Sportiva注目アスリート「2022年の顔」第3回:髙橋藍(バレーボール)(第2回:吉田輝星(プロ野球)「今さら言いなりになるのもダセえ」>>) スポルティーバが今年とくに注目するアスリートたち。その才能でどんな輝かしい活躍を見せてくれ…

Sportiva注目アスリート「2022年の顔」
第3回:髙橋藍(バレーボール)

(第2回:吉田輝星(プロ野球)「今さら言いなりになるのもダセえ」>>)

 スポルティーバが今年とくに注目するアスリートたち。その才能でどんな輝かしい活躍を見せてくれるのか。「2022年の顔」と題して紹介する。

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 ここ2年で、男子バレーボール日本代表の髙橋藍は大きく飛躍を遂げた。

 2020年2月、優勝した春高バレーでの活躍が買われ、アンダーカテゴリーでの選出がなかったところから飛び級でシニア代表入り。国際大会が"解禁"された2021年の5月から行なわれたネーションズリーグでも活躍し、東京五輪12名の一員にも選出。五輪本番でもスタメンとして、日本の29年ぶりとなるベスト8進出に大きく貢献した。

 五輪後に日体大に戻ると、「今は大学のタイトルを獲りたい」という思いを胸に関東一部秋季リーグを優勝。12月の全日本インカレでは準々決勝で敗れたが、大会終了後にイタリアへと飛び立った。東京五輪後のスポルティーバでのインタビューで「僕にもっと海外での経験があれば、日本はさらに上に行けたのでは」と思いを語っていたが、そんな髙橋のもとにセリエA1部の中堅チームであるパドバからオファーが届いたのだ。



イタリア・セリエAのパドバでプレーする髙橋藍(c)Italia Superleaga

 パドバは過去に、越川優(ヴォレアス北海道)、石川祐希(ミラノ)が所属していたチームで、髙橋は3人目の日本人選手となる。注目度は高いようで、パドバの地元メディアだけでなく、イタリアのバレーメディア、国際バレーボール連盟の公式SNS「volleyballworld」でも髙橋のパドバ入りが報じられた。

 イタリアでの背番号は、石川が初めてシニア代表に選ばれから代表、大学、イタリアでもつけている14番。セリエAデビューは、チームに合流して早々の12月18日に行われたモデナ戦だった。石川がイタリア挑戦の最初に在籍した強豪を相手に、パドバは流れを掴むことができずに2セットを連取される。3セット目もリードを許し、スタメンを大幅に入れ替えるなかで、髙橋もコートに送り出された。

【パドバ加入を石川祐希が後押し】

 出場してすぐに、モデナのオポジットでオランダ代表のニミルからサーブで狙われ、レシーブをダイレクトに相手コートへ返してしまったが、その後はサーブレシーブも安定。前衛でもスパイクを放ち、デビュー戦で初得点を挙げた。

 しかし、2戦目のチヴィタノーヴァ戦(12月26日)では1セット目終盤に投入されたものの、相手サーブがミスになったことでボールには触らずコートアウト。なかなか出場機会に恵まれない厳しいスタートになったが、ある程度チームが固まった、リーグ途中での合流ということを考えると致し方ない。得意のサーブレシーブで監督の信頼を得られれば、攻撃でチャレンジさせてもらえる場面も出てくるだろう。

 12月30日時点でパドバは7位。髙橋個人は2試合2セットに出場し、3打数1得点、サーブレシーブを3本して2本返した。今後、このスタッツを伸ばしていってほしい。

 前述したように、髙橋のセリエA加入はイタリアでも大きなトピックスとして扱われている。髙橋のSNSに非常に多くのフォロワーがいることも現地で話題になっているようで、イタリアリーグ公式サイト『Lega Pallavolo Serie A』のインタビューでは「東京オリンピックで結果を出せたことが、それにつながったんだと思います」と説明した。

 同インタビューでは、パドバを選んだ理由について「若い選手が多くて、同じ年代で、一緒に成長できるところが大きいと思ったから」と回答。チーム選びを相談した相手として、2019-2020シーズンをパドバで過ごした石川の名を挙げた。

「パドバに決めたのは、石川選手に勧められたことも大きいです。彼はパドバで大きく成長できたし、『すごくいいチームだよ』と言ってくれました。それが後押しになりましたね」

 さらにセリエAデビュー戦については、「観客のみなさんが『ウェルカム、ウェルカム!』と言ってくださって、本当にうれしかった。(リーグに)すぐに慣れることは難しいと思いますが、全力を尽くしたい」とコメントした。

【試練を乗り越えて成長へ】

 髙橋が出場機会を増やしていくためには、カナダ代表のエリック・レプキーとのポジション争いで彼を上回らないといけない。厳しい闘いになるだろうが、これまでのバレー人生、日本代表でも控えの経験がほとんどなかった髙橋にとって、この試練は精神的にも成長するいい機会になるはずだ。

 中央大学時代の石川が、イタリア挑戦1年目で"オールスター軍団"モデナでプレーしていた時も、格下の試合に出場するくらいで控えが多かった。しかし、そういった経験を乗り越えて、石川はリーグ屈指の選手になった。「目標の選手」としてその背中を追いかける髙橋も、同じように成長していってもらいたい。

 石川との直接対決があるとしたら、現地時間2月27日に予定されているミラノ戦。ミラノは新型コロナ陽性者が4人出たため、リーグのプロトコルによって試合とトレーニングが延期になっている。この先、その影響が出るかもしれないが、対決が実現する頃までには出場機会を増やしておきたいところだ。

 ヴァレンティアに所属する西田有志を含め、セリエAで3人の日本人選手がプレーするのは初めてのこと。それぞれが日本代表として東京五輪を経験し、2024年のパリ五輪を目指す若き選手たちであることも特筆したい。

 日本人選手の扱いに"手慣れた"パドバによって、髙橋がどうステップアップしていくのか。2022年も目が離せない。

(第4回:富永啓生(バスケットボール)日本バスケの救世主となれるか>>)