※画像はイメージです 不可解な判定が多発している北京五輪で、特に深刻な問題が美しいリンクを灰色に染めている。 ドーピング問題の渦中にいるカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が「2冠」を逃した。フィギュアスケー…

※画像はイメージです

 不可解な判定が多発している北京五輪で、特に深刻な問題が美しいリンクを灰色に染めている。

 ドーピング問題の渦中にいるカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)が「2冠」を逃した。フィギュアスケート団体に続く金メダルを狙った個人では、フリーの演技で何度も転倒。トップだったショートプログラムから順位を4位まで落とし、号泣した。

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 五輪期間中に、薬物問題が発覚した。ワリエワが団体戦の演技を終えた後、昨年12月のドーピング検査で陽性反応を示していたことが判明。ところが「16歳未満の要保護者」という理由で、その後の出場の継続が認められるという前代未聞の措置がとられた。

 禁止薬物が発覚した選手に対して、これまでの五輪では資格停止、メダルはく奪など厳しい処分が下されてきた。だが今回「ドーピング違反をしても、16歳未満であれば出場は許可される」という前例をつくってしまったようなものだ。

 15歳の体内から検出された禁止薬物は「トリメタジジン」。心臓疾患の薬などで使用され、アスリートには持久力向上に効果があるとされる。ワリエワの弁護団は「心臓病の治療を受けている祖父と同じコップを使用した」などと主張している。

 ニューヨーク・タイムズによると、反ドーピング機関が「ワリエワの尿サンプルから検出されたトリメタジジンの濃度は他のスポーツ選手と比較して、およそ200倍にあたる」と報じている。ほかにも禁止薬物には指定されていないが、持久力を高める効果がある2種類の薬物反応も出たという。


 ワリエワの出場続行については、あくまで暫定で認められたにすぎず、ドーピング疑惑が晴れたわけではない。調査は後回しになり、結果次第では団体戦メダルはく奪の可能性もある。個人戦も暫定順位になるため、ワリエワが3位以内に入った場合はメダル授与式を実施しないと事前に発表されていた。犠牲になる他の競技者から怒りの声が殺到するのも当然だった。

 SNSでは「またロシアか」の声があがる。14年ソチ五輪で、ロシアの組織的なドーピングがあったと国際オリンピック委員会(IOC)が認定。制裁として2022年12月まで国家としての国際大会への出場を禁じた。五輪も18年平昌、20年東京、22年北京と3大会連続で出場が認められず、かわりに「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」から違反歴や疑惑がない選手で個人参加している。にもかかわらず、ロシア人選手のドーピング違反は近年も複数報告されているのが実情だ。

 10年バンクーバー五輪でフィギュアスケート女子の金メダリスト、キム・ヨナ(韓国)が「ドーピング違反をした選手は試合に出場できません。この原則は例外なく順守されなければなりません」とインスタに投稿した。多くの賛同を集め、人々の思いを代弁している言葉だが、五輪では「当たり前」のルールが順守されない。

 スキー・ジャンプの高梨沙羅(25)は、スーツ規定違反を理由に失格となった。競技ルール違反の選手は即失格処分にしても、体をむしばむ薬物違反の選手が失格にならない。五輪は不条理だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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