欧州チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝はいよいよ第2レグを迎える。第1レグでは3つのカードが1点差で、唯一大差で勝利したユベントスもラウンド16で大逆転勝利を演じているバルセロナ相手に油断はできない。合計スコアで上回った4チームが5月…

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝はいよいよ第2レグを迎える。第1レグでは3つのカードが1点差で、唯一大差で勝利したユベントスもラウンド16で大逆転勝利を演じているバルセロナ相手に油断はできない。合計スコアで上回った4チームが5月に行われる準決勝に駒を進め、ウェールズのカーディフが決勝会場となる6月4日の決勝を目指す。


ハビ・マルティネスが出場停止となるバイエルンは逆転できるか(写真:Getty Images)

レアル・マドリー×バイエルン
第1レグ:2-1でレアル・マドリーが勝利
第2レグ:4月19日(火)

  1点リードした状況でサンチャゴ・ベルナベウに戻るレアル・マドリーが優勢だが、ドイツ王者バイエルンはここまで大会7得点を誇るFWロベルト・レバントフスキが肩の怪我から回復し、復帰の目処が立った。第1レグはと2得点をあげたFWクリスティアーノ・ロナウドをのぞく10人が守備を固めるレアル・マドリーの守備を攻めあぐんだが、機動力と決定力を兼ね備えるエースの存在は攻撃そのものを活性させる。第1レグに引き続きDFラファエル・バランとDFペペの欠場が見込まれる相手のディフェンスには大きな脅威になるはずだ。

 ただし、バイエルンにはディフェンス面での不安がある。DFハビ・マルティネスが第1レグで退場したため出定停止。その第1レグをけがで欠場していたDFマッツ・フンメルスも間に合うかどうか微妙な状況なのだ。高い位置から組織的にプレッシャーをかける守備に定評のあるバイエルンだが、敵地で中盤にMFトニ・クロースやMFルカ・モドリッチを擁するレアル・マドリーの攻撃をすべて封じるのは至難の業。ディフェンスラインの奮闘が求められるシーンは必ず出てくる中で、守護神GKマヌエル・ノイアーを中心に粘り強く守り、攻撃につなげることができるかが逆転勝利への生命線になる。

“事実上の決勝戦”との見方もある注目カードの第2ラウンド。どう転ぶにしても、スコアレスで決着が付く可能性は限りなく低そうだ。


 逆転を目指す岡崎擁するレスター(写真:Getty Images)

レスター・シティ×アトレチコ
第1レグ:1-0でアトレチコが勝利
第2レグ:4月19日(火)
 堅守速攻をベースとする両者の激突らしく、第1レグは大方の予想通りロースコアの試合となったが、アトレチコがFWアントワーヌ・グリーズマンの仕掛けから微妙な位置でPKを誘い、1-0の勝利を飾った。ただし、レスターにとってこの結果はそれほど悪いものではない。前半45分でFW岡崎慎司を下げ、4-4-2から4-1-4-1にシフトしたことからも、レフェリーの判定に不満を表したクレイグ・シェイクスピア監督としても第2レグに希望を持っている様子だ。

 基本的にはホームのレスターが高い位置で試合を進め、アトレチコはディエゴ・シメオネ監督の植え付けた組織的な守備から長めのカウンターを繰り出す構図が考えられる。レスターのキーマンは岡崎だ。第1レグは悔しい途中交代となったが、彼のハードワーク抜きにレスターが前から攻勢をかけるスタイルは実現できない。そこに2トップの相棒ジェイミー・バーディーの飛び出しやMFリヤド・マフレズのドリブルがうまく噛み合えば、欧州屈指のDFディエゴ・ゴディンが統率するアトレチコのディフェンスにプレッシャーをかけることができる。

 その一方で1点のアドバンテージがあるアトレチコにとってレスターが前から来ればグリーズマンを先陣としたオープンなカウンターを発動させやすい。コケの縦パスやFWフェルナンド・トーレスの正確なポストプレーからグリーズマンがトップスピードでフィニッシュに持ち込むシーンを作り出せば、レスターはGKカスパー・シュマイケルのビッグセーブに託すしかないシーンにつながりかねない。また多くの主力を休ませた週末のオサスナ戦で2得点を決めたMFヤニック・カラスコのドリブル突破も局面によってレスターを苦しめそうだ。

