宮司愛海連載:『Manami Memo』第28回フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。今回は、フジテレビのフィギュアスケート中…



宮司愛海連載:『Manami Memo』第28回

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。今回は、フジテレビのフィギュアスケート中継を担当している内田嶺衣奈アナとともに、中継時の秘話について話してもらいました(今週22日から開幕する「全日本フィギュアスケート選手権2021」でも中継リポーター、インタビュアーも担当)。宮司アナにとって内田アナは2年先輩という間柄。共感し合う部分の多い対談になりました。(※内容は取材時での情報です)

【フィギュアスケート中継歴】

宮司 今日はよろしくお願いします。早速ですが、内田さんはフィギュアスケート関係のお仕事をどれぐらい担当されていますか?

内田 今年で7シーズン目かな。2014年のソチオリンピックの次の年から正式加入したと思うから。

宮司 すごい! 担当初期と7シーズン目の今とを比べて、自分の成長度合いを感じることはありますか?

内田 フィギュア班に入った頃は、現場の緊張感に自分が飲み込まれそうになっていて、ずっとガクガクブルブルみたいな感じだったな。まずその空気に7年をかけてようやく慣れてきたっていうのはあるかも。

宮司 私がフィギュア中継を最初に担当したのが、2018-2019シーズンだと思います。平昌オリンピックには、当時担当していた『めざましテレビ』の取材キャスターとして現地に行きましたが、その時はフィギュアのことは、フィギュア班についたあとほど、くわしくはなかったですね。私が本格的にフィギュア班についたのが18年シーズンということになりますから、内田さんと一緒に中継につくようになって3年ですかね。

内田 そうだね。クリスマスも3年連続で一緒。

宮司 全日本(フィギュアスケート選手権)がいつもその時期ですからね。

【フィギュアスケートの魅力とは?】

宮司 フィギュアは、ほかのスポーツにはない特性があって、奥深い競技だと思いませんか?

内田 すごく思う。競技であるけれども芸術でもあるというのが大きな特徴で。もちろん点数は出るし順位はつくけれど、選手たちは自分自身と常に戦っているところもそうだし。選手同士がみんなリスペクトし合って、その選手のいい演技を願い合いながら切磋琢磨している空気がすごくある競技だなと感じてる。
 当たり前だけど、みんな毎年プログラムも変わればチャレンジしている課題も変わるし、こちらが見ていてもわかるぐらい「今年はここをブラッシュアップしてきた」という変化も感じられる。シーズンを追いかけていくのが楽しくなる競技だよね。

宮司 確かに。それにシーズンの最初と終盤だと滑り込みが違うから、終盤にかけてどんどんよくなったりすることもありますよね。

内田 振りつけも変えたりするしね。

宮司 そういう違いというか、変化というか、成長の部分は、取材者として見ていてものすごくうれしい部分もあります。

内田 ファンの皆さんもたぶんそういう目線で見ているのかなと思う。「今シーズンのプログラム、これなんだ」という最初の披露の時のワクワクから、より選手自身のプログラムになっていく過程を追いかけて。かなり気持ちを入れて見ているのを、私たちも取材をしながらすごく感じます。

【生中継インタビューの難しさ】


宮司

 私たちが中継で担当しているのがリポーターとインタビュアーということになるのですが、インタビューに関しては特に、何回やっても難しくて慣れなくて、やっぱり他の競技とは違っている部分を感じています。内田さんは、インタビューの難しさや面白さはどのようなところにあると思っていますか? 

内田 インタビューは、最初に担当した時から今までずっと難しいと思い続けていて。勝手はわかってくるし、経験値も増えていくけれど、正解が見つからないものだったりもするし。あと、私たちが選手にお話を聞くのは演技が終わった直後、点数が出るキスアンドクライからインタビューエリアに来るまでの1分あるかないかぐらいの時間。演技と結果を見てから何を聞こうかというのを考えてまとめる時間がそこしかなくて。

宮司 点数のことも踏まえて聞かなきゃいけないですからね。

内田 そう。キスアンドクライから移動してくる間に、脳みそをフル回転させていつも準備している感じ。マイクや機材の準備や、立ち位置の確認もしなくてはいけないので、演技後はバタバタだね。

宮司 だから、実は演技はほとんど生では見られないんですよね。スケートリンク裏のモニターで見ていて。会場内から歓声は聞こえてくるのですが、基本的に生ではあまり見られないですよね。

内田 生中継の時は時間の管理にも追われているからね。

宮司 選手の返答が何秒で返ってくるかもわからないですしね。そこを管理しながら質問の数を考えて、イヤモニ(※イヤーモニター。スタッフからの連絡が聞こえる)に入ってくる時間のカウントに合わせてインタビューを締めていくという作業で。それが一番しびれますよね。

内田 「今、(時間)延長が決まったからちょっと延ばして」という指示も時にはくるので、締めかけたことを言ったけど、もう一問質問するとか。

宮司 追加で聞く感じですよね。

【何をポイントにインタビューするのか】

内田 やっぱりその選手のことを下地として知っていないと、どんな質問をしてどの質問を減らすか増やすかという判断もできないので、私たちリポーターやインタビュアーは、見えないところでの自分自身の準備みたいなものがすごく問われる競技だなと思う。宮司は、何を一番ポイントにおいてインタビューしているの?

