前回の箱根駅伝の往路で東洋大は、各選手が大崩れすることなくつなぎ、5区の区間記録保持者の宮下隼人(現・4年)の堅実な走りで2位になった。復路は6区と7区が想定外の走りで4位まで落としたものの、4年で学生駅伝初出場だった8区の野口英希と9区…
前回の箱根駅伝の往路で東洋大は、各選手が大崩れすることなくつなぎ、5区の区間記録保持者の宮下隼人(現・4年)の堅実な走りで2位になった。復路は6区と7区が想定外の走りで4位まで落としたものの、4年で学生駅伝初出場だった8区の野口英希と9区小田太賀が東洋大らしい渋い走りで総合3位と結果を残した。
過去2回、5区を走ってきた4年の宮下隼人は最後の箱根も5区を任されるのか
しかし、新チームで挑んだ今年の春シーズンは、主力の故障もあり、関東インカレ1部の長距離種目で31年ぶりに入賞者なしという屈辱を味わった。それでも10月の出雲駅伝では、4区で九嶋恵舜(2年)が区間2位、5区のスーパールーキー石田洸介(1年)が区間賞獲得の走りをして順位を上げ、総合3位と堅実な走りを見せた。
だが、11月の全日本大学駅伝は1区で区間12位と出遅れると、4区と5区で盛り返しながらも、終盤に区間13位が2区間続いてしまい、チーム最低順位タイの10位という結果に終わった。好調とは言いがたいチグハグ感が漂っていた。
そこで生まれた危機感が、チームの意識を変化させたと酒井俊幸監督は言う。
「出雲や全日本は主力に頼らず、新しい選手の台頭を目標にやってきましたが、全日本が10位で14年連続のシード権を落とす結果になってしまいました。そこから、これまでの箱根への取り組みをもう一度思い出し、危機感を持ってやっています。
全日本前は新しい選手の台頭を意識していたのでスピード練習に重きを置きましたが、それを改めてスタミナ練習や、タスキを持ってもブレない心づくりに練習段階から取り組んでいて、全日本前に比べると新しいチームになったような雰囲気になっています」
【往路優勝で総合3位以上】
チームのキーパーソンは宮下と、前回の箱根は2区で日本人1年歴代2位の1時間7分15秒で走った松山和希(2年)。宮下が8区、松山が7区を走った全日本ではふたりとも6~7割の状態だったが、12月中旬をすぎてだいぶ調子が戻ってきているという。
特に主将の宮下は「今シーズンの前半は練習をあまり積めなかったので、最後の箱根で有終の美を飾るためには練習するしかないと思いました」と、午前5時から始まる朝練の前の4時から練習を開始。その姿を見て朝早くから動き出す選手も増えてきたという。
そんな東洋大の強みは、往路で2位になった前回も走った選手が4人残っていることだ。その利点を生かし、思い切った布陣で往路優勝を取りにいき、総合3位以上を目標にする。酒井監督は、今のチーム状況をこう話す。
「前回は起用する10人がすぐに決まったのですが、今年のチームの特徴は誰を起用するか、いい意味で迷っている状態。残り2週間で状態を見ながら、上がってくる選手を起用したいです」
往路のオーダーを考えれば、前回1区で1位と24秒差ながら、3位集団にはひと桁の秒差で食らいついた児玉悠輔(3年)が、今回も1区だろう。出雲は1区7位ながら1位に8秒差と好走している。2区は状態の戻り具合の心配はあるが、松山しかいない。
そこでうまく流れができれば、3区は、故障が癒えた今秋に出雲5区と全日本4区で区間賞を獲得している石田のスピードを生かす走りが期待できる。
さらに、5区の宮下に気持ちよく走ってもらうためにも4区は重要になる。前回3区で区間8位の前田義弘(3年)が、「今年の夏合宿は3年間で最も多く距離を踏んだので、それで得たスタミナを武器にして走りたい」と自信を見せているだけに適任だ。
そして5区の宮下については、酒井監督も「今のまま行けば、前回の区間3位よりは確実に走れる」と期待する。本人も「全日本のあとからは山登り対策も始めていて、コンディションも上がってきている。最低でも2年前に出した区間記録(1時間10分25秒)を更新して往路優勝をしたい」と意気込む。それを実現できれば、他校に対しても大きなアドバンテージを得られる。
【新戦力も育ってきた】
一方復路は、今回は4年生が宮下と蝦夷森章太の2名だけで、東洋大の特色である叩き上げられてきたいぶし銀的な走りで勝負という感じにはならない。だが、2年前に7区を区間6位で走っている蝦夷森については、「今年も故障は多かったですが、最後の箱根に向けた気持ちが取り組みにも現れていて、ぎりぎりのところだけど面白い」と酒井監督が評価する。
前回6区で区間14位だった九嶋も今年は5000mで13分台に入り、1万mも自己記録を更新している。出雲では4区で区間2位、全日本は3区で区間8位と成長。酒井監督も「確実に走って欲しい選手になってきた」と期待を寄せる。
また、出雲で最終6区を走って区間7位だった柏優吾(3年)も、非公認のハーフでは1時間3分30秒台で走っており長い距離に強い選手だ。全日本5区で区間4位の梅崎蓮(1年)や1区で区間12位の佐藤真優(2年)のほか、11月の世田谷ハーフで1時間3分33秒の自己新を出した村上太一(2年)、初ハーフながら1時間3分46秒を出した奥山輝(2年)などの新戦力も頭角を現してきている。
往路がうまく流れて上位に食い込めば、安定感抜群を誇る東洋大らしい結果を出せる可能性も高くなるだろう。