今年も"春の高校バレー"こと、バレーボール高等学校選手権の季節がやってきた。1月5日から開幕する今回が74回目となる伝統ある同大会。これまでも、春高からたくさんの日本代表選手やVリーガーが輩出された。 今年最大の注目選手は、男子の高松工芸…

 今年も"春の高校バレー"こと、バレーボール高等学校選手権の季節がやってきた。1月5日から開幕する今回が74回目となる伝統ある同大会。これまでも、春高からたくさんの日本代表選手やVリーガーが輩出された。

 今年最大の注目選手は、男子の高松工芸・牧大晃(まき・ひろあき/3年)だろう。身長は、なんと210cm。これだけの高身長だと、通常はミドルブロッカーになることが多くサーブレシーブの経験が積めないものだが、淵崎龍司郎監督はそうしなかった。



210cmのアウトサイドヒッターとして注目を集める高松工芸の牧(中央)

 牧はサーブレシーブをするアウトサイドヒッターで、レシーブセンスも決して悪くなく、大型選手にありがちな"鈍さ"も見られない。スパイクの決定力はまだパワー不足なところがあるものの、最高到達点は350cm。日本代表選手でも到達点が350cm以上の選手は少なく、牧は軽々と相手ブロックの上から打つことができる。昨年の春高では、ほぼ初めての全国大会とあって緊張する姿が見られ、東福岡に敗れてベスト8に終わったが、今大会はどうなるか。

 昨夏のインターハイ予選で敗退したあと、牧には思いがけない知らせが届いた。29年ぶりにオリンピックでベスト8進出を果たした、シニア日本代表の合宿に「練習生」として招集されたのだ。淵崎監督から「思い切って行ってこい」と後押しされ、石川祐希主将や髙橋藍といった同じアウトサイドヒッターのプレーを間近で見た牧は、レベルの高さに大きな刺激を受けた。

「日本のトップレベルのアウトサイドヒッターは、こんなにすごいんだ。もっともっと頑張らなければダメだ」

 そう誓ってチームに戻った牧はさらに練習に励み、キャプテンとしてチームを牽引する。

【優勝候補の小さな大エース】

 そんな牧を擁する高松工芸などを差し置いて、優勝候補の筆頭と目されているチームは、インターハイで4年ぶりの優勝を果たした名門・鎮西高校(熊本)。同大会では、2年生エースの舛本颯真(ますもと・そうま)が決勝で49得点を挙げるなど、打ちまくって鎮西を頂点に導いた。

 182cmと上背はさほどないが、同校OBの水町泰杜(早稲田大2年)とほぼ同サイズであるため、桝本も水町を目標にして努力してきた。力を入れて強化してきたのはサーブレシーブ。1年時の春高で徹底的に狙われたことが大きなきっかけだが、この身長で上を狙うなら、サーブレシーブの上達は欠かせない。

 水町にも引けを取らないと評されるスパイクでも、「エースとして全部決めきるつもりで頑張る」と意気込む17歳は、名門を再び春高のセンターコートに連れていけるのか。桝本の対角を務める192cmの平田悠真(ひらた・ゆうま/2年)が、エース桝本に集中するであろうマークをどれだけ引き寄せられるかも大きなカギになる。

 そして昨年度の春高の覇者、東福岡。大エースだった柳北悠李(東亜大1年)が抜け、今夏のインターハイは準決勝で鎮西に敗れた。しかし、優勝を経験したメンバーが6人残っているため、春高では連覇も十分に狙える。

 一方で女子の注目選手は、下北沢成徳のミドルブロッカー、古川愛梨(ふるかわ・あいり/2年)。ミドルブロッカーでありながら、184cmの高身長からパワフルなスパイクを放つ。それは、下北沢成徳の伝統である質実剛健なトレーニングから生まれたものだ。



長身でパワーがあるミドルブロッカーとして期待の下北沢成徳・古川

 1年時は春高への出場を逃したが、昨夏のインターハイで頭角を現してチームも優勝した。そのあとの天皇杯ブロックラウンドでは、V2の群馬銀行、東海大と格上チームを破って出場権を獲得。ファイナルラウンドでもV2のブレス浜松を破って2回戦に進出している。

【就実ツインズ、最後の春高へ】

 古川には、4回のオリンピック出場を果たしたレジェンドOG、荒木絵里香に続く日本代表待望のパワーミドルブロッカーとして期待がかかる。最高到達点は300cmで、下北沢成徳独特のオープントスも打ちこなす。そして、ミドルブロッカーの大事な役割であるブロックについても「しっかりと形を作って、後ろの選手がレシーブしやすいブロックを心がけたい」と意気込む。

 唯一の1年生スタメン、リベロの内澤明未(うちさわ・あみ)も今大会の注目選手のひとり。岩手出身で151cmと小柄ながら、抜群の反応で強打を次々と上げていく。チームのムードメイカーでもある。

 下北沢成徳の春高出場はすんなりとは決まらなかった。インターハイ予選では勝利した八王子実践にストレート負けを喫し、代表決定戦でも文京学院大女に第1セットを先取され、そこからの反撃となった。しかし、この経験が本戦の苦しい時に生きるだろう。

 そして何よりの注目は、深澤めぐみ・つぐみの「就実ツインズ」。ともに3年生で176cm。姉のめぐみは久光スプリングスに、妹のつぐみは東レアローズに内定。これまでは常に同じチームでプレーしてきたが、これからは別々の道を歩むことになる。その分、春高にかける思いは強く、「春高は(高校での)最後の大会ですから、しっかりとやりきりたい」と口を揃える。

 前年度の春高を制したことで、2枚エースの2人は徹底的にマークされた。優勝候補と目された昨夏のインターハイでは、決勝で下北沢成徳に逆転負け。オレンジコートでその雪辱を果たせるか。プレッシャーも大きいだろうが、その状況も楽しみながらラストゲームを飾ってほしい。