Sportiva注目アスリート「2022年の顔」第13回:松生理乃(フィギュアスケート)(第11回:鍵山優真(フィギュアスケート)苦境から五輪出場へ>>)スポルティーバが今年とくに注目するアスリートたち。その才能でどんな輝かしい活躍を見せて…

Sportiva注目アスリート「2022年の顔」
第13回:松生理乃(フィギュアスケート)

(第11回:鍵山優真(フィギュアスケート)苦境から五輪出場へ>>)

スポルティーバが今年とくに注目するアスリートたち。その才能でどんな輝かしい活躍を見せてくれるのか。「2022年の顔」と題して紹介する。

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全日本フィギュアの松生理乃。総合7位だった

【五輪代表を逃す悔しいミス】

 2回目の出場で表彰台を狙った昨年12月の全日本フィギュアスケート選手権。松生理乃(中京大中京高)はショートプログラム(SP)で順位は6位ながらも、基礎点が1.1倍になる演技後半に3回転ルッツ+3回転トーループを組み込んだ難しい構成をノーミスで滑った。自己最高の72.31点を獲得。2位の樋口新葉とは2.35点差で表彰台を十分に狙える位置につけていた。

「危ないジャンプはありましたが、久しぶりに大きなミスをしない滑りができたし、久しぶりに70点台を出せてうれしいです(※昨年8月のげんさんサマーカップSPで70.27点)。フリーも完璧な演技をそろえていきたいです」

 全日本SP後にこう話した松生。ジュニアで初出場だった前年とは違い、シニアで勝負する今季、フリーは最終グループだった。北京五輪選考会を兼ねたふだんとは違う空気に包まれた会場での最終グループ第1滑走。

「五輪選考会というすごく緊張感のある試合で、最終グループに入れてもらえたので去年(2020年)の全日本とはまったく違う雰囲気で......。メンタルの弱さというのがあり、うまくいきませんでした」

 その演技はジャンプが得意な彼女にとっては珍しい失敗からスタートした。最初の3回転ルッツで回転不足になって転倒すると、次の3回転フリップも回転不足で転んだ。

「ふだんはしない1本目のジャンプでミスをしたので、すごく焦って、どうしてだろうと思って。気持ちを切り替えられないまま2本目にいってしまい、立て直せず失敗が続いてしまった。後半にコンビネーションジャンプを持ってきてやりきろうという強い気持ちがあったので、最初にミスが出てしまってすごく悔しかったです」

 それでも2本続けたダブルアクセルをしっかり跳んで気持ちを立て直すと、後半は3回転ルッツ+3回転トーループ+2回転トーループと、3回転サルコウ+3回転トーループ、3回転ループ+2回転トーループをすべてきれいに決めた。レベル4にした3種類のスピンでもしっかり加点をもらって滑りきった。

 フリーの得点は126.46点で合計198.77点。総合順位は7位だったが、最初の2本のジャンプを跳べていれば技術点だけで10点強はプラスに、転倒減点2点もなくなり210点台に乗せられた計算。そうなれば3位で北京五輪代表になった河辺愛菜の209.65点を上回っていただけに、悔しいジャンプのミスだった。

【高難度に果敢に挑む】

 そんな松生が注目され始めたのは、2020年の全日本選手権だった。ジュニアからの挑戦だったが、SPとフリーともに連続ジャンプを後半にそろえる難しい構成に挑戦。SPはジャンプを跳ぶ前の滑りで転倒する珍しいミスをし、後半の連続ジャンプも4分の1回転不足で減点され、65.57点の7位発進だった。

 フリーでは139.17点を獲得して合計207.74点で4位に。ジャンプは演技後半の連続ジャンプの3回転フリップがエッジ不明瞭との判定で加点を伸ばせず、最後の3連続ジャンプの3回転サルコウが4分の1回転不足で0.25点減点されたなかでの結果だった。演技構成点は全項目を8点台に乗せ、優勝した紀平梨花と2位の坂本花織、3位の宮原知子以外の選手はすべて上回る65.71点を獲得していた。

 すべての連続ジャンプを基礎点が1.1倍になる演技後半に入れられるのは、松生が力をあまり使わないきれいなジャンプをするからこそ。本人も自分の武器だと自覚している。だが、今季初挑戦したシニアのグランプリ(GP)シリーズでは、右足首をねんざしたこともあってNHK杯とロステレコム杯はともに連続ジャンプをSPでは冒頭に、フリーでは2本にするレベルを落とした構成だった。両大会で180点台中盤の得点でそれぞれ6位、8位と悔しい思いをしていた。

 だからこそ全日本には「リスクはあると思ったが、この構成で勝負したいと決めた」と、強い気持ちを持って臨んだ。演技後に松生は、「後半のコンビネーションを全部きれいに立つことができたので、そこは体力的にも気持ち的にも成長できた部分かなと思う。収穫もあったフリーだったし、(緊張感のある)こういう雰囲気のなかで滑らせてもらったのもすごくいい経験になりました」と話す。

 今季の序盤はフリー冒頭にトリプルアクセルを入れる構成にしていた。7月のみなとアクルス杯では転倒し、8月のげんさんサマーカップと10月のジャパンオープンはともにダウングレードとなるも果敢に挑んだ。ロステレコム杯では「トリプルアクセルや4回転がないと通用しない時代になっている」と、今後の挑戦への意識を口にした。そして、全日本では「トリプルアクセルを入れたい気持ちはあったが、コンビネーションを後半に持ってくるのがぎりぎりだったのと、今回はミスのない完璧な演技をそろえたいと思ったから」と説明していた。

 全日本選手権の結果で1月18日からエストニアで開催される四大陸選手権代表に、三原舞依や宮原知子とともに選ばれた松生。シニア初の大舞台の経験を契機にし、さらに羽ばたいていこうとしている。