F1フォトグラファー熱田護×桜井淳雄 対談特別編「写真で振り返る2021年シーズン」F1の現場に30年以上足を運び、撮影を続けるベテランフォトグラファーの熱田護氏と桜井淳夫氏。ふたりがカメラに収めた2021年シーズンのベストショット21点を…

F1フォトグラファー熱田護×桜井淳雄 対談
特別編「写真で振り返る2021年シーズン」

F1の現場に30年以上足を運び、撮影を続けるベテランフォトグラファーの熱田護氏と桜井淳夫氏。ふたりがカメラに収めた2021年シーズンのベストショット21点をコメントとともにお届けする。

前編「ホンダ活動最終年の感動」を読む>>

後編「2年目の角田裕毅への期待」を読む>>



photo by Sakurai Atsuo

第12戦ベルギーGP ケメル・ストレート後のレコーム・コーナーを立ち上がるアルピーヌのエステバン・オコンとフェルナンド・アロンソ。縁石やタイヤバリアの色を生かし、きれいな写真が撮影できました。撮影場所はマシンとの距離が結構近く、自分のほうに向かってくるような感じですが、恐怖感はありません。一応、ドライバーを信頼していますから(笑)。(桜井淳雄=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第12戦ベルギーGP F1屈指の高速コーナー、オー・ルージュを駆け上がっていくレッドブル・ホンダのセルジオ・ペレス。スパ・フランコルシャンサーキットは現在、安全性向上のために大規模な改修を実施中。左側の壁もなくなり、カメラマンの撮影ポイントも変わります。この風景はもう見られなくなるので、記録の意味でも撮影しました。(熱田護=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第12戦ベルギーGP オー・ルージュを抜け、火花を散らしながら駆け上がっていく角田裕毅選手。ドライコンディションで行なわれた、金曜日のフリー走行になります。オー・ルージュの高低差は約80メートルありますが、写真で表現するのは非常に難しいですね。歩いて登っていくと、息が切れます。それぐらいの急傾斜です。(桜井淳雄=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第12戦ベルギーGP 典型的なスパウェザーに見舞われた予選、水しぶきをあげて走るウイリアムズのマシン。観客席ではコロナ禍にもかかわらず、隣国のオランダからマックス・フェルスタッペンの応援団が大挙駆けつけ、いたるところでオレンジ色の発煙筒がたかれ、騒然とした雰囲気になっていました。(桜井淳雄=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第13戦オランダGP ザントフォールトサーキットを舞台に、36年ぶりに行なわれたオランダGP。コロナ禍での開催のため、観客は3分の2に制限されていましたが、スタート時のグランドスタンドは地元マックス・フェルスタッペンの応援団で超満員。「これがコロナ禍のグランプリか」と驚きを感じながら撮影していました。(桜井淳雄=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第13戦オランダGP ザントフォールト・サーキットのターン3と最終コーナーにバンクがふたつあり、すり鉢状のバンクを写真でどうやって表現するのか、試行錯誤しました。マシンの背景に映っているのは最終コーナーのバンクですが、本番ではコースに入れないので、絶対に撮れない構図です。スタートのグリッドに並ぶ直前のフェラーリを撮影しました。(桜井淳雄=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第13戦オランダGP 初の母国GP制覇を達成し、シャンパンファイトをするマックス・フェルスタッペン。ゴール後、発煙筒が投げ込まれて、オレンジの煙が表彰台にまで上がってきています。盛り上がっていましたが、お客さんがコース内に入って来られなかったので、ファンとドライバーが一体となり熱狂する場面はありませんでした。そこがF1の魅力のひとつだと思いますので、寂しかったですね。(桜井淳雄=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第14戦イタリアGP 秋のモンツァ・サーキットを駆け抜けていくマックス・フェルスタッペン。公園の木々の合間からマシンが出てくる瞬間を流し撮りしました。撮影場所は観客エリアです。なかなかいい場所が見つからず、モンツァの森の中をウロウロと歩き回り、時には木の切り株に乗ったり、降りたりしながら、撮影ポイントを探しました。(桜井淳雄=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第14戦イタリアGP 夕日に照らされたモンツァ・サーキットを駆け抜けていくレッドブル・ホンダ。2021年からスプリントレースが行なわれることになり、夕方の時間帯に初めてF1マシンが走ることになりました。そこで、モンツァの森の中から撮影したのですが、すばらしい光景をおさめることができました。(熱田護=撮影)



photo by Sakurai Atsuo

第14戦イタリアGP 1コーナーのシケインを通過する地元フェラーリのカルロス・サインツJr.。イタリアGPが開催されるのは秋で、夕方になると日が落ちるのがすごく早いので、マシンの後ろの光が落ちて、マシンにだけ夕日があたる瞬間をとらえました。(桜井淳雄=写真)



