「心理カウンセラー×アスリート」の対談で「心のマネジメント」についてひもとく連載の第2回目。今回も臨床心理士・公認心理師としてこれまでも様々な悩みを抱える人をカウンセリングしてきた心理カウンセラーの塚越友子氏と埼玉パナソニック…

 「心理カウンセラー×アスリート」の対談で「心のマネジメント」についてひもとく連載の第2回目。今回も臨床心理士・公認心理師としてこれまでも様々な悩みを抱える人をカウンセリングしてきた心理カウンセラーの塚越友子氏と埼玉パナソニックワイルドナイツに所属する藤田慶和選手でお届けする。

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自分でコントロールできないことは仕方ない。コントロールできる部分を準備する


塚越 前回は結果を出すためには先を見すぎても良くないというお話がありました。ほかに結果を残すために心がけたことはどういったことがありますか?

藤田 どちらかというと僕はポジティブに色々なことを捉えようと思っています。例えば、もう自分ではコントロールできないようなことであれば仕方ないし、それは置いておいて、自分の中でコントロールできることをまず準備していこうというようにしていました。なので、ネガティブなことが起きてもあまり気にしないようにしてましたね。自分自身、あまりネガティブになってしまうとよくないということは経験でわかっていたので。どんなネガティブなことが起きてもとにかくポジティブなことに変換してやっていこうというのは自分の心に決めているというのはあります。

塚越 それはいつ頃から意識されているんですか?

藤田 自分の生きてきたルーツというか、家族や親戚もすごくポジティブな人が多くて、とにかく「楽しくいこうよ」というところから始まったのかなと思っています。ラグビーを楽しくやろうと思い始めたのは東福岡の高校の時ですかね。その時も、スパルタでめちゃくちゃ頑張って高校3年間終えるよりも、楽しくやって終えようと。

塚越 楽しくとは具体的にどのように取り組む方法を指すのでしょうか?

藤田 「楽しむ」というのも、チャラチャラ楽しむ、ではなくて、一生懸命やって楽しむ。自分のやりたいこととか、やるべきことを追求して努力し、結果を得ることの楽しさということを高校の時に教えてもらいました。そういうこともあって、ネガティブな気持ちよりもポジティブな気持ちで取り組むことの大事さを気づかせてもらいましたし、僕の性格的にもそういう考えが合っているのかなという風に感じますね。

塚越 自分の目標に向けて、日々やることをコツコツ努力し、何か壁に当たっても、それを越えることすら楽しんでいく姿勢ですね。

藤田 その通りです。

塚越 プレーヤーとしては「楽しむ」ことがキーワードになっているんですね。また藤田さんは「自分で考えて決断し、行動していく」というのも重視していると聞きます。そのあたりはプレースタイルにどう影響を与えていますか?

藤田 現在はプレーヤー個々で考えさせる高校も増えてきましたが、僕らの時代はコーチや監督が鼓舞して動かすという感じが多かったと思うんです。その中で、僕が通っていた東福岡高校では、谷崎監督の指導方法もあり自主性を重んじて、自分たちで考えさせるようなラグビーとか、練習をしていました。逆に、自分で『こうしよう』と考えていかないと、レギュラーにもなれなかったんですよね。なので、自然とそういう環境で身に付いたという部分があるのかなと思います。

塚越 高校時代の経験が後に生きてきたわけですね。

藤田 そういう経験から、エディさん(元日本代表監督)の厳しいトレーニングも、『どうやったらレギュラーをとってW杯にいけるのか』、『どうやったら成長できるのか』、『どうやったらこの名将の教えを吸収してグラウンドで発揮できるのか』ということを自分で常に考えながらやっていました。だからこそキツくても乗り越えられたのかなという感じはありますね。

ベテランでも弱音を吐く、マインドセット法は人それぞれでいい

塚越 多くの人のカウンセリングを担当してきてキツイことがあったときに、挫折から絶望にいってしまう方もいます。そういったときの心の動きはいかがでしょうか?

藤田 ラグビーをやっている上ではあまり絶望とか「もうやりたくない」とか「もうダメだ」とか、思ったことはなくて。どちらかというと「悔しい」とか「もう一回チャレンジしたい」とかいったチャレンジ精神の方が強いのかなと思います。

塚越 一流アスリートの方はおおむねそのような思考なのでしょうか、もしくは「パフォーマンスが出しきれなくてダメだ」というネガティブ思考の人も中にはいるのでしょうか?

藤田 スポーツ選手にも色々な選手がいて、すごくネガティブな思考の選手もいます。たとえばラグビーのベテラン選手でも、グラウンド上ではすごいパフォーマンスを発揮するのに、部屋では「もうやりたくない」とか弱音を吐いている選手も全然います。それは各選手のスタイルなので、別にポジティブが良いとかネガティブが悪いとかいうわけではないと思います。僕自身がポジティブなマインドセットの方が上手く回るので、そうしているだけで、逆に愚痴を吐き出したり、弱さを見せる方がいい選手もいます。それは人それぞれなので、色々なスタイルがあっていいんじゃないのかなとは思いますね。
逆に自分に合わない方法なのに、それが良いと言われてやり続けても、多分長続きしないし、それは自分のスタイルではないと思うので。どんなに人から見たら、良くないマインドセット法でも、それが1番自分が輝けるスタイルであるならば、それが1番良いんじゃないかなと僕は思いますね。

塚越 一流のアスリートの方というのは皆さん自分の特性を活かしてパフォーマンスが発揮できるように臨んでいるということなんですね。

藤田 自分が1番グラウンドで輝けるプロセスを踏むには、自分がどういうメンタルでやっていったらいいのかを、プロ選手であればこれまで数々の修羅場を乗り越え、プレッシャーと戦ってきたことで得た経験があるのかなと。その色々なマインドセットの中で『こういうスタイルでいこう』とたどりつくのではないかなと思います。

塚越 様々な苦難から生まれてくるマインドセット法ですね。

藤田 今プロを目指す子供たちも、たとえお手本があったとして、結果を残すためには「これが絶対」ということはないので、自分がどのように心を整えていけば、パフォーマンスが出せるのかをを試しつつ、上に登って行って欲しいなというのはありますね。
 (第3回では藤田氏がマインドセットにおいて劇的に変わったとするある経験を取り上げます)

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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塚越友子(つかこし・ともこ)

過去に自身で仕事中にうつ病を発症した経緯から、働く人のカウンセリングに注目。2008年に東京中央カウンセリングを開業。社会学修士号(社会心理学)教育学修士号(臨床心理学)。公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー。

藤田慶和(ふじた・よしかず)

ラグビースクールの監督をしていた父の勧めで7歳から競技生活をスタート。名門・東福岡高校時代に頭角を現すと全国高校ラグビーで主力として3連覇を果たす。2015年ラグビーW杯ではチーム最年少出場、今夏の東京五輪では7人制ラグビー日本代表として戦った。埼玉パナソニックワイルドナイツ所属。