宮司愛海連載:『Manami Memo』第30回フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第30回は、2月4日から開幕する北京五輪…



宮司愛海連載:『Manami Memo』第30回

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第30回は、2月4日から開幕する北京五輪について。夏季の東京五輪に続いてフジテレビ五輪報道のメインキャスターを務める宮司アナが、今大会に期待することは?

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 ついに、2月4日から北京五輪が開幕します。と言っても、夏の東京五輪が閉幕してからまだ半年しか経っていないんですね。「もうやってきたのか!」という驚きもありつつ、今大会でも五輪中継キャスターを務めることになったので、いまは北京入りが楽しみです。自分のなかでは夏から"オリンピック熱"も絶やさず持っているので、そのエネルギーを全部出しきって、北京に置いてこようと思います。

 さて、今回お話しするのは、私が北京五輪で期待している種目や選手について。たくさんある競技のなかから、どの選手が、どんな活躍を見せてくれるのか。それぞれの見所も含めてふれていこうと思います。

【踏み切る瞬間に注目! スキージャンプ男子・小林陵侑】

 まずは、金メダル獲得が期待されるスキージャンプ男子の小林陵侑選手。今シーズンは「ジャンプ週間」で日本選手として初となる2回目の総合優勝を果たすなど絶好調です。前回の平昌大会から実力がすごく伸びている選手ですし、メダルを狙える位置にいるので、一番注目していますね。

 小林選手のことは『S-PARK』でも特集させていただいたのですが、今シーズンに入る前、助走から踏み切りにおけるフォームを少し変えたとお聞きしました。「(助走から)ただ飛んで出た感じ」と振り返る平昌の時と比べ、現在では、助走から踏み切る瞬間、膝の角度が直角になるよう、そしてそれによって垂直方向に飛び上がれるよう意識しているそうなんです。

 それは、助走で溜めた力を余すことなく伝えて飛ぶための大きなポイント。こうしたフォームの改善や、一つひとつの技術を見直したことが、今シーズンのW杯6勝(※1月19日時点)という驚異的な成績につながっているのではないでしょうか。

 小林選手のすごさは技術だけではありません。スキージャンプは周りの環境や風、雪、それによる視界の悪化などによって成績が左右される競技なので、何が起こるかわからないのですが、そんななかでもコンスタントに結果を残し続けられる。外的要因を味方につけることが可能な、すごく感覚が優れた選手です。北京のジャンプ台、そしてその日のコンディションにどう対応するのか、注目したいですね。

 また、今大会ではジャンプ界のレジェンド・葛西紀明選手が五輪中継のコメンテーターとして加わってくださいます。小林選手の所属するチームで選手兼監督を務めていらっしゃる葛西さんが小林選手のジャンプをどう語るのかはもちろん、他の競技についてもどう見ているのかも気になるところ。どんなお話をしてくださるのか、すごく楽しみにしています。


【大会連覇なるか⁉ 女子団体パシュート】


 

 続いては、スピードスケートの女子団体パシュート。平昌大会では日本初の金メダルを獲得し、今回は連覇がかかる種目です。髙木菜那選手、妹の美帆選手、佐藤綾乃選手、押切美沙紀選手と、前回とほぼ同じメンバーで臨みます。ただ、平昌の時とは作戦が違うんです。これは日本チームだけでなく、海外の選手たちも同様で、パシュートの戦い方のトレンドがこの1年でガラリと変わっているんです。

 というのも、これまでのパシュートだと、空気抵抗が大きく体力が奪われてしまう先頭を交代しながら滑るのが主流でした。しかしいまは、入れ替え回数を大幅に減らし、後ろの選手が前の選手を押して滑っていく"プッシュ式"という戦術が多く取り入れられるようになってきました。体力消耗の軽減というメリットよりも、先頭交代による減速を防ぐことに重点を置いた戦術で、実際に日本も試合に取り入れています。

 この戦術でカギを握るのが、おそらく一番うしろの位置を務めるであろう美帆選手。彼女はスプリンターであり、中長距離もできるオールラウンダーなので、うしろから前の選手たちを鼓舞しながら、チームを金メダルに導く存在になってくれると期待しています。

