勝ち点78で並ぶバルセロナとレアル・マドリー 第35節最大の見ものはやはりエスパニョール対バルセロナのバルセロナダービーとなる。とはいえ、ホームでもアウェイでもエスパニョールがバルセロナに勝ったのは08-09シーズンが最後であり、その後16…


勝ち点78で並ぶバルセロナとレアル・マドリー

 第35節最大の見ものはやはりエスパニョール対バルセロナのバルセロナダービーとなる。とはいえ、ホームでもアウェイでもエスパニョールがバルセロナに勝ったのは08-09シーズンが最後であり、その後16試合は13勝3分と戦績が一方的なのもよく知られるところ。ただ、消化試合が1つ少ないレアル・マドリーと同勝ち点でリーグ優勝を争うバルセロナにとっては引き分けが致命傷になりかねない。引き分けならエスパニョールは昨季もホームで手に入れており、試合の興味は尽きない。

 エスパニョールは前節スポルティング相手に引き分けた(1-1)。欧州カップ戦の出場権を懸けた試合、降格圏にいる相手でもキーケ・フローレス監督の相手にボールを譲りカウンターに徹する、という保守的なプランは変わらなかった。守備的MF2枚でセンターラインを固めて6人で壁を作り、突破されても好調GKディエゴ・ロペスが立ちはだかる。攻撃は当初は主にロングボールからのカイセドとモレーノの単独バトルに委ね、相手が疲れてくる後半15分過ぎから右フラードのゲームメイクと左ピアッティのスピードを生かしてチャンスを作り始めるという形である。

このゲームプランが機能するためには少なくとも後半まで失点を1点以内に抑えなければならない。

 バルセロナは前節オサスナに大勝して(7-1)、オサスナの4試合を残しての降格を決定付けた。ルイス・エンリケ監督のチームは3バックを採用しGKとピケ以外は敵陣に入るという久しぶりの安定感のある試合運びだった。クラシコの勝利の立役者メッシは2ゴール、批判されていた控え組アンドレ・ゴメス、パコ・アルカセルもそれぞれ2ゴール。エスパニョール戦では出場停止だったネイマールも帰って来る。このままの勢いで突っ走りそうな雰囲気がある。

 クラシコに敗れたレアル・マドリーはネガティブな空気を引きずっていない。3日後のデポルティーボ戦に大勝(2-6)。内容からすれば後2、3点は入っても良かったし、しかもクラシコの先発メンバーから9人を入れ替えてこの結果。イスコ、モラタ、アセンシオ、ハメス、ルーカス・バスケス、コバセビッチ、ダニーロの躍動ぶりには「BBCがいない方が良い」という声が出るほど。クラシコでのベイルの先発起用で物議をかもしたばかりのジダンは、この大胆なローテーションを成功させ、批判の声を黙らせた。ベイルが全治3週間と言われているが、そのせいでアセンシオやイスコが出られるのならお釣りが来るだろう。今週末の相手は敵地で敗れたバレンシアだが、不安はまったくない。

 8位のエイバルは欧州の舞台に立てるか(写真:Getty Images)

EL出場権獲得を目指すエイバル

 バレンシアはソシエダに敗れた(2-3)。いきなり3失点し、その後盛り返して惜しいところまでいく、という試合展開は今季のバレンシアそのもの。目標も危機感もないまま気まぐれな試合を続けている。今週末はマンガラとパレホが出場停止明けで帰って来るも、チームを鼓舞しスイッチを入れる役のファイター、ザザが累積警告で出場停止。意地の力だけで今のレアル・マドリーに立ち向かうのは難しいだろう。

 バレンシアと同様、目標を失い危機感がないまま漂流しているのがラス・パルマスである。会長とセティエン監督がヘセとハリロビッチ獲得をめぐり対立。「欲しい選手ではなかった」という監督の発言と彼の今季限りでの退任が決まったことでチームのモラルはガタ落ち。前節は残留争いをするレガネスにミスから2点をプレゼントして大敗した(3-0)。この状況でアトレティコ・マドリーから勝ち点をもぎ取るのは夢でしかない。

 アトレティコ・マドリーはビジャレアルに敗れた(0-1)。だがビジャレアルの枠内シュートをわずか2本に抑え、逆に23本(うち9本が枠内)のシュートの雨を降らせるなど内容はシメオネ監督を落胆させるものではなかった。唯一の不安材料はカラスコの肩の負傷。10ゴールとチーム2位の得点力がある彼の欠場は痛い。

 エイバル対レガネスは、前者はEL出場権獲得、後者は残留を懸けた戦いになる。エイバルは前節アラベスとスコアレスドロー。これで3試合勝ちがないが、GKリエスゴが28分に退場(ボールは顔と手に当たっており、ハンドとの判定は微妙)になり1時間以上10人で戦ったことを考えるとヒロイックな引き分けだった。先発した乾は、引きっ放しではなくプレスにも出て守り抜いたチームの一員として90分を終えた。守備と体力が課題とされていたことを考えると今季の成長とメンディリバル監督の信頼が伝わってきた。レガネスは前節ラス・パルマスに大勝し残留に大きく前進した。戦力不足をコンパクトでラインを押し上げた戦術完成度の高い守備で補った、アシエル・ガディターノ監督の手腕が光る。30得点(下から2番目)で勝ち点30というしぶとさは立派である。

 セビージャはセルタを振り切って(2-1)3位獲得の最初の関門に臨む。ガンソが好調でナスリが復帰。枠に嫌われた3本を含む16本のシュートを放つなど攻撃は合格だが、守りの安定度に欠ける。60%以上ボールを支配し、残りの30分間は相手が10人だったのに最後は攻め込まれて終了の笛に救われた。マラガは引いてカウンター狙ってくる。0-0の時間帯が続くほどセビージャは前掛かりにならねばならず、速攻を食うリスクが大きくなる。絶好調サンドロに率いられるマラガはグラナダに快勝した(2-0)。スピード、体力、決定力いずれもハイレベルのサンドロは前節の2ゴールで12ゴール。前線でロングボールに食らい付き、裏へ飛び出し、単独で打開し、数少ないチャンスをゴールに結び付ける彼がいるからこそ、ミチェル監督は安心して後ろに人数を掛けることができている。残留を確保しプレッシャーのないマラガはダービーマッチに意地だけを懸けて臨む。が、ライバル心が強烈なだけにその意地だけでモチベーションは十分だろう。

《文=木村浩嗣》