GPシリーズ・ロステレコム杯で3位になった友野一希 11月26、27両日に行なわれたグランプリ(GP)シリーズ・ロステレコム杯(ロシア大会)の男子シングルで、友野一希(セントラルスポーツ)は3位となった。2018年の同大会3位に続くGPシリ…



GPシリーズ・ロステレコム杯で3位になった友野一希

 11月26、27両日に行なわれたグランプリ(GP)シリーズ・ロステレコム杯(ロシア大会)の男子シングルで、友野一希(セントラルスポーツ)は3位となった。2018年の同大会3位に続くGPシリーズ2度目の表彰台だが、以前とは違う、先の見える表彰台だった。

 2018年世界選手権、ケガで欠場した羽生結弦(ANA)と、補欠一番手の無良崇人(洋菓子のヒロタ)の出場辞退で代役出場した友野は、SP11位発進ながらフリー3位の得点で5位になり、2位の宇野昌磨とともに翌年の世界選手権の日本3枠獲得に貢献して注目された。

 ただその後は表現面の向上を目指し、ジャンプが不安定になって低迷した。それでも、コツコツと積み上げてきた成果が昨年から表れ始めていた。出場辞退の宇野の代役出場だった2020年四大陸選手権で、7位ながら自己ベストの251.05点を出した。

 しかし、今季のGPシリーズ・イタリア杯は、鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎)が優勝してファイナル進出に大きく前進したのに対し、友野はSP6位と出遅れたうえにフリーは演技後半にミスを連発して245.11点で6位。自身、納得のいかない結果になっていた。

 そして今大会、その厚い殻を打ち破るチャンスを、自分の力で作り出した。

 羽生がケガで欠場し、他の有力な選手としてイタリア杯で2位のミハイル・コリヤダ(ロシア)がいた。友野はSP第1組6番滑走。最初の4回転トーループ+3回転トーループを2.99加点のジャンプにすると、次の4回転サルコウと最後のトリプルアクセルも確実に決め、スピンとステップはすべてレベル4。丁寧な滑りのノーミスの演技で、それまでの自己最高を7.59点上回る95.81点で1位発進をしたのだ。

「朝の公式練習からいい練習ができなくて不安のほうが大きかったのですが、落ち着いて演技できました。自分のマックスの滑りができれば95点くらいは出せるのではないかと思っていました。ジャンプについては、トーループ以外は少し詰まってしまって自分のなかでは『いいジャンプではない』と感じましたが、それでも95点が出たのは収穫。これからいいプログラムを作っていけば、100点近くも望めるのではないか。最後は、たくさんしてきた練習の成果が出たのだと思います」

 友野はそう振り返った。2位に0.44点差でスケートカナダ6位のモリシ・クヴィテラシビリ(ジョージア)がつけたが、優勝候補のコリヤダは4回転2本で失敗して84.84点で4位。友野に優勝のチャンスが巡ってきた。

 最終滑走者として臨んだフリー。先に滑ったコリヤダが合計を264.64点としてトップに立つと、友野の直前に演技したクヴィテラシビリが上回って266.33点に。友野は、自己最高を7.69点上回る170.52点を獲得すれば優勝できる計算だった。SPの演技を思えば、それは十分可能に思えた。

 だが、滑りに少し硬さがあった。最初の4回転トーループ+3回転トーループはSPと同じようにきれいに決めたが、次の4回転サルコウは4分の1の回転不足になった両足着氷。次の単発の4回転トーループは3.12点の加点で流れを取り戻したかと思えたが、続く3回転ループは着氷で手をついてしまった。

 ステップシークエンスはスピードのある滑り。後半最初のトリプルアクセルからの3連続ジャンプは最後の3回転サルコウが少しつんのめる着氷になってわずかに減点。そして次のトリプルアクセルは転倒のミスが出たが、終盤の2種類のスピンとコレオシークエンスはスピード感の豊かな友野らしい滑りをして締めた。

 演技直後、友野は悔しそうな表情をした。リンクから上がった直後には、コーチに「これが僕の実力」と苦笑いをしながら漏らすのが聞こえた。

 結果は168.38点で合計は自己最高の264.19点。2位のコリヤダにも0.45点及ばない3位となった。

「3位はうれしいですが、3年前のこの大会の3位とは違って悔しい気持ちもあるのは、自分の成長だと思います。ショートでリードして、『1位になれるかもしれない』というなかでも落ち着いて滑ることができましたが、緊張もしていて細かいミスが出ました。ただ、前回とは違って実力でもぎ取った表彰台という感じなので、素直に自分をほめてあげたいと思います」

 こう話す友野はSPのあと、「フリーは誰よりも練習を積んできた自信があるので思いきってやるだけ」と話していた。今大会は崩れてしまったが、SPがしっかり形になってきただけに、次は4回転3本を入れたフリーを完成させるという課題は明確になってきた。

「今回のメダル獲得で次のレベルに踏み出すことができた感じがするので......。本当に僕は一歩一歩なので、次の全日本選手権へ向けて一つひとつ成長していけたらいいと思います」

 今大会の得点はフランス杯で2位になった佐藤駿に0.80点及ばず、現時点では日本選手5番手の得点だ。トップへはもう一歩だが、「踊れるスケーター」という評価の高い友野。見守ってきた人たちにとっては「やっと」とも言える。存在感を高めてきた。