 それに美帆選手に関しては、個人戦も見逃せませんよね。なんと言っても、ひとりで5種目も出場するわけですから。オリンピックに出られるだけでもすごいのに......。そのオールラウンダーとしての実力を発揮して、前大会で獲得できなかった、個人種目での金メダルという夢が形になってくれることを祈るばかりです。

 そして、平昌の女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒選手。彼女は同大会後にケガをして、体が思うように動かず、ずっと自分と向き合ってきました。自分のスピードスケート人生とは何か、自分に問い続けた4年間だったのではないでしょうか。オリンピックに関して、「人生のなかでもその一瞬にしか出会えない『学び』に早く出会いたい」と話していたように、この北京の舞台が、小平選手にとってのひとつの答えが出る場所になると思います。どんな結果であれ、自分らしく滑る小平選手の姿に注目したいです。


【前人未到の"大技"成功へ 男子フィギュアスケート・羽生結弦】


 

 そしてなんと言っても、今大会で大注目なのが男子フィギュアスケートの羽生結弦選手。昨年末の全日本選手権でも現場で取材していましたが、代表内定会見で「4回転アクセルを決めて勝ちにいきたい」と明言していました。4回転アクセルを成功させて大会3連覇の偉業を成し遂げられるのか。全世界が注目するところですね。

 宇野昌磨選手は2020年に練習拠点をスイスに変えて、新たな環境のなかで大変なシーズンを送ったりと、さまざまな経験を経て、今大会に臨みます。フリーは世界屈指の難度のプログラムで滑るので、期待が高まりますね。初の大舞台に上がる鍵山優真選手も、自身の今後のキャリアにとって大きな意味を持つ大会になると思うので、どんな演技を見せてくれるのか注目したいです。

 ちなみに、これは余談ではあるのですが、冬季オリンピックのフィギュアスケートには、個人的に思い出があります。一番印象深いのが、荒川静香さんが金メダルを獲得した2006年トリノ大会です。その時の実況を担当されたのが、NHKの刈屋富士雄アナウンサー。金メダルの瞬間の「トリノのオリンピックの女神は、荒川静香にキスをしました」という名実況にすごく感動した記憶があります。その後、私がスポーツキャスターになって、とある会見場でたまたま隣に座ったことがあるのですが、とても緊張したのを思い出します(笑)。思いきって話しかけてみたら、刈屋さんがすごくいい方で、これまた感動でした。

 あとは、髙橋大輔選手が銅メダルを獲得した2010年のバンクーバー大会。その時はちょうど受験生で、試験の日程の間隔が一週間くらい空いて、東京に滞在していたんです。その間ずっとテレビでフィギュアスケートの中継を流したまま勉強していたのですが、ふと見た髙橋選手のステップに魅せられて、目が釘づけになってしまいました。勉強していたのに(笑)。あの頃は、まさかその後一緒にお仕事をすることになるとは夢にも思わなかったですね。

 このように、みなさんにとってもきっといろんな思い出があるでしょうし、選手の皆さんそれぞれにも演技にかける強い想いがあります。結果も大事ですが、まずは勝ち負けや順位より、それぞれが自分らしい滑りをして、納得のいく演技になってくれたらいいなと思います。

 まだまだたくさん期待している競技や選手がいるのですが、今回はここまで。

 最後に、2022年の個人的な目標をお話しさせてください。

 これまで東京オリンピックなどを通じて、数多くのアスリートを取材させていただきましたが、スポーツ取材とは「人」と向き合うことではないかと、最近強く感じます。スポーツを通じてその選手の人柄や物語を知り、それを言葉にして伝えていく。それが私の仕事なのだろうなと。北京では、その選手の核心の部分を伝えられるような取材者でありたいと思いますし、大会を終えたあとも、人ときちんと向き合って、人の心の大事な部分に関するエピソードを引き出し、伝えていける人間でありたい。今年はそんな伝え手になれるよう努力していきます。
 
 ではみなさま、2022年もよろしくお願いします!

PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)
7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。福岡県出身。血液型:0型。スポーツ・ニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。
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