前回の箱根駅伝で明治大は、全日本大学駅伝3位の自信を持って臨んだものの、3区終了時点で17位。序盤に起きた誤算の連鎖から抜け出せず、シード権を逃す11位に終わった。今年、主将としてチームをまとめている鈴木聖人 今回も箱根駅伝を走るべく臨ん…

 前回の箱根駅伝で明治大は、全日本大学駅伝3位の自信を持って臨んだものの、3区終了時点で17位。序盤に起きた誤算の連鎖から抜け出せず、シード権を逃す11位に終わった。



今年、主将としてチームをまとめている鈴木聖人

 今回も箱根駅伝を走るべく臨んだ今年10月の予選会では、強風のなかで4名が1時間2分台で走り、7名が26位以内という強さを見せ、2位の中央大に4分16秒差をつけるトップ通過を果たした。その2週後の全日本大学駅伝では一時は上位争いに加わりながらも、安定せずに7位となっている。

 しかし、山本佑樹駅伝監督はこの走りを前向きにとらえている。

「全日本は予選会のあとだったので、疲労などいろんな部分で、良い、悪いが出てくるだろうなと想像していました。2本揃えられた選手は自信をつけただろうし、悪かった選手は落ち込ませないで『疲労を取って、練習の持って行き方を工夫しよう』と話しました。

 全日本は8区で区間15位だった加藤大誠(3年)も、予選会ではチーム1位でしたし、3区で10位の富田峻平(3年)はちょっとした故障で予選会のメンバーからは外した選手ですが、ともに主要メンバーとしてやってもらわなければいけない存在です」

 前回の箱根のあと、主将になった鈴木聖人(4年)が打ち出したのは、"速さ"ではなく"強さ"を求めることだった。他の選手たちもその意識を共有し、箱根の悔しさを挽回しようという思いで戦ってきた。その思いが浸透したことで、とくに4年生と3年生が充実してきた。

「状態はいいので、みんなが力どおりに走れば前回目標にしていた3位以内も見えてくると思います。ただ、そこを取らなきゃいけないというより、選手にのびのび走ってもらいたいので、まずは5位以内と確実に手が届くだろうところを目標にしています」(山本監督)

【起用が楽しみな花の2区】

 明治大にとってのプラス材料は、下條乃將(3年)が11月の激坂最速王決定戦で7位になり、5区に起用できる目処が立ったことだ。前回は主力の鈴木が区間9位で走っているが、「鈴木も実業団にいくことを考えれば、平地の区間でどのくらい走れるか見てみたい」という山本監督の意向もある。

「下條も5区をやりたいと入学したころから言っていましたが、これまでは力的に16人のエントリーメンバーには入れなかった。今年はしっかり練習もこなせるようになり、1万mも28分47秒86まで伸ばしてメンバー入りしたので、少し余裕が出てきました」(山本監督)

 ここ2年間の明治大の2区は、加藤が1年と2年で走っていて、順位は区間10位と17位だった。山本監督も絶対的なエースの存在がないなかで、つなぎの区間という位置づけだったというが、今回は期待をしている。

「その意味では、今回はやっと強い選手を花の2区に持って行くことができるかなというところですね。鈴木もトラックでは学生のなかでも比較的上位で走っているので、その辺の走りはしてほしい。彼は苦しいところで我慢できるタイプなので、2区の理想とするイメージにも合っています。駒澤大の田澤廉選手や東京国際大のイェゴン・ヴィンセント選手まではいかないですが、1時間7分前後の走りはできると思っています」

 そこにつなぐ1区だが、前回は区間16位と出遅れた児玉真輝(2年)が、悔しさを持って今年は力をつけてきている。全日本でも2区で区間2位と好走し、候補に挙げられる。

 また、その全日本で1区を首位と16秒差で走った手嶋杏丞(4年)もチーム内では鈴木とともに主力で信頼感のある選手。そのふたりを1区と3区で考えている。

「児玉の場合は気持ちも強い選手で、来年はエースになってもらいたい存在でもあるので、1区ではなくて3区や4区を走り、次は2区をやるというイメージでもいいかなと思います。最近伸びてきている小澤大輝(3年)もいるので、彼を4区に置ければふたりで(児玉と手嶋)1区と3区はあるなと考えています。

 また加藤は、単独走ができてロードが強いこともあってこれまで2区で使っていましたが、復路でもいい仕事をするんじゃないかと思っています。2区よりプレッシャーの少ないところで結果をドンと出して、『来年はもう1回2区で』となってくれればいいかなとも思います」

【復路のキーパーソンは?】

 復路も複数名の候補がいて悩むところだが、なかでもキーになる選手は富田ではないかと山本監督は言う。

「彼は本当に能力が高く、練習ではチームのトップをいく選手。前回は9区で区間10位でしたが、20kmまでは区間賞獲得ペースで走っていて、ラスト3kmで崩れてしまいました。まだわかりやすい結果は出ていないですが、彼が本当にブレークすれば、というのはある。意外と彼がチームの結果を左右させるのではないかと思っているので、ここでもうひと皮剥けて欲しいと思っています」

 さらにどこを走らせても安心できる櫛田佳希(3年)や、前回、4年生でブレークして8区で区間賞を獲得した大保海士のように、4年になった今年に力をつけた橋本大輝もいる。橋本は、予選会でチーム6位、全日本で7区区間4位と安定の走りを続けている。それに加藤を加えれば復路も埋まってしまうが、まだほかにも杉 彩文海(2年)や新谷絋ノ介(1年)など、この1年間は練習がしっかりできていて、使ってみたい選手も多いといううれしい状態だ。

「チームを見れば、ここ数年に比べて厚みが出てきたなと思います。今回は去年からガラッと変わったというより、各々の成長を感じますし、4年生もしっかりして安心感もあるので、先を見据えた選手起用はできない面はあります。

 前回は、僕も『全日本3位で箱根は優勝するぞ』と言ったけど、本当に優勝する気があったかと言えば、先を見据えて尻を叩いて勢いつかせようと思った部分もあるし、区間配置もそういう思いがあったと思います。その結果が11番で『甘くないぞ』というのも確認したから、今回はそこから一歩進んだ、今を見たオーダーが組めそうな感じはしています」

 往路は、できればトップと1分差くらいでは終えたいと言うが、他校も戦力が充実している状態で大接戦になることを予想する山本監督。

「1分くらいの差のなかに10校くらいいることもあるかもしれないので、地に足をつけて冷静に判断したいです」

 持っている力のすべてを発揮することで、どこまで上にいけるのか楽しみだ。