在米カメラマン田邉安啓氏の現地発コラム、Qシリーズ参戦の渋野に注目 来季シード権をかけた女子ゴルフの米女子ツアー(LPGA)最終予選会(Qシリーズ)の第1週が、現地時間2日から5日にかけて米アラバマ州で行われ、渋野日向子(サントリー)は通算…

在米カメラマン田邉安啓氏の現地発コラム、Qシリーズ参戦の渋野に注目

 来季シード権をかけた女子ゴルフの米女子ツアー(LPGA)最終予選会(Qシリーズ)の第1週が、現地時間2日から5日にかけて米アラバマ州で行われ、渋野日向子(サントリー)は通算6アンダーの24位タイ、古江彩佳(富士通)は11アンダーの7位で突破した。9日から行われる第2週を終えて45位以内に入れば、来季のツアーメンバーの資格を得られる。夢の舞台を目指す渋野の姿を、4日間にわたって追った在米カメラマンの田邉安啓氏が「THE ANSWER」に寄稿。第1週のコース上で見せた表情に、米国で成功する姿が見えたという。

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 2019年にメジャーのAIG全英女子オープンで優勝した渋野日向子と、今シーズンの日本女子ツアー(JLPGA)で6勝した古江彩佳が、12月2日から開催されたLPGAのQシリーズに参戦した。Qシリーズとは、シード権を持たない選手が翌年のシード権獲得のために挑戦する予選会で、2週間合計8ラウンドを戦う(最初の4ラウンド後に上位70位までが翌週の4ラウンドに進出)。12月5日に第4ラウンドを終えた渋野は24位タイ、出場選手の中で世界ランクトップ(14位/大会開幕時)の古江は単独7位で、翌週の決勝4ラウンドに進出した。

 近年は下部ツアーで1年間を戦い、上位の成績を収めた選手のほうが、1年に1回だけの予選会(QT)で上位成績を挙げてシード権を得た選手よりも、上位ツアーに昇格した後の成功率が高いという結果が注目されている。そのため、米男子ツアーは2013年を最後にQTを廃止しており、女子ツアーもその流れを汲んで、1週間5ラウンドで行われていたQTをQシリーズと名称を変え、2018年から2週間8ラウンドに拡大した形で行われるようになった。米女子ツアーにはシメトラツアーという下部ツアーがあり、年間の上位10名が翌年のLPGAのシード権を得る。

 2年前にメジャー大会を制した渋野が今回の予選会に出場しなければならなかったのは、優勝後に米女子ツアーへのメンバー登録を見送ったためだ。当時、渋野は米ツアーへの参戦意思がなかったが、登録期限後に翻意。すぐにメンバー登録をしていれば、労せずシード権が得られていたはずだった。

 今回改めて判断の是非を問われることが容易に予想できたからか、事前の囲み取材では渋野自らが先んじて、「(全英で)優勝してそのままメンバーシップ登録しなくて良かった。経験が活かせる」と口にした。ともすれば、負け惜しみに聞こえなくもない言葉であり、しかも後の成功率が決して高くないとされているQシリーズからの挑戦だ。だが、筆者はシード権獲得後の渋野の米ツアーでの成功に対し、極めて高い期待を持っている。

過去の名手と共通する明るい性格

 理由は大きく2つある。

 1つは直接の下部ツアーではないものの、渋野は今年も日本ツアーで戦い続けながら、米ツアーにも積極的に参戦した。今年4月に渡米した際には、そのまま帰国せずに6月末まで米国の試合に出続けた(メジャー優勝による出場権やスポンサー推薦により出場)。米ツアー出場という目標を明確に持ったスケジュールであり、下部ツアーに参戦することに近い意味があったと考えられる。

 2つ目の理由は、彼女の明るい性格である。ファンサービスにも長けている一方で、6月のKPMG全米女子プロゴルフ選手権では、3日目のパー3で「10」を叩き五輪出場への夢が潰えた際、ラウンド後の取材では大粒の涙を流しながらもTVカメラの前で気丈に心情を語るなど、筋金入りの芯の強さがある。

 明るい性格や芯の強さは、過去には宮里藍や小林浩美、青木功、丸山茂樹といった米ツアーで成功を収めた日本人選手に共通する。これは今回出場している古江も同様である。米ツアーで成功するには、ゴルフの技術だけでなく選手の性格も大きな要因になり得る。

 次の4ラウンドの最終日は12月12日。渋野、古江の残りの戦いぶりにますます注目だ。(田邉 安啓 / Yasuhiro Tanabe)