photo by Sakurai Atsuo

第14戦イタリアGP モンツァ・サーキットのオーバーテイクポイント、第2シケインのバリアンテ・ロッジア。ドライバーたちは縁石にマシンを乗り上げながら走っていきます。地元フェラーリのシャルル・ルクレールもシケイン出口のエスケープゾーンに敷かれた小石を巻き上げ、コースをギリギリいっぱいまで使って攻めていました。(桜井淳雄=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第15戦ロシアGP 雨の予選でアタックするキミ・ライコネン。レンズを向けるとさっと背中を向け、カメラマン泣かせでしたが、自由奔放にふるまい発言する姿がカッコよく、大好きな選手でした。昨年限りで引退しましたが、42歳までケガなく走り、カワイイ奥さんと子どもがいて、大金も稼いだでしょう(笑)。大成功のドライバー人生だったと思います。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第16戦トルコGP 日本GPで走る予定だった白いスーツを着るマックス・フェルスタッペン。最近の若いドライバーはいい意味でクセがないですが、フェルスタッペンもそのひとりですね。でも主張すべきところは主張し、自分がミスした時には素直に認める正直さがあります。そこに好感を持っています。最近、フェルスタッペンはすごく魅力的になってきました。正直、デビュー当初はあまりカッコよくはなかったのですが、キャリアを重ねるにつれていい顔になってきました。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第17戦アメリカGP 3日間で40万人もの大観衆が集まったアメリカGPを制し、ヘルムート・マルコとパルクフェルメで抱き合うマックス・フェルスタッペン。このレースからカメラマンがようやくパドックに入れるようになり、レース後のドライバーのさまざまな表情を間近で撮れるようになりました。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第18戦メキシコGP キミ・ライコネンが引退し、現役最年長となるフェルナンド・アロンソ。40歳になっても全然パフォーマンスは落ちていません。37歳のルイス・ハミルトンよりも一世代上と言ってもいいですが、相変わらず速いし、モチベーションが高いし、闘争心もまったく衰えていません。ベテラン代表として今シーズンも頑張ってほしいです。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第19戦ブラジルGP 初夏の青空の下、インテルラゴスサーキットを走るマックス・フェルスタッペン。サーキットは満席で、アイルトン・セナ仕様のヘルメットで参戦したルイス・ハミルトンが優勝しました。レース後にはブラジルの国旗を持ってウイニングランを行ない、大声援を受けていました。ハミルトンはファンを味方につけるのもうまいです。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第20戦カタールGP ナイトレースのカタールGPでテレビ用のインタビュー受けるルイス・ハミルトン。若い頃は角田裕毅選手のような乱暴な言葉を口にすることもありましたが、今は感情をコントロールし、すごく成熟しています。ただ、あまりに周りの評判を気にして、世界王者の「ルイス・ハミルトン像」を演じているように見え、そういった部分はあまり魅力を感じません。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第21戦サウジアラビアGP ジェッダサーキットでの角田裕毅選手。中盤のフランスGPあたりはサーキットで会っても元気がなかったですが、シーズン終盤に入って徐々に歯車が噛み合い、まとめられるセッションが増えてきました。それに伴い、いい表情になってきました。首も太くなり、F1ドライバーの身体つきに。心身ともにF1に慣れた今シーズンは期待ですね。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第21戦サウジアラビアGP 初開催のジェッダ・サーキットスタートです。コース脇に立つビルの45階の小窓が開いたので、レンズを入れて撮影しました。コースにはセイフティーゾーンがなく、レースは赤旗が2度も出る荒れた展開となり、撮影も難しい環境でした。コンクリートウォールと金網だらけ、すごく撮りづらかったです。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第22戦アブダビGP 24歳でF1の頂点に立ったマックス・フェルスタッペン。レースの強さや速さはもちろん、クルマを作る能力を含めて、ドライバーとしての能力は彼が一番だと思います。アイルトン・セナやミハエル・シューマッハのようにずっとピットに残ってスタッフとミーティングしている姿は見たことがないですが、ホンダの関係者の方に聞いても、彼の能力だけは別次元と話しています。(熱田護=撮影)



photo by Atsuta Mamoru

第22戦アブダビGP ホンダ30年ぶりのタイトル獲得の立役者は、現場の最前線で指揮した田辺豊治テクニカルディレクター(左)と山本雅史マネージングディレクター。いつもは笑顔の少ない田辺さんもこの時ばかりは笑顔でした。このふたりと日本でPU開発を率いた浅木泰昭さんの3人がいなければ、ホンダのラストイヤーでの偉業達成はなかったと思います。(熱田護=撮影)

【プロフィール】 
熱田 護 あつた・まもる 
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。2021年シーズンもコロナ禍のなかで全22戦の取材を敢行。今年3月3日に30年ぶりにタイトルを獲得した第4期ホンダF1の記録をまとめた写真集『Champion』(インプレス)を発売予定。「感動的なシーズンを、僕の写真で振り返ってもらえればうれしい」(本人談)。

桜井淳雄 さくらい・あつお 
1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。新型コロナの影響で2020年シーズンの現場での取材を断念したが、2021年シーズンからは再開。今季は2月末にスペイン・バルセロナで開催されるテストから取材を開始予定。YouTubeでは『ヒゲおじ』としてチャンネルを開設し、クランプリウィークは『ヒゲおじ F1日記』を配信中。