2月6日、団体戦男子フリーで圧巻の演技を見せた鍵山優真【樋口新葉「余裕がない」なかで上々の滑り】 女子ショートプログラム(SP)は樋口新葉、男子フリーは鍵山優真が出場した、2月6日の北京五輪フィギュアスケート団体戦2日目。 樋口はその前日、…


2月6日、団体戦男子フリーで圧巻の演技を見せた鍵山優真

【樋口新葉

「余裕がない」なかで上々の滑り】

 女子ショートプログラム(SP)は樋口新葉、男子フリーは鍵山優真が出場した、2月6日の北京五輪フィギュアスケート団体戦2日目。

 樋口はその前日、こう語っていた。

「五輪マークが至るところにあり、今までの試合とは全然違うので一つひとつに興奮して楽しい気持ちはありますが、すごく緊張して練習でも調子が上がらない。自分に余裕がないのがわかっているので、坂本(花織)さんに話したら、『1回目だからしゃあない』と言われました」

 本番では、現地での練習で一度も飛べていないトリプルアクセルを、ダブルアクセルに変更した構成で臨んだ。

 これまでノット・クリア・エッジ(不明瞭な踏み切り)の判定が多かった3回転フリップは、「インサイドエッジに乗るように何回も確認して練習した」という成果を出すノーミスの滑り。トリプルアクセルなしの構成では自己最高の74.73点を獲得し、カミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)に次ぐ2位。9点を獲得して初日3位だった中国を逆転しチーム順位を3位に上げるとともに、銅メダル争いのライバルになるカナダとの得点差も1点つけ、次の鍵山にバトンを渡した。


団体戦女子SPの樋口新葉。2位で日本チームに貢献した

【鍵山優真

「自信満々」の演技】

 鍵山は北京入りしてからの練習も好調。メダルを確実にするために守りに入るのではなく、「五輪では成長した自分を見せたいし、自分でも成長を感じたいので4回転ループを入れ、成功しても失敗しても後悔しないようにしたいです」と話していた。その言葉どおり、本番では4回転ループを入れた構成で臨んだ。

 父の正和コーチに演技前に言われたのは、「悔いのないように全力でやってこい」という言葉。「4回転ループの練習での確率はサルコウやトーループのようにはよくないが、ある程度の形はできています。ループを入れると他の要素ではミスをしないことが大事になりますが、自信があったので不安なく入れられたと思います」と、鍵山が話す挑戦だった。

 個人戦で宇野昌磨とともにメダル争いをするとみられているヴィンセント・ジョウ(アメリカ)らライバルらも団体戦男子フリーに名を連ねたが、鍵山は動じなかった。成果はすばらしかった。「何か変なプレッシャーや緊張は全然なく、むしろとても楽しく最後までできました」(鍵山)と、自らの挑戦だけに集中していた。

 丁寧な滑り出しから最初の4回転サルコウを3.46点の高い加点で決めると、次の4回転ループは尻が落ちて耐える着氷になったが引きずることもなく、4回転トーループを確実に決めると、次はトリプルアクセル+3回転トーループ。そして、演技後半に入れていた4回転トーループは、1オイラー+3回転サルコウをつけた3連続ジャンプとし、そのあとは自信を持つ3回転ルッツ+3回転ループ。五輪へ向けて難度を上げた構成も軽々とこなす。ステップこそレベル3だったが、スピンはすべてレベル4にし、自己最高の208.94点を獲得した。

「あんなに点数が出るとは思わなかったけど、200点は超えたいという気持ちはあったので、まずはよかったです。あとは個人戦ならひとりでワーッとやることしかできないが、今回はチームのみんなもいて一緒に喜んでくれたのでさらにうれしかったし、これが団体戦なんだなと、雰囲気も楽しめました」

 後半に4回転トーループからの3連続ジャンプを入れるのは初めて。「失敗するにしろ成功するにしろ、いい経験になるかな」との気持ちだったという。だが、北京入りしてからの練習では調子が上がっていたこともあり、「自信満々だった」と笑顔を見せる。

 また、耐える着氷になった4回転ループは、2人のジャッジが1点と2点の減点をつけ、別の2人は0点だったが、結果的には0.60点の加点で、形のうえではノーミスの演技となった。だが、鍵山は「自分としては、4回転ループはちょっとマイナスと考えているので、個人戦ではもっといいループを跳びたいという気持ちのほうが強い」と冷静に分析。また、今季のフリーは、終盤では疲労困憊という演技が多かったが、「今回は6分間練習の時から謎の自信があった」と周囲を笑わせた。

 鍵山のあとに滑ったジョウは、冒頭から4本連続で入れた4種類の4回転ジャンプはすべてミスという滑りになり、後半は立て直したものの171.44点で、181.65点を出したROCのマーク・コンドラチュクにも及ばない3位という結果だった。

 団体戦のメダル争いは、カナダのロマン・サドフスキーが5位だったことで、日本は2位のアメリカを3点差まで追いつめるとともにカナダには9点差をつける結果となった。2月7日はアイスダンス・フリーダンスと、ペアと女子のフリーが行なわれるが、2種目でカナダが1位で日本は5位という結果になっても8点詰められるだけで3位は維持できるという、きわめて有利な状況だ。

 鍵山は樋口とともに団体戦のメダル獲得の可能性を限りなく大きくしただけではなく、個人戦の勝負に向けても大きく自信をつける演技を見せた。