準備・戦力ともにレアルが有利か? クラシコを前にした2強には余裕の差があった。欧州チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第2レグに備えてナチョ、セルヒオ・ラモス以外のレギュラー9人を休ませたレアル・マドリーに対し、CLも負けられないし首位に離…


準備・戦力ともにレアルが有利か?

 クラシコを前にした2強には余裕の差があった。欧州チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第2レグに備えてナチョ、セルヒオ・ラモス以外のレギュラー9人を休ませたレアル・マドリーに対し、CLも負けられないし首位に離されるわけにもいかないバルセロナは、アンドレ・ゴメス以外10人のレギュラーを起用した。同スコア(スポルティング対レアル・マドリーが2-3、バルセロナ対ソシエダが3-2)での辛勝だったが、裏にはこれだけの差があったわけだ。控え組が計算できるレアル・マドリー(モラタ、イスコ、アセンシオ、コバシッチ)とパコ・アルカセル以外は目途が立たないバルセロナ(先週末もアンドレ・ゴメスは期待を裏切った)の総合的な戦力差の表れでもある。

 バルセロナの方はネイマールが出場停止でパコ・アルカセルが代役に入り、レアル・マドリーの方もケガのベイルが間に合わずイスコ先発になるかもしれない。その場合、戦力ダウンの幅はバルセロナの方が大きいように思う。スポルティング戦で2ゴールの他マラドーナを彷彿とさせる5人抜きを見せたイスコが絶好調だからだ。つまり、先発メンバー11人も交代枠も含めてレアル・マドリーが上。体力面でも休養ができたレアル・マドリーが上。加えてレアル・マドリーにとってはホームゲームであり、万が一引き分けても勝ちに等しい。どう見てもバルセロナにとって不利なのだが、クラシコでは今まで何度もこういう状況でサプライズが起きてきた。ゲームを作りアシストをしフィニッシャーも務める1人3役のメッシが爆発すると、力関係は一気に逆転する。不利だからこそバルセロナの勝利はメッシ次第だと言い切って良いのではないか。

 バスクダービー、エイバル対アスレティック・ビルバオにはEL出場権が懸かっている。6位ビルバオと8位エイバルの勝ち点差は3。エイバルが破れると絶望的な6差が付いてしまう。先週末の出来は対照的だった。ビルバオが復調ムニアインとアドゥリスの2ゴールなどで5-1とラス・パルマスを一蹴したのに対し、エイバルは下位のベティスに2-0と完敗。ビルバオはウィリアムスも好調で速い両ウイング、高くてうまいセンターFW、技のあるラウール・ガルシアと前線にそれぞれ特徴があり、各人の持ち味を生かし合うコンビネーションも確立している。エイバルの方はインテンシティの高さで相手を無効化するしかないわけで、先週末のような1対1のぶつかり合いに脆さを見せては太刀打ちできないだろう。

 勝負はずばり最初の30分間で決まると思う。出足のエイバルがテンポの速いサッカーと激しいプレスでビルバオを慌てさせることができれば勝ち目があり、できなければ目は薄い。ベティス戦で先発したベベの出来が散々だったので、乾は先発するだろう。対面はウィリアムスとなるはずなのでどちらの個が上回るかも楽しみだ。


ゴールで貢献している攻撃的サイドバックのフェリペ・ルイス(写真:Getty Images)

宝の持ち腐れのエスパニョール

 エスパニョール対アトレチコ・マドリーが良い試合になるかどうかは、エスパニョールの野心次第ではないか。エスパニョールはエイバルより勝ち点が1つ少ないだけで十分ヨーロッパリーグ(EL)出場権は狙える。だが、先週末のレガネス戦は勝つことを諦めたかのような、受け身な戦いぶりで勝ち点3を取りにリスクを負った相手のミスに乗じてロスタイムの得点で勝利しただけ。1回の決定機で決められるだけのタレント(モレーノ、レージェス、ピアッティ、フラード、カイセド、バプティスタンら)がいるのに、引きっ放しでミス待ちの姿勢では宝の持ち腐れである。アトレチコ・マドリーはオサスナをカラスコの2ゴールの活躍で簡単に下した(3-0)。同じ左サイドのフィリペ・ルイスも1ゴール。フィリペ・ルイスはここ5試合で3得点。SBが有効な攻撃参加をできるのは、センターラインの守備が安定している証拠である。これでCLを含め10試合負け知らず(7勝3分)で失点はわずか3。守備的MFを並べたセンターラインをボール奪取のポイントとし、サイドから攻撃をするシメオネ監督のチームの本来の形が出ている。

 セビージャ対グラナダは、本来なら4位の前者が19位の後者に圧勝すべき試合。だがサンパオリ監督のチームの低迷は続いている。先週末スコアレスドローに終わったバレンシア戦では特に後半、ボール支配はできていた。チャンスも作った。だが、いずれも決定的ではなく、かと言って凡庸な機会をゴールに変えるタレントも出て来ない。個人で打開できる数少ない選手の1人ビトロが負傷で出場が微妙で得点するのに苦労しそうだ。グラナダの4人目の監督は驚きの元「ミスターアーセナル」トニー・アダムス。監督の座から6年も遠ざかっていてリーガ初経験の英国人に降格濃厚なチームが果たして救えるのだろうか? セルタ戦ではシステムを4-3-3に変え、FWを1人増やして中盤をフィジカルな守備的MF3人で固めて、攻守を引き上げようとした。チームは1点差の後半途中まで良く戦っていたが、最後は0-3の大敗に終わった。人選の意外性から言えば新監督は劇薬に近いカンフル剤だったが、勝利以上のカンフル剤はない。同じアンダルシアのライバルを敵地で破ったとなると奇跡を信じる気にもなれるのだろうが……。

 ビジャレアル対レガネスにはCL出場権獲得と残留の夢が懸かっている。4位セビージャと8差のビジャレアル、18位スポルティングと5ポイント差のレガネスはともにこれ以上負けられない。前節ビジャレアルはアラベスに1-2の完敗。前半ボールを取り上げられて防戦一方で2失点し、後半はラインを上げてボールを回復するも最後は5バックで守り切られた。レガネスはエスパニョールを押し込むもののゴールを決められず、最後に一発のカウンターから0-1で敗れた。ゴール前で頼りになる個人の打開力だが、それをシマノフスキ1人に頼らざるを得ないことがリーグ最少得点(26)の理由。クオリティ不足という小クラブの宿命を負いながらここまで良くやっている。

《文=木村浩嗣》