 レスターは守備の要であるベテランのロベルト・フートを出定停止で欠くが、もともとフートはスピードのある仕掛けの対応を得意とするタイプではない。シェイクスピア監督としては守備的MFもこなす俊足を備えるダニエル・アマーティを起用することにそれほどの躊躇は無いだろう。


 香川の第2戦での活躍にも期待がかかる(写真:Getty Images)

モナコ×ドルトムント
第1レグ:3-2でモナコが勝利
第2レグ:4月20日(水)
 第1レグの当日にドルトムントのチームバスを襲ったテロのショックは現在も尾を引いている。しかし、翌日に延期して行われた試合で後半に不屈のメンタリティを示したドルトムントは週末のフランクフルト戦にも勝利し、モナコでの第2レグに強い気持ちで臨むはずだ。

 その第1レグで躍動し、1得点1アシストを記録したMF香川真司は今まさに攻撃の中心として心身でチームを牽引している。また怪我から復帰してきたFWマルコ・ロイスがフランクフルト戦でゴールを決めたことも明るい材料だ。ただ、モナコはホームの試合に絶対的な自信を持つチーム。今季は国内リーグも含めてホームで1敗しかしておらず、引き分けも1度のみ。中盤のプレッシングからMFベルナルド・シウバを中心とした鮮やかなサイドアタックは強豪マンチェスター・シティを破ったラウンド16で示した通りだ。

 ただ、中盤にMFティエムエ・バカヨコを出定停止で欠いた第1レグから彼が復帰すると思ったら、今度はMFファビーニョが累積警告で出場できない事態になった。引き続きポルトガル代表MFジョアン・モウチーニョがスタメンに入り、バカヨコと共に攻守の舵を取るが、欧州トップレベルの強度を誇るバカヨコ&ファビーニョのコンビが揃わないことはドルトムントにとって有難い要素だ。

 それでも売り出し中のFWキリアン・ムバッペとFWラダメル・ファルカオの新旧エースは前記の爆破事件で右手首を負傷したDFマルク・バルトラを欠くドルトムント守備陣にとって危険な存在であり続けるだろう。アウェーゴール3つの差があるため、ドルトムントとしては少なくとも2点を奪う必要があるが、守備的MFのユリアン・バイグルを軸に守備のリスクを管理しながら、香川を起点にチャンスを作っていきたい。


 バルセロナはラウンド16に続く逆転を果たせるか(写真:Getty Images)

バルセロナ×ユベントス
第1レグ:3-0でユベントスが勝利
第2レグ:4月20日(水)
 準々決勝では最も差の付いた状態で迎える第2レグだが、バルセロナはラウンド16でパリ・サンジェルマンから4点のビハインドを覆して勝ち上がっており、ネイマールをはじめ選手たちの発言からもチームに悲観的なムードは無い。ただし、ユベントスは今大会ここまで9試合で2失点しかしておらず、週末のペスカラ戦も守護神GKジャンルイジ・ブッフォンなど数人の主力を休ませながら(GKはネトが出場)、しっかり完封勝利を飾った。

 バルセロナは大会11得点のFWリオネル・メッシ、ユベントスは第1レグで2得点を決めるなど大ブレイク中のFWパウロ・ディバラが注目されるが、バルセロナには言わずと知れたFWルイス・スアレスとFWネイマール、ユベントスにはペスカラ戦で2得点のFWゴンサロ・イグアイン、サイドからも要所でストライカーらしい得点力を発揮するFWマリオ・マンジュキッチと役者が揃っており、お互いの守備陣の意識がメッシとディバラに行き過ぎれば危険だ。

 どちらにしてもバルセロナはパリ戦の様に、早い時間帯に先制ゴールをしてカンプ・ノウを盛り上げ、ユベントスにプレッシャーをかける必要がある。ユベントスが誇る鉄壁の守備はバルセロナの攻撃陣を持ってしても、そう簡単に崩れないことは第1レグで証明されているが、どんな形でも先にバルセロナが1点取るとスタジアムの空気は間違いなく変わってくる。逆にユベントスが先にアウェーゴールを奪えばほぼ試合が決着してしまうため、直接FKなど序盤のセットプレーにも目が離せない。

《文=河治良幸》