2021年の中央競馬もいよいよクライマックス。GI有馬記念(中山・芝2500m)が12月26日に行なわれる。 グランプリ4連覇を狙うクロノジェネシス(牝5歳)に、GI天皇賞・秋(10月31日/東京・芝2000m)を制した皐月賞馬のエフフォ…

 2021年の中央競馬もいよいよクライマックス。GI有馬記念(中山・芝2500m)が12月26日に行なわれる。

 グランプリ4連覇を狙うクロノジェネシス(牝5歳)に、GI天皇賞・秋(10月31日/東京・芝2000m)を制した皐月賞馬のエフフォーリア(牡3歳)をはじめ、GI菊花賞(10月24日/阪神・芝3000m)を圧勝したタイトルホルダー(牡3歳)、GIエリザベス女王杯(11月14日/阪神・芝2200m)で大金星を挙げたアカイイト(牝4歳)など、今年も"年末の祭典"にふさわしい豪華メンバーが顔をそろえた。

 まさしく現役の一線級が集う有馬記念。そんななかにあっても、1番人気の信頼度は高く、過去10年の成績を見ても6勝、2着1回、3着1回と安定した成績を残している。

 ただ一方で、人気薄の激走も頻繁に見られ、3連単ではオイシイ配当しばしば生まれている。昨年も1番人気のクロノジェネシスが勝利しながら、11番人気のサラキアが2着に突っ込んできて5万円強の配当をつけた。

 そして、今年も伏兵の台頭が「十分に考えられますよ」というのは、日刊スポーツの松田直樹記者だ。しかも、ある傾向がそうしたムードに一段と拍車をかけるのではないかという。

「実は、今開催の中山は外が伸びません。いや、というよりも、内が"まだ伸びる"といった表現のほうが的確でしょう。

 ちょうど先日、昨年と同じく日刊スポーツの紙面企画で中山競馬場の馬場造園課を取材し、有馬記念の舞台となる芝2500mのコースをスタートからゴールまで歩かせてもらったんですが、今年は昨年以上に内、外問わず、芝が踏み荒らされていない印象を受けました。

 それについての詳細は本紙紙面を見ていただければと思いますが、先週までの5回中山の芝レースを見ても、その影響が結果に表れています。芝のレース全30鞍のパトロール映像を見ると、よほど突き抜けた実力を持った馬でない限り、勝ち馬は皆、内ラチから3、4頭目までに進路をとって伸びてきているのがわかりました。

 展開面なども考慮しての唯一の例外は、先週の牝馬限定のGIIIターコイズSで道中最後方から大外一気を決めたミスニューヨークくらい。基本的には枠は問わず、内目を運んだ先行力のある馬たちが好走する傾向にあります」

 そこで、松田記者は激走候補の名前を2頭挙げた。1頭はこの秋、世界最高峰のレースであるGI凱旋門賞(10月3日/フランス・芝2400m)に挑んだディープボンド(牡4歳)である。

「前走の凱旋門賞ではよもやの最下位14着大敗でしたが、レース当日のパリロンシャン競馬場の芝は、タフな馬場への適応力が高い欧州馬でさえ苦しむ道悪でした。敗因の大部分を占めるのはそこ。あのレースの結果は、さすがに度外視してもいいでしょう。

 有馬記念に向けて参考になるのは、凱旋門賞より前のレース。快勝した2走前のGIIフォワ賞(9月12日/フランス・芝2400m)です。凱旋門賞と同じ舞台の一戦でしたが、終(しま)い3ハロンを33秒85でまとめて見事な逃げきりを決めました。

 その上がり時計が示すように欧州の馬場としては走りやすい馬場ではありましたが、日本より力の要る欧州の芝を速い上がりでまとめた実績は、スタミナが求められる中山、かつ先行力が生きる今の馬場にぴったり。買いの要素は存分にあると言えるのではないでしょうか」



有馬記念での一発が期待されるディープボンド

 日本でも、3歳時にはGI日本ダービー(東京・芝2400m)で5着、GI菊花賞(京都・芝3000m)でも4着と健闘し、4歳となった今春のGI天皇賞・春(5月2日/阪神・芝3200m)では2着と善戦。その地力は侮れない。

「3歳時は同じノースヒルズ軍団の同期、無敗の三冠馬コントレイルには及びませんでしたが、この春は好位で運んだGII阪神大賞典(3月21日/阪神・芝3000m)で1着、天皇賞・春でも2着とその素質が完全に開花。

 3000m級の"国内マラソンレース"で連続連対を決めたことを考えれば、2度の急坂越えがあって、数字以上にスタミナが求められる中山・芝2500mにも難なく対応できるはず。外々を運ばされる展開にさえならなければ、一発あってもおかしくないですよ」

 松田記者が推す2頭目は、今年の3歳三冠レースすべてで掲示板入り(5着以内)を果たしたステラヴェローチェ(牡3歳)だ。

「もう1頭は、先行馬とは逆の脚質の馬。有馬記念と言えば、追い込み馬ですから。昨年も4角12番手からはサラキアが2着、一昨年も同16番手からワールドプレミアが3着に入っています。

 となれば、8戦中5戦でメンバー最速の上がりをマークしているステラヴェローチェが穴馬候補として浮上します。GI皐月賞(4月18日/中山・芝2000m)では、インを突いての3着。パンサラッサ(牡4歳)、タイトルホルダー(牡3歳)ら、多彩な先行馬たちがつくるペース次第ではゴール前での強襲があっても不思議ではありません。

 ちなみに、先述のサラキアとワールドプレミアは古馬牝馬と3歳牡馬で属性は異なりますが、斤量55kgという共通点があります。昨年の1、2着馬、一昨年の1~3着馬、そして2018年の1着馬と、斤量55kg馬が好走している事実は見逃せません」

 現役トップクラスが集うドリームレース。実力馬でさえ人気薄になることを考えれば、伏兵が台頭するのは必然のこと。はたして今年、好配当という夢を運んでくるのはどの馬か。ここに挙げた2頭となる可能性は大いにある。