2021年の日本ゴルフ界を振り返る 後編「女子ゴルファーが長くプレーするために」 2021年は、日本ゴルフ界にとって大躍進の年になった。男子は松山英樹(LEXUS)が、マスターズで史上初の海外メジャー制覇を果たした。女子は笹生優花(ICTS…

2021年の日本ゴルフ界を振り返る 後編「女子ゴルファーが長くプレーするために」

 2021年は、日本ゴルフ界にとって大躍進の年になった。男子は松山英樹(LEXUS)が、マスターズで史上初の海外メジャー制覇を果たした。女子は笹生優花(ICTSI)が全米女子オープンを制し、稲見萌寧(都築電気)が東京五輪銀メダルを獲得した。来年も日本勢の活躍が期待されるが、米ツアー3勝、国内ツアー10勝の丸山茂樹(セガサミーホールディングス)が、快挙の意義、世界を舞台に結果を残し続けるための課題を「THE ANSWER」に語った。前編「松山英樹がもたらしたもの」に続き、後編「女子ゴルファーが長くプレーするために」を公開する。(構成=柳田 通斉)

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 2021年、女子選手も大きく飛躍しました。笹生さんが、海外メジャー大会の全米女子オープンを制し、稲見さんが東京五輪で銀メダル。(松山)英樹がマスターズ優勝したのと同じく、2人の快挙はジュニア世代に大きな希望をもたらしたと思います。

 そして、国内ツアー賞金ランキング2位の古江彩佳さんと2019年に全英女子オープンを制した渋野日向子さんが、来季の米女子ツアー出場権を手にしました。これで畑岡奈紗さん、笹生さんを含め、計4人が米国を主戦場にすることになりますが、ツアールーキーの古江さん、渋野さんには「早く英語の習得を」と伝えたいです。

 僕は30歳になってから、PGA(米男子)ツアーでプレーしましたが、最後まで語学に苦労しました。英語のできるキャディー、マネジャー、奥さんがサポートしてくれましたが、試合になれば、選手同士でコミュニケーションを取る機会が多くなります。僕もラウンド後の練習などで、タイガー(・ウッズ)に「このケースでのグリッププレッシャーは? ウェッジのショットで大切なところは?」などと技術的な質問をして、答えてもらったことがあります。タイガーは本当に惜しみなく教えてくれるのですが、もっと深い話をしたいと思いながら、それを止めたことがあります。理由は語学力に自信がなかったからです。

 振り返ると、練習、トレーニング、移動の連続で語学力をつけるための時間があまりなかったのですが、今でも「頭の柔らかい20代でPGAに行って語学力もちゃんとつけるべきだった。そうすれば、もっと多くの情報を得てインスピレーションも浮かんだはず」と思ったりします。その意味では、古江さん、渋野さんは、早々に他の選手と英語でコミュニケーションを取れるようになった宮里藍さんをお手本にすべきです。2人とも20代前半と若いので、努力次第で対応できると思います。

コーチ、キャディーがいても大事な自力「依存は良くない」

 一方で、彼女たちのような若きトッププロが、活躍する期間が短くなっている現実があります。国内女子ツアーを見ても、高卒1年目、2年目で優勝するのはいいのですが、5年もすると、シード権を失う選手が多く出ています。そして、また新たな選手が出てくる。言い方を変えると「世代交代が激しい」ですが、これでいいのでしょうか。

 理由は壁に当たった時に、自分自身を修正できる「コックピット(操縦席)」がないからです。何かのエンジントラブルが起きた時、「こういう風にすれば元に戻れる」というものがない。だから、次の出航でもうまくは飛べないのです。

 気づかなかった修正点をコーチに見つけてもらうということはあるでしょう。しかし、私は「どんな依存も絶対に良くない」と思いながらゴルフをしてきました。依存ばかりをしていると、ますます、自力で戻れなくなるからです。コース上では自分次第ですし、グリーン上でもキャディーさんに依存していると、自分で読む力が薄れてきます。逆に持っているクセも含めて自分自身を知っていれば、誰かに少しアドバイスを受けると、すぐに修正できるようになるのです。

 男子の場合、試合に出られるまでが大変なので、コツコツとコックピットを築いた選手が多くいます。だから40代、50代でも上位でやれる選手が少なくないのです。ただ、女子でも40代の大山志保さん、李知姫さん、30代半ばの上田桃子さんが頑張っていますし、若い選手たちには、彼女たちをお手本に、どうすれば自分を知り、自力で修正できるようになるかを考えてほしいと思います。せっかくの秀でた能力を失わないためにも。

――渋野のスイングについて

 前のスイングに戻りつつある印象です。今年、大胆な改造をして超コンパクトにしたのは事実ですが、今は十分にバックスイングが上がっていて、改造前と改造後の間にあるスイングになっていますね。本人が納得していれば、それはそれでいいと思います。

――自身のプレーは

 左指を痛めて10年以上になります。その間もケガが続いて、左肩の腱断裂で手術も受けました。肩が良くなったら、今度は首が痛くなったりで、(2019年以来)シニアの試合に出るという夢からは遠ざかっています。

 実は、小さい頃はアレルギー体質で、強い薬を投与していました。中1の時、医者には「薬の影響で40歳ぐらいから体にいろんなことが起きる」と言われていて、その通りになっています。だからこそ、30歳になってPGAツアーに参戦してからは「自分には期限がある」と思い、9年間はかなりストイックな生活を送ってきました。だからこそ、小6で初めてジュニアの大会に出て、2009年の日本シリーズJTカップで優勝するまでの約30年間については、自分で自分を褒めたいと思っています。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)