電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」の「シーズン8」が、1月28日(金)にサウジアラビアの首都リヤド近郊で開幕した。このイベントはダブルヘッダーになっており、第2戦は開幕戦翌日の29日に同じディルイーヤの町中に設け…

電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」の「シーズン8」が、1月28日(金)にサウジアラビアの首都リヤド近郊で開幕した。このイベントはダブルヘッダーになっており、第2戦は開幕戦翌日の29日に同じディルイーヤの町中に設けられたストリートコースで行われた。

◆バッテリーマネージメントが勝敗を分ける
FEは内燃機関の代わりにモーターを搭載し、二酸化炭素を排出しないBEVで争われる。この次世代のレースには、今までにない見どころがある。第1戦では、「アタックモード」やバッテリー充電量の戦略的な使い方が勝敗を分けたことを紹介した。第2戦でも、バッテリーマネージメントに注意を払い、冷静なドライビングに心がけたと言うエドアルド・モルタラ(ロキット・ベンチュリ・レーシング)が勝利を手にした。

2009年と2010年にマカオGPを制した実績をもつモルタラは、ストリートサーキットでのうまさに定評がある。シーズン4(2017/2018)にFEにデビューすると、自身にとって2戦目の香港で行われた市街地レースで2位に入る好成績を残している。

FEでは、ライブ中継映像に各マシンのバッテリー残量がパーセント表示される。モルタラの場合、多くのレースでライバルよりも残量が多い場面が見られる。「リフト・アンド・コースト(アクセルペダルから足を上げて惰性で走行)」や減速時の回生をうまく使う、エネルギー効率の良いドライビングスタイルが見て取れる。

本来持っているストリートコースの速さに加え、こうしたバッテリーマネージメントのうまさが好成績につながり、昨シーズン(シーズン7)は年間ランキング2位に輝いた。2番グリッドスタートとなったこのレースでは、「アタックモード」を最適なタイミングで使用してトップに立つと、ライバルたちの猛攻を最後までしのいでトップでゴールラインを越えた。

レース後のインタビューでも、冷静なレース運びが成功の鍵だったと語っている。「ライバルたちはエネルギー(電気)をできるだけ使わせようとアタックしてきました。そこで、私は冷静な走りをするよう意識しました。精神的にとてもタフなレースでしたが、戦略が成功して優勝できました」。このレースでも、常にモルタラのバッテリー残量は1%程、ライバルたちよりも余裕があることを示していた。

◆独自開発のパワートレイン
バッテリーはマクラーレン(アプライド・テクノロジー社)が供給するワンメイクであるため、チームによる開発はできない。一方、電流の変換や制御を行うインバーターと、モーターおよびトランスミッションといった電動ドライブライン(パワートレイン)はチームによる独自開発がレギュレーションで認められている。54kWhのバッテリー容量や220kWの最高出力(アタックモード時は250kW)は決められているが、エネルギーをいかに効率よく引き出すかが重要だろう。このパワートレインの開発も、FEの興味深いポイントである。

サウジアラビアで行われた2レースでは、メルセデス製パワートレインの速さが際立っていた。ニック・デ・フリーズとストフェル・バンドーン(メルセデス- EQフォーミュラEチーム)は、前日に行われた開幕戦で1-2フィニッシュを果たしている。この第2戦で優勝したモルタラと、3位表彰台を獲得したルーカス・ディ・グラッシがドライブするベンチュリのマシンにも、同じメルセデスのパワートレインが搭載されている。

今シーズン、自動車メーカーの名前を冠したいわゆるワークスチームとしては、ポルシェ(TAGホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)、ジャガー(ジャガーTCSレーシング)、マヒンドラ、DS(DSオートモービルズ・フォーミュラEチーム・テチータ)と日産(ニッサンeダムス)がエントリーしている。昨シーズンを最後にアウディ(今季はエンビジョン・レーシングがパワートレインを使用)とBMW(アバランチ・アンドレッティがパワートレインを使用)が撤退し、メルセデスも今シーズンが最後となる。一方で、来シーズンからマセラティの参戦が決まっている。

毎シーズン混戦模様となるFEでは、このままメルセデスとベンチュリが優勢を維持することは難しいだろう。他のチーム、特に自動車メーカー系のエンジニアたちがどんな高効率なモーター、インターター、ギヤボックスを投入してくるかにも注目したい。