Reina+Worldインタビュー後編東京大学大学院の博士課程で昆虫の研究をしながら、シンガーソングライターやタレント、モデル、サイエンスコミュニケーターとマルチに活動するReina+World(レイナワールド)さん。さらに2021年からは…

Reina+Worldインタビュー後編

東京大学大学院の博士課程で昆虫の研究をしながら、シンガーソングライターやタレント、モデル、サイエンスコミュニケーターとマルチに活動するReina+World(レイナワールド)さん。さらに2021年からはレースクイーンとしての活動をスタート。異色のキャリアを歩む彼女は、レースクイーンとしても独自のポジションを築きたいと考えている。「科学と社会をつなぐことが夢」と語る彼女は、レースクイーンとして活動を続けながら、「科学の知識を生かしてモータースポーツの魅力を伝えていきたい」と目標を語る。(前編から読む)



昆虫研究の傍ら、レースクイーンや歌手などマルチに活動するReina+Worldさん

【モータースポーツと科学をつなぐ】

ーー前編では、レーシングカーが速い理由を理系の知識を使って解説し、「科学とモータースポーツをつなぐ役割を果たしたい」と話していました。白衣を着たレースクイーンというのはおもしろいですね。

レイナワールド 私は小さい頃、「昆虫博士」というあだ名をつけられるくらい昆虫が好きで、将来は生き物の研究者になりたいと思っていたんです。今も大好きな昆虫に関する学位を取るために研究していますので、得意の生き物の話をからめて、レーシングカーの速さの秘密をうまく解説できたら、サーキットに来るお客さんも喜んでくれるのかなと感じています。たとえば、レーシングカーは速く走るために空気抵抗を減らし、高速走行時に姿勢を安定させる形状をしています。それは海を泳ぐマグロも一緒。マグロは形状が流線型であるほか、渦流の発生を抑える突起や、高速で泳ぐ時に姿勢を安定させる(マシンや飛行機の)水平尾翼のような部位があります。

 また、フォーミュラカーには鳥のようにウイング(羽根)がついていますが、鳥とレーシングカーの羽根にはどんな違いがあるのか、わかりやすく解説できるレースクイーンになれたらおもしろいかなと思っています。科学者や技術者と一般の方々をつなげるサイエンスコミュニケーターの役割を果たしていけたらうれしいですね。

ーーそれにしても理系の博士号取得を目指しながらレースクイーンの活動をしているというのは聞いたことがありません。

レイナワールド まずは、その珍しさで注目してもらい、科学に興味を持つきっかけになってくれたらうれしいです。レースの開催期間中、サーキットではレースクイーンがバックステージでトークショーをしたり、歌ったりしていますが、科学教室をさせてもらえたら最高ですよね。科学と社会、そしてモータースポーツをうまくつないでいけるレースクイーンになりたいです。

ーーレーシングカーは「科学の塊」ですので、教材となるネタはたくさんありそうですね。

レイナワールド 私が2021年にレースクイーンをしたスーパー耐久ではトヨタから水素エンジンを搭載したマシンが登場しました。来年は、他のメーカーもエコなマシンで参戦すると聞いていますので、すごく気になっています。エコなレーシングカーを使って脱炭素社会についても解説できると思います。

【炎上気にせず、攻める】

ーー実際に子どもたち向けの科学教室で先生をしているそうですね。

レイナワールド ペットボトルのなかで魚の模型の浮沈子(ふちんし)が浮き沈みする実験をしたり、偏光板という3D眼鏡の素材を貼り合わせて万華鏡を作ったり。あとは野性の植物を使ってハーバリウムという植物標本のインテリアを作るワークショップをしたりしています。

ーー勉強は子どもの頃から得意だと思いますが、スポーツはいかがですか?

レイナワールド 大学時代から、歌手のマドンナやブリトニー・スピアーズのような、腰がくびれて、胸の谷間がしっかりあるような、カッコいい女性に憧れていました。レースクイーンとして活動していますので、身体を常にシェイプしていなければなりません。筋トレは毎日欠かさずしています。パーソナルジムに通ってハードに鍛えていた時期もありましたし、自宅でもいろんなトレーニングをしています。

 実は2020年の夏に激太りして、今よりも16キロも太っていたんですよ(笑)。コロナ禍で家にいることが多かったですし、研究の進捗に関しても大きなストレスを抱えていました。それでめちゃめちゃ食べてしまったんです。でもそのあとにレースクイーンのオーディションもあったので筋トレをして、食生活も変えて半年で16キロ落としました。



「サーキットで科学教室をしたい」との目標を語る

ーーさまざまな活動をしてますが、原動力になっているのは何ですか?

レイナワールド 表現がしたいという思いです。曲作りもそうですが、感情や体の動きで何かを表現したいっていう気持ちがずっとありました。特に大学に入ってから、そういう気持ちが強くなったような気がします。きっと現役で東京大学に入っていたら、もしかしたら芸能活動はしておらず、研究に没頭することもなく、官僚を目指していたかもしれません。

 小さい頃は生き物の研究者になりたいと思っていましたが、小学校5年生の時に祖母をガンで亡くしたのがきっかけで、将来は東京大学の附置研究所でガンの研究をすることを目指しました。でも東京大学に落ち、千葉大学に入学することになりました。合格者の少ない後期試験に受かったうれしさ半面、やっぱり悶々とする自分がいたんだと思います。何か爪痕を残したいという気持ちが沸々と湧いてきました。2歳半から高校生までバイオリンを習っていて音楽が得意だったので、まずは自分で作曲してみようと思ったんです。

ーー楽曲には生物学や科学の専門用語が散りばめられています。やはり科学に注目してほしいとの思いがあったのですか?

レイナワールド そうですね。あと自分のいろんな活動が研究の世界に還元されるような仕組みを生み出すきっかけになれたらいいな、という気持ちが強くあります。ちょうど音楽活動を始めた頃は、研究者の待遇が悪いと言われ始めた時期で、私の周りでも真面目に研究に取り組んでいる人たちが資金的にすごく困っていました。そうした問題を解消し、研究環境をよくするために少しでも役立てたらいいなと思っています。

 最初の頃は私の活動が研究室に迷惑をかけちゃうと思って、あまり目立たないようにしていたのです。でも、やっぱり芸能活動は攻めないと多くの人に伝わっていかないなと感じています。炎上を気にしていたら何もできませんので、音楽やレースクイーンの活動ではどんどん攻めて、作品や情報を発信していきたいですね!

(終わり)

【Profile】
Reina+World(レイナワールド)
千葉大学理学部生物学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科修士課程に進み、2016年に修了。現在は東京大学大学院理学系研究科博士課程在学中で、分子生物学の研究をしながらレースクイーン、シンガーソングライター、タレント、モデルとしてマルチに活動中。2016〜2019年にツールドさいたまクテリウムのPRを担当し、2021年からはスーパー耐久、全日本ロード選手権でレースクイーンを務める。