1月2日、東京・国立競技場で行なわれたラグビー大学選手権・準決勝。関東リーグ戦王者の東海大と激突した関東大学対抗戦3位の明治大は、後半に連続3トライを許して21−24と逆転された。 険しい顔をして円陣を組む明治大の面々。そんな…

 1月2日、東京・国立競技場で行なわれたラグビー大学選手権・準決勝。関東リーグ戦王者の東海大と激突した関東大学対抗戦3位の明治大は、後半に連続3トライを許して21−24と逆転された。

 険しい顔をして円陣を組む明治大の面々。そんななか、キャプテンのSH(スクラムハーフ)飯沼蓮(4年)は前向きな言葉でチームを引っ張った。

「準決勝はこうでなくちゃ、おもしろくない! これで勝ったらもっとおもしろくなるし、タフなゲームをしたほうが(決勝に向けて)自信になる」



東海大を攻守で圧倒して決勝に駒を進めた明治大

 明治大は今季、春から夏にかけてフィットネスを重点的に鍛えてきた。だからこそ、飯沼主将は後半20分以降の「苦しい時間が明治の得意な時間帯」だと確信していた。

「ここからが『明治タイム』ということを、今までの試合より強く、みんなに伝えました」

 後半20分を過ぎると、まさに紫紺の軍団のギアが一段上がった。後半21分、飯沼を中心にボールを広く展開したのち、まずはCTB(センター)廣瀬雄也(2年)がPGを決めて24−24と同点に追いつく。

 さらに後半26分、FB(フルバック)雲山弘貴(4年)のキックで敵陣に入ってチャンスを得ると、ラインアウトを起点に「田村優2世」の呼び声高いSO(スタンドオフ)伊藤耕太郎(2年)が躍進。タックルに来た相手ふたりを跳ねのけて、そのまま右中間にトライを挙げて31−24と逆転に成功した。

「(相手をパワーで跳ねのけてのトライは)初めての経験だったので、自分でもビックリしました!」

 高校時代より体重を5kg増やして85kgになった伊藤は、フィジカルアップの効果に自身も驚いた。

 明治大は一番苦しい時間帯に実力を発揮し、終わってみれば東海大に39−24で勝利。3年ぶりに決勝の舞台へと駒を進めた。

「タフなトーナメントをひとつひとつ勝ち上がっていく選手たちを、本当に頼もしく見ていました。後半のタフな時間帯を乗りきって、流れを取り戻したことを自信に変えて、決勝に向かって準備していきたい」

 今季から就任した神鳥裕之監督は、目を細めて選手の成長ぶりを見守った。

【FWの奮闘にBKが応えた】

 明治大は後半序盤に逆転されたものの、前半はFWとBKが一丸となったプレーがかみ合い、今季一番とも言える会心の出来だった。守備では外国人FWが3人先発した東海大にタックルで刺し続け、攻撃でもボールを大きく動かし相手を疲れさせて試合を優位に進めた。

 準々決勝の「早明戦」ではPR(プロップ)大賀宗志(3年)を中心としたFWが奮闘した。この東海大戦でも試合のリズムを作ったのは、紫紺のFW陣だった。

 東海大が得意のモールで攻め込むものの、明治大FWはしっかりと相手の塊を止めてトライを許さない。スクラムでもペナルティを獲得するなど、東海大FWに一歩も引かなかった。

 そのFW陣の奮闘に、BK陣もすぐに応える。

 前半12分には、ラインアウトからのサインプレーから大学生で唯一東京五輪に出場したWTB石田吉平(3年)がスピードを活かして中央にトライ。さらに前半25分にも、キックカウンターからボールを動かして再び石田が左隅にトライを決めた。FWとBKが一丸となって掴んだトライと言えるだろう。

 今季の明治大4年生たちは、1年時に大学選手権で優勝を経験したものの、2年時は準優勝、そして3年時はベスト4と、徐々に成績が下がる悔しい思いを抱えてきた。そのため「もう一度、強い明治を作り上げて、優勝して明治のプライドを取り戻す」という意味を込めて、「MEIJI PRIDE」を今季のスローガンに掲げた。

 1月9日に行なわれる決勝の相手は、関東対抗戦で7−14と惜敗した帝京大だ。神鳥監督は決勝に向けて「特別な1週間を過ごすのではなく、今までどおりのルーティンで動いて、選手を送り出していく」と語り、平常心でこれまでの準備を続けていくことを強調した。

 プレーと言葉でチームを引っ張り続けているキャプテンの飯沼は「セービングだったり、ゲインされたら全員で追いかけたり、細かいプレーが勝利を近づける。『勝利の神は細部に宿る』ということが大事です」と語気を強めた。

【3年前の優勝と似ている?】

 副キャプテンのNo.8(ナンバーエイト)大石康太(4年)は語る。

「1週間でスキルがうまくなることはない。今季やってきたBIG(back in game)、2秒で立ち上がって前を見ることを、アタック、ディフェンスでも続けていく」

 3年前、明治大は対抗戦4位ながら大学選手権で勝つごとに1試合ずつ成長し、22年ぶりの頂点に輝いた。今季も状況は似ており、対抗戦3位から決勝戦まで勝ち進んだ勢いもある。対抗戦で課題だった決定力も修正し、セットプレーや攻守にわたって前に出る力、FWとBKの一体感も増してきた。

 1ヶ月前より、明治大のチーム力が上がっていることは明らかだ。

 果たして、明治大は3大会ぶり14回目の大学王者に輝き、プライドを取り戻すことができるか。