2月4日、団体戦男子シングルSPに出場した宇野昌磨【今大会の団体戦は「メダルを狙える」】 北京五輪開会式が開催された2月4日の午前に始まった、フィギュアスケート団体戦の男子シングル。日本勢1番手としてショートプラグラム(SP)に出場する宇野…


2月4日、団体戦男子シングルSPに出場した宇野昌磨

【今大会の団体戦は

「メダルを狙える」】

 北京五輪開会式が開催された2月4日の午前に始まった、フィギュアスケート団体戦の男子シングル。日本勢1番手としてショートプラグラム(SP)に出場する宇野昌磨は、2日前の初練習後に試合へ向けての気持ちを苦笑しながらこう話していた。

「前回の平昌五輪も1番手でしたが、あの時は日本が3位以内に入るのは難しいとわかっていた。全員がいい順位を取ろうとベストを尽くしましたが、五輪の雰囲気をつかもうという気持ちも少なからずありました。でも、今回はメダルを狙える位置にいるので、1番は無理でも2番は確保しなければいけないと思うし、いろんな感情があります。ショートは失敗の可能性もあるので怖いというのはありますが、失敗を恐れた演技だけはしたくないので最善を尽くし、ダメだったら真剣に謝りたい」

 だが、本番ではそんな不安のかけらも見せなかった。演技順は第2組の2番滑走。最初の4回転フリップをきれいに決めて3.30点の加点をもらうと、次の4回転トーループ+3回転トーループも確実に降りた。演技後半のトリプルアクセルもジャッジがGOE(出来ばえ点)+3〜5を並べるジャンプ。丁寧さが目立った。その理由をこう説明する。

「朝ということで体が動かなかったが、動かないから動かそうと思ったら絶対にうまくいかないのは、練習の時やこれまでの試合の経験からもわかっていたし、自分のベストの納得いく表現をできないなというのもわかっていた。だから小回りをする感じで、大きく体を動かしすぎずに滑っていました。その点ではすごく冷静だったと思います」

 宇野の心の中には、「この構成であれば、体にキレがなくてもしっかり滑りきれる」という思いがあった。そうした冷静さが、しっかりとノーミスの演技を生んだ。

「何より五輪の試合という場に、練習どおりの気持ちの持ち方で挑めたのは今後の練習に生きてくるし、練習もちゃんと試合に生かせるようになると思う。最初の4回転フリップも自信があったというわけではないが、絶対に跳べないという確信もあったわけではなく、『失敗するかもしれないな』という気持ちで跳びました。ただ、より気をつけようとか、絶対に跳ぶぞというような気持ちではなく、仮に失敗しても、『こういう失敗をしたなら、次はこう生かしていこう』と考えようというような気持ちで試合に挑んでいたので、結果的には練習どおりに跳べたかなと思います」

【自己ベストも「もう少しできる」】

 この日、ステファン・ランビエルコーチは、PCR検査で陽性反応が出たために不在だった。宇野は、「自分でも試合に向けて追い込みを課して練習も試合もしますが、コーチの存在がないともうひと押しというのは出てこない。今日はこれ以上の演技は望んではいなかったですが、ジャンプ以外の表現の部分ではコーチがいればもっと感情が入ったはず。それで失敗する可能性もあるが、自分の成長には必要な存在だと思います」と言う。

 それでも宇野の得点は、2018年9月に出していた自己最高を1.31点更新する105.46点だった。だが、宇野はその得点を喜ぶのではなく、冷静に振り返った。

「105点を見た時にたぶん何か取りこぼしているなと考えました。動きにキレがなかったのでスケーティングも伸びがなかったし、スピンも遅かったし、ステップもレベルを落としていても仕方ないかなという滑りだったと思うので。それにジャンプもフリップは斜めになっていたし、4回転+3回転は2つ目のジャンプは若干つまり気味だったので。そういったところは個人戦へ向けては修正しなければいけないと思うし、体が動かなくてももっと自分の技術を上げる練習も、この大会が終わったらやっていきたいと思いました」

 そんな自己分析どおりに、4回転フリップはネイサン・チェン(アメリカ)が4.24点の加点をもらっているのに対し、宇野は3.30点で、4回転トーループ+3回転トーループは2.58点。トリプルアクセルはジャッジの+4がもっとも多い好結果だったが、ステップはレベル3と取りこぼし、後半のチェンジフットスピンもレベル3でジャッジのGOE評価は+0〜3点といまひとつ。「もう少しできた」と話す宇野の言葉を示している出来だった。だが、そういう思いを口にするのも、「世界のトップを目指したい」との気持ちが本物である証とも言える。

【初日終え4位、団体戦初のメダルへ】

 チーム対抗の得点争いを見れば、6分間練習から4回転ジャンプを軽々と決めていたチェンが冒頭の4回転フリップに加え、後半の4回転ルッツ+3回転トーループでも3.45点の加点をもらい、スピンとステップはすべてレベル4で111.71点を獲得して1位。宇野は2位で、日本は9点を獲得した。



団体戦ペアSPの三浦璃来・木原龍一組

 また、団体戦アイスダンスの小松原美里・小松原尊組は、「これまでの試合を見て6位には入りたかった」と言うが、五輪の緊張感と意気込み過多からかやや固い滑りになってしまい、7位で4点獲得にとどまった。ペアの三浦璃来・木原龍一組は、「スピンで少し動きがズレてしまったので、ノーミスだとは思わなかった」と木原が振り返る演技ながら、昨年11月のNHK杯で出した自己最高を0.47点上回る74.45点を獲得。昨季の世界選手権6位で自己最高も少し上のカナダペアを上回った。ただスケートアメリカでは勝っていたアメリカペアが自己ベストを4.85点も更新する滑りで75.00点を出したために4位。7点を獲得した。

 団体戦初日を終え、チーム順位はアメリカが28点、ROC(ロシアオリンピック委員会)が26点と強さを発揮するなか、日本はペアで1位になった中国に1点差の4位発進となった。メダル争いをするとみられるカナダには4点差をつける状況だ。初のメダル獲得へ向けて、順調なスタートを切った。団体戦は、2月6日、7日と続く。



団体戦アイスダンス・リズムダンスの小松原美里・小松原尊組