宮司 その選手がそのシーズンに大事にしていることだと思っています。たとえば、あるジャンプに初めて取り組むシーズンだったら、そのことについてより深く聞こうかなとか。演技を見ている段階からそこに注目していますね。その選手がどういうことを課題にして、どういうことを目標にしているのかというのを、一番中心に考えています。

内田 大切なことだね。あと私が担当年数を重ねたからこそ思うのは、選手を見ていた時にいつもと違う行動が出た時の質問かな。いつもだったらこういうウォームアップをしているのに、今日は全然違う動きをしているなっていう時は、何か心境の変化だったり、試合に臨むなかで違いがあるわけで。それを聞いてみると「実はこういうことがあって、こういう思いが強まっていた」ということが出てきたりもするし。そのためにはとにかくアンテナを張り観察。選手をすごく観察しています。ウォームアップや6分間練習の時の様子とか、リンクインする時の表情とか。

宮司 朝の公式練習もそうですよね。ちょっと調子が悪そうだったのに立て直してきたとか、そういうストーリーが1日のなかにあったりしますしね。自分なりの観察力と、選手が大事にしていることとを融合させている感じです。

内田 それをギュッとしたもののなかから、選び取って実際に質問をして。でも「こっちの質問もやっぱり聞きたかったな」って思うこともあるよね。

宮司 すごくありますね。

内田 中継全体の尺との兼ね合いもあり「短く」という指示が入ってくることもあって。

宮司 そうそう。もっとゆっくり聞けたなら......という時はもちろんあります。

【印象に残っているインタビュー】


宮司

 内田さんにとって、印象に残っているインタビューはありますか? 自分のベストを尽くせてうれしい気持ちで来る選手もいれば、悔しくて泣きながら来る選手もいるわけじゃないですか。

内田 もちろんいろいろな印象に残っている場面があるけど、近年では、2019年、髙橋大輔選手のシングル競技最後のインタビューかな。全日本での演技後のインタビュー。私がフィギュア班についてから、(2014年に一度引退した)高橋さんが中継ナビゲーターとして、中継を作り上げる側として加わって。当初、選手として見ていた方が一緒に仕事をする仲間になって、さらにそこから競技復帰をするという、関係性の変化がすごくあったんです。
 それで、シングル競技最後の全日本の演技後のインタビューをさせてもらって、やっぱり、こちらも胸がいっぱいで。髙橋選手も泣きそうになりながら答えてくれて、「すいません、ちょっといいですか」みたいな感じで涙をこらえる時間もあって。そんな大事な節目のインタビューを経験できたというのは、すごくインタビュアー冥利にも尽きるなと思ったし、髙橋選手が泣きながらでも語ろうとしてくれている想いを、ちゃんと届けないといけないなという気持ちもあったので、すごく印象に残っています。

宮司 2年前ですね。

内田 すばらしい演技のあとに聞くインタビューというのももちろんすごく幸せだけれど、インタビューエリアで選手が涙していた時なども、どうしても印象に残っちゃう。

宮司 そうですよね。でも、それがすごく難しいというか。先ほど内田さんがおっしゃっていたように、フィギュアは自分との闘いの部分がものすごく大きいから、選手が悔しい演技をしたあとに何を聞けるかって考えて悩みますよね。そんな話をこの連載で先輩の西岡(孝洋)さんに聞いたことがあるんです(その記事はこちら>>)。その時に、意外にも選手の方々はくわしいことを聞いてほしいらしいよと言われて。「あそこのジャンプどうでしたか?」のほうが、漠然と「今の思いはどうですか?」と聞かれるよりも振り返りやすいらしいよ、ということを聞いて、すごく学んだ記憶があります。

内田 フィギュアを担当していて驚くのが、どの選手も演技直後で息も上がっているぐらいの興奮状況なのに、「あそこのジャンプ、あれに変えましたね」と聞くと「あれはここを滑っている時からこのジャンプに変えようとあそこで計算していた」とか「1個あそこでミスしてるから、あそこでリカバリーしようと思ったからこうしました」みたいなのが、サラサラと出てきて。冷静な分析と「こう考えたからこう変えました」というのが、演技直後に丁寧に説明ができるぐらい分析しているというのも、たぶんフィギュアの特徴なのかなと思う。どのコンビネーションが入らなかったから、どこにコンビネーションを足してというところも独特だよね。

宮司 いろんなことを考えながらやってるわけですもんね。フリーは特に。

内田 何パターンも考えて日頃から練習しているだろうし。だから、それにすぐ気づけるかというのも、私たちが注意深く見ているかどうかにかかわってきているね。

後編(全日本フィギュアスケート選手権の見どころは?)へ続く>>>

PROFILE
内田嶺衣奈(うちだ・れいな)
1月6日生まれ。2013年フジテレビ入社。東京都出身。血液型:A型。フジテレビアナウンサー。現在はフィギュアスケート中継のほか、ニュース・情報番組『Live News イット!』や報道番組『Live News α』を担当
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宮司愛海(みやじ・まなみ)
7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。福岡県出身。血液型:0型。スポーツ・ニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。
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