国際レーシングサーキットである鈴鹿サーキットを舞台に11月13日、2年ぶりとなるスズカ8時間エンデューロが開催された。2000年にスタートし、20年の歴史を誇る人気イベントだ。今年、日本最高峰のサイクルロードレースリーグであるJプロツアーを…

国際レーシングサーキットである鈴鹿サーキットを舞台に11月13日、2年ぶりとなるスズカ8時間エンデューロが開催された。2000年にスタートし、20年の歴史を誇る人気イベントだ。今年、日本最高峰のサイクルロードレースリーグであるJプロツアーを個人、団体ともに制覇したロードレースチーム、マトリックスパワータグのメインスポンサーである株式会社マトリックスが主催することから、プロ選手たちが共にレースを走り、参加者をサポートしてくれることも大会の魅力のひとつとなっている。



鈴鹿サーキットを思う存分走れる!20年の歴史を誇るスズカ8時間エンデューロ

昨年は、開催できる可能性を模索しながらも、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大会中止の決断を下した。今年は、開催を熱望する声に応え、万全の感染対策を施した上で、開催を決定したのだ。



大会の開催を待ちわびていた参加者が笑顔で会場に集まってくる

タイトルにあるように、例年は8時間という制限時間の中、走り切った距離で競う耐久レースであるが、今年は時間を6時間に短縮し、4時間、3時間と3種類の種目を設定。募集定員も例年の3分の1程度にまで大幅に減らし、ソロカテゴリーの枠を増やし、入場時間も繰り上げるなどして、密を作らない工夫が施された。スケジュールも、大抽選会など、人が集まるシーンを割愛し、シンプルなものに改編されている。参加者、スタッフ双方に検温と健康確認書の提出が義務付けられ、スタッフもワクチン接種かウイルス検査の陰性証明を求めるなど、徹底した感染対策を施しての開催となった。



全入場者に検温の義務が課せられた



各所に感染防止のためのルール遵守のお願いが掲出された

例年と比べ、レース時間が2時間短くなったため、レースは朝10時にスタートとなる。朝が苦手な参加者には、むしろありがたい変更だったかもしれない。



マトリックスパワータグのベテラン選手らによる「ロードレース講習会」。ビギナーの方でもこれを受ければ安心して走れると毎回好評だ

コロナ禍でスポーツ自転車人口が急増した状況を反映し、ビギナー参加者が増えたこともあり、例年以上にロードレース講習会には力が入ったようだ。この講習会はマトリックスパワータグのベテラン選手が講師を務め、安全で効率的な走り方を説明し、コース試走も共に行ってくれる実践的なスクールだ。参加料は無料。大会では多数の参加者とともに集団走行をする。さらに「レース」ということで、がむしゃらにペダルを回してしまうケースもあるだろう。ビギナーに限らず、日常的に一人で走っている方などは、周囲への配慮に不慣れなことが多く「どう走るべきか」を教えてくれる講習会は、レースだけでなく、公道で自転車に乗る際にも自分を守る術になりそうだ。



スタート最前列にはゲストライダーが並ぶ。一番奥には今季の全日本チャンピオン草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)の姿も

スタート前に参加者たちが整列する。最前列には、マトリックスパワータグの選手たちと、今年の全日本選手権を制した草場啓吾選手(愛三工業レーシングチーム)が並び、まさに日本のトップ選手たちが勢揃いする形となった。選手たちは各種目に分散し、それぞれの参加者とともに走る。参加者にとっては、プロ選手のフォームやバイクさばき、ラインの選び方などを間近に見ることができる貴重な機会になるだろう。



スタート直後は大集団。サーキットを走る光景には迫力がある



ゲストライダーが先頭に立ち、ペースをコントロール。安全なレース運営のためにサポートを行う

10時に6時間の部がスタート。ここから2分間隔で、4時間の部、3時間の部がスタートする。



シートに座り、ペダルを踏み込む「リカンベント」に乗る参加者。今後自転車のあり方も、多様化していくのだろう



友人たちと参戦を楽しむ参加者たち

6時間の部は、ロードレーサーに乗る本格派の参加者たちが多い傾向にあるが、特に3時間の部は、ミニベロなど車種も多様で、お子さんと共に、ファミリーで参戦する方も多い。シートにもたれるように座り、脚で前に踏み出すことで進むリカンベントで参戦する参加者もおり、自転車が多様化していることをうかがわせた。



今年は、パフォーマンス部門の表彰はないものの、コスチュームを着けて走る参加者も登場



遊び心たっぷりの大会Tシャツ

この大会はカテゴリーとしては「レース」であるが、リザルトを狙わず、楽しく走るだけでももちろん構わない。例年は優れた仮装参加者を表彰するパフォーマンス部門(今年は中止)などもあり、より「楽しむ」という印象が濃かったのだが、シンプルな構成となった今年も、楽しみ上手な参加者が多かったように思う。



チームで来場し、参戦を楽しむ参加者たち



楽しむ準備万端で来場した参加者も!

