2022年(令和4年)箱根駅伝は、2位以下を10分以上突き放す大会新記録で完全優勝した青学大の強さが際立った。一方で順大、中大といった古豪復活あり、中学の先生と教え子のリレーあり、道を間違えそうになるハプニングありと話題も…
2022年(令和4年)箱根駅伝は、2位以下を10分以上突き放す大会新記録で完全優勝した青学大の強さが際立った。一方で順大、中大といった古豪復活あり、中学の先生と教え子のリレーあり、道を間違えそうになるハプニングありと話題も盛りだくさん。第98回大会を振り返り、主な名場面をまとめてピックアップした。
◆1強
前評判では「かつてない戦国駅伝」という混戦予想。青学大・原監督が「史上最強」と予告しながら、箱根前哨戦となる出雲、全日本ともに2位とコケてしまったことが要因だった。
フタを開けてみれば往路、復路も制して2位順大に10分51秒差をつけ、2年ぶりの優勝を飾った。往路に勝負をかけて戦力を投入してきた他大学を退け、復路でも2人が区間新をマーク。登録16人全員が1万メートル28分台の好タイムを持つ選手層の厚さを見せつけた。結果的には青学大の「1強」だった。4年は10走者中2人だけで、力のある下級生が残る。ここ8年で6度目の優勝となり、黄金時代の到来を予感させた。
◆戦国は2位以下だった
古豪が復活ののろしを上げた。順大が15年ぶりトップ3となる2位に躍進。東京五輪3000メートル障害7位の三浦龍司(2年)は2区11位と苦戦したが、復路で区間賞を2人獲得した4年生の奮起が目立った。箱根最多14度の優勝を誇る中大は6位で10年ぶりのシード獲得。1区で区間新をマークした吉居大和(2年)がチームを勢いづけた。
2位順大から14位明大までタイム差が6分以内に集中。シード争いはまさに「戦国」だった。3年前に総合優勝した東海大が、最終10区で3つ順位を落として11位。10時間59分38秒は前回大会3位相当のタイムで、11時間以内のチームが初めてシードを逃すほどレースが高速化し、全体がレベルアップした。1万メートル27分台が3人いて優勝候補にも挙げられた早大は13位に沈んだ。
◆11年ぶり寺田交差点
箱根ファンの聖地と化している10区の通称「寺田交差点」。2011年、シード争いしていた国学院大の寺田夏生選手がゴール120m手前の交差点で、走路を外れた先導の中継車についていってコースを間違い、一時11位に後退。ラストスパートで逆転して10位に入り、危うくシード権を逃しそうになった名場面だが、今大会も同じ交差点で冷や汗シーンがあった。
法大10区の川上有生選手(3年)が残り約1キロ地点でシード圏内の10位に浮上。ところがゴール手前の「寺田交差点」でコースを間違え、慌てて制止したスタッフの誘導で走路に戻り、10位のままゴールして事なきを得た。もしシード権を逃すようなことがあったら…歴史はやはり繰り返される。
◆19人抜き
距離が長い箱根でよく見られるごぼう抜き記録。今大会は、2区で16位から6位まで順位を押し上げた創価大ムルワの「10人抜き」が最多だった。4年間で通算「19人抜き」したのが帝京大の遠藤大地。4年連続3区を任され、1年で8人抜き、2年で1人抜き、3年で8人抜き、4年の今年は5位から3位に上げて2人抜き。チームの往路最高2位に貢献した。
区間賞は4年間で1度もなく、区間順位は1年から3位、2位、4位、4位。地味ながら黙々と走り、必ず好走したメガネの「3区職人」。注目度はそれほど高くなかったが、箱根通の間では愛される存在だった。
◆ユニホーム忘れ
東京国際大といえば、史上最強留学生の呼び声高いヴィンセント・イエゴン(3年)。駅伝の出場全レースで区間賞という圧巻の走りで、日本人学生最速の駒大・田澤廉(3年)との2区対決が注目されていた。だが今大会は足を痛め、4人抜きの区間5位。昨年マークした自身の区間新を更新できず、区間賞も田澤に奪われた。
期待通りとはいかなかった助っ人の穴を埋めたのが、3区で一時トップに並ぶ区間賞の快走を見せた丹所健(3年)。実は家にユニホームを忘れていたことが判明。前夜マネージャーに取りに行ってもらい、なんとか間に合って笑い話になったという。ミスを取り返し、同大学最高タイとなる総合5位に貢献した。
◆菅田将暉
8区にはクセの強い?名前のランナーがそろっていた。区間賞を獲得した順大の津田将希(4年)。テレビ中継で「つだ・まさき」と呼ばれるたび、俳優の「菅田将暉(すだ・まさき)にしか聞こえない」と話題に。中継アナウンサーもわざとなのかフルネームで何度も連呼したため、Twitterでトレンドワード入りした。ちなみに顔はそれほど似ていなかった。
名前といえば、8区には「りゅう」がつく名前が 4人も出場していた。早大の千明龍之佑、中央学院大の馬場竜之介、国士舘大の山本龍神、駿河台大の出仙龍之介。区間順位はそれぞれ5位、12位、15位、16位と苦戦し、文字通りの「昇り龍(竜)」とはいかなかった。
◆繰り上げピンチ
初出場の駿河台大は、中学体育教師を休職し、大学に編入した31歳の4年生、今井隆生が往路4区に出場。教師時代の教え子で5区の永井竜二(3年)へ「師弟リレー」を実現させた。法大時代に「爆走王」の異名をとり、茶髪の異端児と呼ばれた徳本一善監督の粋な演出だった。
ただ繰り上げスタートのピンチでもあった。今井は区間20位と苦しみ、順位を2つ落として最下位を走っていた。繰り上げまで残り2分と迫っていたが、徳本監督のゲキにこたえ、31歳の先生が最後の力を振り絞り、歴史に残るタスキを手渡した。
◆フリーザ様降臨せず
復路7区の名物応援として知られる人気アニメ・ドラゴンボールのキャラクター「フリーザ」に扮したコスプレ軍団は、今年も現れなかった。地球を滅ぼそうとする悪役キャラだが、箱根では観戦マナーを守り、2年連続で沿道応援を控えた。
コロナ禍で主催者の観戦自粛要請もむなしく、沿道の観戦者は昨年から3倍以上となる60万人と発表された。国会議員が観戦したという情報に批判が飛び交うなか、フリーザ軍団の行動はSNSで絶賛され「地球平和のために応援を自粛したフリーザ様を見習え」「フリーザ様が安心して出てこられる世の中になってほしい」などのコメントがあった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]