アイスダンスでの北京五輪出場も射程圏内、結成2季目カップルの現在地 フィギュアスケートのアイスダンスで今季2シーズン目に挑んでいる村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)が、2大会連続で自己ベストを更新する会心の演技を見せた。11月20日までポ…

アイスダンスでの北京五輪出場も射程圏内、結成2季目カップルの現在地

 フィギュアスケートのアイスダンスで今季2シーズン目に挑んでいる村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)が、2大会連続で自己ベストを更新する会心の演技を見せた。11月20日までポーランドで行われたチャレンジャーシリーズのワルシャワ杯では、総合2位となって表彰台に上る躍進だった。11月12、13日に東京で開催され、初の国際スケート連盟(ISU)公認大会だったグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯で出した日本選手の歴代最高得点を、リズムダンス(RD)、フリーダンス(FD)、合計のいずれも塗り替えた。

 RDでは冒頭の技でレベルアップを図り、5つの要素すべてのGOE(出来栄え点)の得点が増えて5.13点更新させ、FDでは2つの要素でレベルを上げて基礎点アップを図り、10個の要素のうち9つのGOE得点を稼いで5.53点更新した。そして合計は10.66点の大幅更新で、190点台に乗せる今季世界13位の190.16点をマークするなど、勢いが止まらない。

 男子シングルで2010年バンクーバー五輪銅メダルの高橋は、「7年ぶりの国際大会に出場でき、表彰台に立てたことは本当にうれしい思いです。得点を更新できたことは大きな励みとまた新しい経験ができました」と自信をつける一方で、アイスダンスですでに五輪経験を積んでいる村元も「NHK杯から得点を更新できたことはとても嬉しいです。これに満足することなく、一歩一歩進んでいきたいと思います」と手応えを口にした。

 2019年秋に北京五輪代表を目指して結成された村元、高橋組が、「かな・だい」カップルになって2季目を迎える五輪シーズンの今季、好スタートを切ったことは間違いない。採点競技の中でもアイスダンスは特に順位の変動がそれほど激しくないなかで、いかにインパクトのある演技でジャッジや観客を魅了するかが勝負のポイントだった。

 それだけに、今季本格デビューとなった村元、高橋組の初の国際大会となったNHK杯での演技は、スケート関係者を含め多くのファンに衝撃を与えたと言っても過言ではないだろう。

 特筆すべきは、新しく作ったRDの「ソーラン節&琴」で、そのユニークな選曲と振り付けの妙を存分に盛り込んだ卓越した「和」テイストのプログラムだ。ポップ感とオリジナリティにあふれ、村元と高橋の長所を引き出したことで、まだ課題を抱える短所を目立たせない構成になっていたのではないだろうか。

高橋の成長を支える「世界一のスケーティング技術」

 2000年1月からフロリダでアイスダンスの名コーチであるマリーナ・ズエワコーチから手ほどきを受けた村元、高橋組は、個性を引き出しながらインパクトのある振り付けを考え抜いた振付師陣をはじめ、リフト指導の専門コーチ、肉体改造のトレーナーコーチなど「チーム・ズエワ」のハイレベルな指導の下で、わずか1年で五輪代表を狙えるアイスダンサーに生まれ変わった。

 もちろん、この期間に2人がどれだけの努力を積み重ねてきたかは想像に難くない。

 特に、これまで男子シングルのスケーターだった高橋は、パートナーを持ち上げるリフトや2人で行うスピン、2人が一定の距離感を保ちながらのスケーティングなどアイスダンス特有の技術についてほとんど初心者として取り組んだわけだが、この挑戦の成果を短期間で見事に発揮し、改めてその才能と努力を見せつけた。シングルスケーター時代から「世界一のスケーティング技術」の持ち主と言われたが、もともとアイスダンスに現役時代から興味を持ち、オフシーズンにはフランスの強豪アイスダンスチームの門を叩いて、スケーティング修行に出向いたこともあっただけに、その素地はシングルスケーター時代から培われていたと言ってもいいかもしれない。

 ワルシャワ杯後に「全日本選手権に向けて最後の詰めを行い、一日一日を大切に悔いの残らぬよう頑張っていきたいと思います」と次戦に向けて意気込みを語った高橋。その視線の先には、昨季までは見えていなかった北京五輪代表の道が見え始めただろう。アイスダンス未経験者の高橋のポテンシャルを見出して、村元とともに昨年初めから指導するズエワコーチは「私は哉中と大輔のこの結果を誇りに思います。彼らはチームを結成してたった2年です。まだまだ伸びしろがあり、フロリダに戻り更なる成長の為、指導を行っていきたいと思います。全日本選手権では更に良い演技ができることと思っています」と、急成長を遂げている2人の可能性を信じていた。

 日本のアイスダンスには、北京五輪代表切符が1枚しかない。その1枠を争う五輪代表最終選考会の全日本選手権(12月22日~26日)に向け、国際大会2戦目の好成績はパワーと自信の源泉になるはずで、目標達成へエンジン全開で突き進むだけだ。カップル結成時に期待した予想をはるかに超える成長ぶりを見せるだけに、多彩な表現力を持つどんなアイスダンサーになるのか、今後も楽しみは尽きない。(辛 仁夏 / Synn Yinha)