各部門の上位者はレースとして競い合うため、集団を作り高速で周回を重ねていく。自分のペースで走りたい参加者は左に寄り、高速の集団が右側から抜いていく形になる。プロの選手だけでなく、バイク審判も共に走り、速度帯も経験値も異なる参加者たちが安全に走れるよう、参加者を誘導してサポートする。このサポートがあることで、大会はぐっと安全になり、さまざまな層の参加者が同時に安心して走れるようになるのだ。



爽快に駆け抜ける参加者たち



チームカテゴリーでは、メンバーのうち一人ずつが交代で走る。交代時は計測チップの入ったアンクルベルトを出走する参加者に速やかに着け替える

会場には、感染症対策を施した上で、バザール会場も設定された。サイクルアパレル、アクセサリー、洗車用品やオイルなどのケミカル、サプリメントなど、多様なブースが並んだ。自転車イベントの開催が減り、「ブース販売に用に用意していたサンプル品が2年分溜まってしまった」と笑うブースもあり、多数のアイテムが特価で販売されていたようだ。まだ市場では知られていない新登場のブランドもブースを開いており、興味津々の様子でブースを回る来場者でバザールは賑わった。



魅力的なブースが並んだバザールも大盛況。多くの来場者がブースめぐりを楽しんだ



スタートオイルを塗ってくれるワンコインサービスも!自分で選ぶことが難しいアロマオイルなどは特に、スタッフにアドバイスをもらえる機会が貴重だ

パーツ、ケミカル、サプリメントなどは特に、ブランドの担当者と話し、自分に合ったアイテムを探し出せるのも、ブースめぐりの大きな魅力。中には、ブースでセカンドキャリアの相談会を開催したブランドも!いずれにしても、ブランドの担当者と接点が持てる貴重な機会であることに間違いない。



名物だった大抽選会は密を作るため見送られ、代わりに抽選の当選番号が掲出される形式となった



自分たちの順位はスマートフォン等を使い、リアルタイムで確認できる

サーキット上では、3時間、4時間と時間の経過とともに順位が決定していく。主には、ソロ、チーム、男女混合というカテゴリーごとに表彰を行うが、3時間のみ、ファミリーと女子の部が設定されていた。



ファミリーの部の表彰式。家族で力を合わせてがんばった!

各カテゴリー、特に男子ソロとチームの総合優勝争いは熾烈で、抜け出したり、スプリント勝負になったりと、レースとしても見応えのある戦いが繰り広げられた。今年の表彰式は密を避けるため、関係者のみで開催されたが、2年ぶりの開催となる大会の表彰台に乗ることができた参加者は、皆とても満足げな表情を浮かべていた。



晴天の下、気持ちよくサーキットを駆け抜ける参加者たち

この大会では、参加者を大幅に絞り込んでいたため、サーキット上は非常に走りやすく、参加者たちは鈴鹿サーキットの環境を大いに満喫できたようだ。制限時間が来るまで、参加者たちは、それぞれのペースで走行を楽しんでいた。



カゴ付き自転車でもOK!キッズの参加者も増えていた



今季のJプロツアーで個人総合優勝を果たしたホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)はソロで参戦した奥さまの手を取ってフィニッシュ

この日のレースで、もっとも速かったのは、6時間の総合優勝をしたチーム。1周5,807mのコースを6時間0分16秒で43周、249.7kmを走った。平均時速は、なんと時速41.58km! 一般参加者がこのスピードで、アップダウンもあるサーキットを走り抜けたと考えると、驚きだ。



熾烈な戦いを経て優勝したチームは達成感あふれる表情で表彰台に上がる。賞金も嬉しい!



6時間の部の表彰を終えて。抱えきれないほどの副賞をもらい、笑顔がこぼれる参加者たち

最難関となった6時間の部の表彰で、第22回鈴鹿8時間エンデューロは幕を下ろした。今年はイレギュラーの開催となったが、参加者の満足度は高かったようだ。



参加者のサポートを終えたゲストライダー、バイク審判たち

来年も、スズカ8時間エンデューロは開催予定。感染防止策などが、どのような形になるかはわからないが、来年も幅広い層が、それぞれの趣向に合わせて楽しめる大会になることだろう。大会は、ママチャリでも、キッズバイクでも参加OK(突出して危険な一本足スタンドは外すなどの規定あり)! 参加を検討してみては?

画像:Kenji TAKADA、編集部
協力:鈴鹿8時間エンデューロ