと、後攻では得点を積み重ねるショットづくりへとつながった。

 それだけの数字が残せたのは、序盤からアイスリーディング(氷の読み)に成功したことも要因のひとつだが、決勝トーナメントに入って使用する石を選べるようになった点も大きいだろう。

 ラウンドロビンでは4試合が同時に行なわれたため、各シートに用意された石でプレーするしかなかったが、準決勝では2試合しか行なわれないため、使用する石を残りのシートからも選択可能となった。そこで、日本は試合が行なわれるシートの石8個と、使用されない1シートの石8個を加えた、計16個のなかから、クセのないもの、投げやすいものをセレクト。このストーンのチョイスも奏功したのではないか。

 これは憶測にすぎないが、準決勝の日本はコーナーへ向けてドローを投げる場面が多く、そこが得点源や攻撃の起点になっていた。そのために曲がりやすい石を用意していたとしたら、JD(ジェームス・ダグラス・)リンドコーチをはじめとした日本の、まさに作戦勝ちと言えるだろう。

 そして、迎える決勝はひとつのシートで行なわれる。石のチョイスは4シート分、計32個から選択できる。そうなると、さらに緻密な作戦と展開が可能となり、情報収集力に長けた日本は要所要所で、自らの強みを生かして相手の弱みを突く作戦を立てることもできるだろう。

 決勝ではイギリスと対戦するが、ひとつ興味深いデータがある。両スキップのショット率だ。

 日本の藤澤は、ドローのインターンが83%、アウトターンが84%、平均83%。テイクのインターンが75%、アウトターンが82%、平均79%となっている。

 インターンとは、右投げの選手が時計回りの回転で投じること。逆に、反時計回りの回転で投じるのがアウトターンとなる。

 一方、イギリスのスキップ、イブ・ミュアヘッドも藤澤と同じ右投げで、ドローのインターンが77%、アウトターンが83%、平均80%。テイクのインターンが66%、アウトターンが80%、平均73%となっている。

 目につくのはミュアヘッドの、インターンのテイクのショット率の低さだ。

 思い出されるのは、4年前の平昌五輪3位決定戦。今回の決勝と同じくイギリスと日本が対戦し、勝負はミュアヘッドのラストロックで決した。ミュアヘッドはインターンのテイクをワイド気味に投げてしまい、日本にスチールと銅メダルを献上することになった。

 もちろん、これはたかがデータである。しかし、この数字をJDリンドコーチ率いる日本がどう捉えるか。ミュアヘッドにインターンのテイクを強いる石の配置を仕掛けてきてもおかしくない。それが、4年前の再現につながる可能性はゼロではない。

 振り返ってみれば、ラウンドロビン最後の相手がスイスだったこと、ラウンドロビン5勝4敗という勝ち星で、最後はスウェーデンに救ってもらう形でクオリファイを果たしたことも、4年前と同じ。そんな奇縁を考えれば、ますます期待は膨らむ。

 いずれにしても、両チームが投げやすい石を選んで挑む頂上決戦。イギリスが20年ぶり2回目、日本が初の金メダルをかけた試合はハイレベルなものになるだろう。

 まずは1エンド、日本のリード・吉田夕がこれまでどおり安定したセットアップを見せるのか。注目したい。