Sportiva注目アスリート「2022年の顔」第5回:佐藤心結(ゴルフ)決意表明インタビュー(後編)前編はこちら>>――ゴルフを始めたのは、7歳の時とうかがっています。「小学校1年生の時のクリスマスで、(父方の)祖父がジュニア用のクラブを…

Sportiva注目アスリート「2022年の顔」
第5回:佐藤心結(ゴルフ)
決意表明インタビュー(後編)

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――ゴルフを始めたのは、7歳の時とうかがっています。

「小学校1年生の時のクリスマスで、(父方の)祖父がジュニア用のクラブを一式プレゼントしてくれたんです。それですぐに、ゴルフが趣味の祖父と父と一緒に実家(神奈川県小田原市)の近くにある練習場に行きました。難しかった記憶はあるんですけど、ちゃんと当たった時にボールが遠くへ飛んでいく感覚が楽しかったことは覚えています。

 そこから、徐々に真剣にやるようになっていって。両親と相談して、『早い段階からプロに教わったほうがいい』ということで、しばらくして練習場のレッスンプロに教わるようになりました」

――プロゴルファーになりたいという夢を抱いたのはいつ頃でしょうか。

「(レッスンプロに)習い始めてから2年くらい経った頃、小田原市で小・中学生が参加するゴルフ教室みたいなのが開催されたんです。それに参加した時に、三觜喜一(みつはし・よしかず)コーチを紹介されました」

――小学校3年生の時に三觜コーチと出会って、そこから師事してプロまで目指すようになった、と。

「はい。三觜コーチに習い始めるにあたって、最初に面談があったんです。その際、三觜コーチが『(私の)目が輝いている』とおっしゃって。私のやる気を感じてくださったんだと思います。

 私は、小学校1年生から3年生まではサッカーもやっていて、男の子たちと一緒にやりながらスタメンで試合に出ていたんです。サッカーで上(プロ)を目指すことも考えていたんですが、三觜コーチに教わるようになった段階で、サッカーはやめました。(上につながる)女子のサッカーチームからも(勧誘の)話をもらっていたんですけど、ゴルフのほうが楽しかったし、将来稼げるかなと(笑)」

――三觜コーチは早い段階から、佐藤選手の将来性について何かおっしゃっていましたか。

「『身体能力が高い』と言ってくださっていました。飛距離も同年代の子たちと比べたら、20~30ヤードは前にボールがありましたから」

――中学校では陸上部にも所属されていたんですよね。それはゴルフのトレーニングになると考えてのことでしょうか。

「そういうわけではありません。最初は長距離の練習に参加していましたし、砲丸投げをやるようになったのも、砲丸投げをやっている選手を見て、私もそちらのほうが向いているかなと思って。砲丸投げもゴルフに生かせると考えていたわけではありませんが、結果として、下半身強化にはつながったような気がします」

――中学校時代のゴルフの成績はいかがでしたか。

「全国大会には出場していましたが、上位というか、入賞するような実績はまったくありません。中学校の時はゴルフの練習も週に5日やるか、やらないか。ゴルフ漬けの日々を送るようになったのは、高校に進学してからです」

――実家のある神奈川県を離れて、茨城県の明秀学園日立高校を選んだ理由を教えてください。

「明秀学園日立高に行っていた先輩から話を聞いたり、実際に私も(同校へ)足を運んだりするなかで、圧倒的なゴルフ環境のよさに惹かれ、ゴルフに熱中できるだろうな、と。加えて、寮生活をして、早い段階から自立したいと思ったからです。

 女子寮は学校の敷地内にありますし、ゴルフの活動にもすごく理解のある学校です。私にとっては、本当にありがたいです」

――高校3年生になって、日本女子アマで3位、日本ジュニアで4位タイと結果を残せるようになった要因を教えてください。

「もともとドローヒッターだったんですけど、高校2年生の冬場にフェードに変えてからボールが曲がらなくなり、パーオン率が上がったことがそうした結果につながっていると思います」

――ドローからフェードに変えたのは、飛距離よりも精度を求めた、ということでしょうか。

「そういう選択をしました。飛距離は十分にありますから、精度を上げたほうがいいと。それに、最近は状況によって、ドローとフェードを打ち分けられるようになってきました」

――高校3年生ですが、ずいぶんと落ち着いて見えますね。

「そんなことはないです(笑)。ただこの3年間、女子高校生らしいことはぜんぜんしていなくて、遊びに行くこともなく、毎日ゴルフの練習をしてきた感じがします。周りの子たちが買い物に行ったり、オシャレをしたりしていても、そういったことにそれほど興味がそそられなかったのもありますが。それだけ、ゴルフに夢中でした」

――ゴルフ漬けの毎日で、息抜きをする時間はあったのでしょうか。

「実家に帰った時は、飼っている犬と戯れてすごしています」

――音楽を聴いたりはしますか。

「練習中にも聴きますし、試合直前のパッティンググリーンではテンションの上がる曲を聴いています。基本的には自分の好きな曲や、その時に流行っている曲を聴くことが多いです。最近は、ワンオク(ONE OK ROCK)をよく聴いています」

――2022年シーズンに向けての抱負と、ツアープロとしての目標を教えてください。

「優勝を目指して頑張るのはもちろんですが、まずはリランキング(第1回は7月のニッポンハムレディス終了後)でも上位に残れるように頑張って、後半戦の出場権もしっかり得てシード(メルセデス・ランキング50位以内)を獲りたいです。1年目から優勝のノルマを自分に課すようなことはしたくないので、地道に、今の勢いのまま(プロツアーにも)臨めたらいいな、と思っています」

――それでも、先ほど「(ゴルフのほうが)稼げる」と言っていましたし、上位争いに加わっていく意識は高いのではないですか。

「そうですね、家族に恩返ししたいのもありますし、(国内外を問わず)地震や水害などでご苦労なさっている被災地などに寄付をして、少しでもお役に立てれば、という気持ちもありますから」

――プロツアーに挑むにあたって、このオフに力を入れていきたい課題はありますか。

「ショートゲームですね。グリーン周りのアプローチなど、引き出しを増やせたらいいなと思って、今も練習しています」

――昨今の女子ツアーは、若い選手たちが華々しくデビューして、どんどん勝利を飾っています。その姿をどう見ていますか。

「年々レベルも上がっている印象があって、常にアンダーパーのスコアを出さないと上位で戦えない時代になってきているように思います。そういうゴルフの流れに自分もついていきたいです。そうすれば、優勝も遠くないんじゃないかなと思っています。

 昨年のスタンレーレディスでは2位タイという結果を出して、プロの戦い方を勉強させてもらいました。その経験を、開幕戦から生かしていきたいです」

――憧れの畑岡奈紗プロの背中を追って、将来的にはアメリカで戦いたい気持ちなどもあるのでしょうか。

「まずはプロの舞台で(畑岡プロと)一緒に回ってみたいです。そして私も、(畑岡プロのように)誰からも尊敬される、愛されるプロを目指していきたい。ゴルファーとしてだけでなく、人間としても"一流"になれるように頑張りたいです」

(おわり)

佐藤心結(さとう・みゆ)
2003年7月21日生まれ。神奈川県出身。明秀学園日立高3年。2021年プロテスト合格。2021年ファイナルQT11位。身長161cm。血液型B。