「ふたつ目のリベンジができてうれしく思います!」 紫紺のジャージーの9番を背負ったキャプテンSH(スクラムハーフ)飯沼蓮(4年)は、寒風吹く東京・秩父宮ラグビー場で真っ直ぐに前を向きながらキッパリと言った。 12月26日、ラグビー大学選手権…

「ふたつ目のリベンジができてうれしく思います!」

 紫紺のジャージーの9番を背負ったキャプテンSH(スクラムハーフ)飯沼蓮(4年)は、寒風吹く東京・秩父宮ラグビー場で真っ直ぐに前を向きながらキッパリと言った。

 12月26日、ラグビー大学選手権の準々決勝が行なわれ、明治大と早稲田大のライバル同士が激突した。3週間前の関東大学ラグビー対抗戦での「早明戦」では、明治大の力及ばず7−17で敗戦。早稲田大が対抗戦2位、明治大が3位となって大学選手権を迎えた。



明治大FW陣が早稲田大を圧倒した

 明治大にとって初戦となる4回戦、明治大は昨季王者の天理大(関西3位)を27−17で下して準々決勝へと駒を進めた。早明の両者が大学選手権の準々決勝で対戦するのは史上初だ。

 対抗戦の終盤、帝京大戦と早明戦で連敗を喫した明治大の一番の課題は、1試合で1トライしか取れなかった決定力だった。特に早明戦のボールポゼッションは66%と高く、敵陣に何度も入ってアタックを仕掛けたが、早稲田大の守備を崩すことができず1トライに終わった。

 敗戦後、伊藤宏明コーチと副キャプテンNo.8(ナンバーエイト)大石康太(4年)はアタックの整備に努めたという。その結果、4回戦では昨季敗れた天理大から4トライを奪って勝利し、「ひとつ目のリベンジ」を果たした。

 そして迎えた、今季2度目の「早明戦」。明治大は今季、春と夏の練習試合でも早稲田大に敗れている。今回は何としてでも勝利し、スローガンでもある「MEIJI PRIDE」を見せなければならなかった。

 この試合、明治大のテーマは「トラスト(信じること)」。「自分、仲間、やってきた練習、それらを最後まで信じる。ゲームの主人公は自分たちだということを全員が信じて戦おうと言った」(飯沼)

 試合直前、大石副将は涙ながらに「絶対勝とう!」と叫んでチームを鼓舞したという。この試合で文句なしのMVPだったPR(プロップ)大賀宗志(3年)は「僕も泣いてしまいました。4回連続(の敗戦)、1年間1度も早稲田に勝てないなんて、4年生には絶対にさせられない思いで試合に臨んだ」と振り返った。

【最後までに「前へ」を貫いた】

 明治大は前半2分、FWとBKが一体となったアタックでFL(フランカー)木戸大士郎(1年)が右隅に先制トライを挙げる。しかし、その後はミスによって1本、さらにディフェンスを崩されて1本と、早稲田大に2本のトライを奪われて8−15でハーフタイムを折り返した。

 しかし後半、風上で戦える明治大に焦りはなかった。「試合のなかでしっかりと(選手間で)話し合って、次にやるべきことが明確になっていた。前半が終わって7点差でしたが、アタックは継続できていましたし、ディフェンスでも粘ることができていた。やれるという感触はありました」(飯沼)

 スキッパーの言葉どおり、明治大はチームの不変的な信条である「前へ」を貫いた。

 後半の出だしはチャンスになりながらもトライが奪えず、嫌な時間が続いた。だが、10分にSO(スタンドオフ)伊藤耕太郎(2年)が相手のギャップを突き、さらにCTB(センター)廣瀬雄也(2年)、FB(フルバック)雲山弘貴(4年)がボールを前へと運びゴールラインに迫り、最後は大賀がねじ込んでトライ。13−15と2点差に迫る。

 残り20分、明治大は終始優勢だったスクラムで反則を得て敵陣に入る。そして24分、モールで誘った反則からスクラムを選択し、4度の組み直しの末にアドバンテージを得たなか、最後は再び大賀がトライ。さらにゴールも決まって20−15と逆転に成功した。

 試合終盤、早稲田大が猛攻を仕掛ける。しかし、粘り強く守った明治大がそのままノーサイドを迎えて「ふたつ目のリベンジ」を達成、明治大フィフティーンは喜びを爆発させた。

 今回の勝因は、スクラムを軸にFW戦にこだわり、そこから2トライを奪取したことだろう。

 大賀は「スクラムやゴール前のアタックに不安はなかった。相手の22メートル内に入ったら、力勝負でちょっとずつ前に出て、必ずスコアする自信があった」と大きな胸を張り、飯沼主将は「FWが『(スクラムで)絶対行ける』と言っていたので、それを信じた!」と破顔した。

【王座奪還まで、あとふたつ】

「4年生を中心に、学生たちが本当に喜んでいる姿を見てよかった。学生たちが対抗戦の悔しい気持ちを体現してくれた。すばらしいライバルである早稲田大に、我々の力を引き出してもらえたかな」

 かつて自身も紫紺のジャージーをまとい、No.8として早明戦を戦った神鳥裕之監督はそう語って目を細め、さらに語気を強めた。

「チームとして落ち込まないように(大学選手権で対戦する)天理大、早稲田大、(逆の山に入った)帝京大と、大学選手権ではリベンジがひとつずつできるというポジティブなメッセージを送りました。一戦一戦、頼もしくなってきた。我々は本当にチャレンジャー。最後まで勝ち上がっていきたい」

「プレーで引っ張ることに決めた」という飯沼主将は、169cmと決して大柄ではないものの、タックルで味方を鼓舞し、足がつっても最後まで走り抜いた。「ミスしても全員が最後には自分たちが勝利すると信じてプレーできた。僕たちはまだまだ成長できる。目標とする優勝まで突っ走りたい」。

 明治大は1月2日、東京・国立競技場で関東リーグ戦の王者・東海大と激突する。FWに強みを持つ相手にどう戦うか。2018年度以来の王座奪還まで、あとふたつだ。