カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレは、北京五輪のラウンドロビン(総当たりの予選)最終戦でスイスに敗れた。 試合後、リードの吉田夕梨花が「もう少しいいゲーム、自分たちらしいゲームがもうちょっとできたな......」と言えば、スキップの藤…

 カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレは、北京五輪のラウンドロビン(総当たりの予選)最終戦でスイスに敗れた。

 試合後、リードの吉田夕梨花が「もう少しいいゲーム、自分たちらしいゲームがもうちょっとできたな......」と言えば、スキップの藤澤五月は「ここまで全9試合、全員で戦いきれたのが何よりもこのチームの誇り」などと語って、選手たちは涙まじりに"敗戦の弁"を口にした。

 しかしそこから約20分後、同時刻に行なわれていたスウェーデンと韓国の試合で、勝てば準決勝進出の可能性が高かった韓国が敗れ、5勝4敗でイギリス、カナダ、日本が並び、直接対決とDSC(Draw Shot Challenge)の結果から、日本は4位でのクオリファイ(決勝トーナメント進出)が決定した。

 その結果を伝えられた日本代表のメンバーは、今度は驚きとうれしさで泣き崩れた。藤澤は「まだ気持ちの整理ができていないんですけど、がんばります」と準決勝へ向けての抱負を語った。



準決勝進出を決めたカーリング女子日本代表

 その藤澤だが、ラウンドロビン終盤、特に最後のスイス戦ではアイスリーディング(氷の読み)に苦しんだ。スイス戦に限って言えば、4エンドでは速いテイクで、5エンドではウエイトを落したテイクで、それぞれスルーしてしまうなどの大きなミスが出た。

 そのあとも、ウエイトと曲がりの幅を模索しながらのショットが続いた。ふだんはどんな大会でも「もうちょっと試合をしたかった」と語る藤澤にしては珍しく、カーリングを楽しめていない表情で、攻める姿勢を示せないままだった。

「(北京五輪の会場は)日替わりで曲がったり、曲がらなかったりするうえ、時間帯でも本当に変化の多いアイスですね。一投ごと、それを見極めるのは大変だと思います。

 特にラウンドロビン最終戦のスイス戦は、テイクを投げると曲がらないのに、ウエイトを落とすとどこでブレイク(曲がり始め)が発生するかもわかりにくかったように見えました」

 藤澤の苦しむ姿を見つつ、今大会のアイスの難しさについてそう語ったのは、フォルティウスのスキップ・吉村紗也香だ。昨年2月の日本選手権ではロコ・ソラーレを下して頂点に立ち、9月の日本代表決定戦でもロコ・ソラーレを最後まで苦しめたライバルである。

 それでも今大会、ラウンドロビンのショット率において、スキップで80%を超えたのは藤澤だけ。出場全10カ国のスキップのなかでトップの数字を残している。吉村はそんな藤澤のパフォーマスを称え、クオリファイへ向けてのエールを送る。

「難しいアイスなので、確かにスイス戦ではミスが出てしまいました。大事なところで決めきれなかった悔しさは、どうしても引きずったり、残ったりしてしまうもの。同じスキップとして、気持ちはよくわかります。たぶん、私も落ち込むと思います。

 でも、最終戦はスイスのショットがよかったにすぎません。クオリファイからはまた、ドローやヒットステイなどのシンプルなショットに集中して(狙った位置に)石を置いていくだけ。

 むしろこの難しいアイスで、ショット率1位というのは本当にすごいこと。それを誇ってほしいし、落ち込む必要はないと思います」

 五輪後には、吉村率いるフォルティウスと藤澤率いるロコ・ソラーレは5月の日本選手権で対戦予定。吉村はそこで、五輪帰りの藤澤と投げ合いができることを待ち望んでいる。

「稚内での日本選手権や五輪トライアルの時のように、最後の一投までどちらが勝つかわからない、見ている人も、やっている私たちもハラハラドキドキするような試合を(ロコ・ソラーレと)またできるのを楽しみしています。

(決勝トーナメントの)あと2試合、さっちゃん(藤澤)らしく、これまで培ってきたものを全部出しきって、帰ってきてほしいですね」

 日本の他、クオリファイに進んだ3カ国は、ラウンドロビン1位のスイス、2位のスウェーデン、3位のイギリス。いずれも、ラウンドロビンで完敗を喫した相手だ。つまり、準決勝でぶつかるスイスはじめ、これから対戦するチームはすべて格上となる。

 だが日本は、言い方は悪いが、選手たち自身で一度は敗退を覚悟した、いわば死んだ身だ。それでも、激戦のなか5勝を積み上げた成果として、さらに2試合の機会を与えられた。

 あとはもう、開きなおってプレーしてほしい。相手が格上と認めたうえで、自分たちが持っているものを最大限に生かして、そのすべてを出しきって戦ってもらいたい。

 それに、ポジティブな要素もある。日本はチームのショット率が82.3%で、2位のスウェーデン、3位のスイスを抑えてトップ。特にリードの吉田夕は89.6%のショット率を誇り、全チームで最もいい数字だ。セットアップでは、分があると考えていい。

 そもそも、情報収集能力と分析力はロコ・ロラーレの武器だったはず。ここからが、その真価を問われる舞台となる。

 五輪開幕前、チームの生みの親である本橋麻里は「あのレベルになると、最後はいちばん楽しんだチームがいちばん最後まで立っている」と、独特の表現でチームを送り出した。

 残り2試合、その言葉どおりこの最高の舞台でプレーできる誇りと喜びを優先してほしい。そういう時のロコ・ソラーレこそ、強い。