関東大学ラグビー対抗戦の優勝を占うカードは、紫紺vs.深紅----。11月20日、東京・秩父宮ラグビー場で5戦全勝同士の両チームが激突した。 結果は、深紅の帝京大が4年ぶりに明治大から白星(14−7)を挙げて6戦全勝とし、20…

 関東大学ラグビー対抗戦の優勝を占うカードは、紫紺vs.深紅----。11月20日、東京・秩父宮ラグビー場で5戦全勝同士の両チームが激突した。

 結果は、深紅の帝京大が4年ぶりに明治大から白星(14−7)を挙げて6戦全勝とし、2018年度以来の対抗戦優勝に向けて大きく前進。一方、3連覇を狙う明治大は地力で優勝する道が閉ざされた。

 明治大は前半、スクラムやディフェンスでプレッシャーを受けて苦しんだ。しかし後半は、春から鍛えてきたフィットネスとクイックテンポを発揮。この1年間やってきたラグビーを貫いた。しかしあと一歩、帝京大の「赤い壁」を崩すことはできなかった。



明治大は後半に反撃を仕掛けるも帝京大の壁は高かった

「選手はよくやってくれた。ただ、今季は終わったわけではない。この悔しい思いを次につなげて、この敗戦が糧になったと思えるような試合にしたい」

 試合後、6月から新たに明治大の指揮官に就任した神鳥裕之監督は、先を見据えてこう語った。

 この試合、明治大のテーマは「インパクト」だった。しかし開始早々、逆にスクラムで帝京大からインパクトを受けたことは試合の流れ的に大きかった。

 前半4分、お互いのFWがプライドを持って臨んだファーストスクラム。明治大FWは2回の組み直しのあと、PR(プロップ)細木康太郎主将(4年)が牽引する帝京大FWに押し込まれ、たまらずスクラムを故意に崩してしまう。さらに15分に、再び明治大はスクラムで反則をしてしまい、そのアドバンテージ中にキックパスでトライを献上して先制された。

 しかし、明治大のSH(スクラムハーフ)飯沼蓮主将(4年)はスクラムで劣勢になったことをそこまで悲観してなかったという。「スクラムでプレッシャーを受けるという想定もしていた。最悪の状況を準備して、と話していました」。

 その後、副将No.8(ナンバーエイト)大石康太(4年)が「出すことを最優先した」と言うように、スクラムからすぐにボールを出すダイレクトフッキングを使ったことで、大きな傷にはならなかった。

 それよりも紫紺のスキッパーが悔いたのは、前半の戦い方だった。

「(自分たちから)キックを蹴って、ほとんどがディフェンスになってしまった。前半からもっと攻めるべきだったなと......。自分たちのアタックを信じて、自陣からでも明治のラグビーをするべきだった」(飯沼主将)

 11月3日の慶應義塾大戦でハイパントキックを多用する戦略がうまくいったため、この試合も前半はハイパントを蹴り、相手にプレッシャーをかけて好機を作り出そうとした。しかし28分、キック後に帝京大WTB(ウィング)白國亮大(4年)にカウンターを許してしまい、最後はフォローしたPR照内寿明(4年)にトライを献上して0−14。痛い追加点を与えてしまった。

 ただしハーフタイム中、明治大はキック戦略の修正を試みる。ボールを保持して戦うと決めたことで、後半は飯沼主将を中心にすばらしいアタックを見せるようになった。

 すると、帝京大も後手に回る流れになり、ハイタックルなどの反則を繰り返す。後半4分、明治大はラインアウトを起点にWTB石田吉平(3年)がゴールラインへと迫り、最後はPR大賀宗志(3年)がねじ込んで7−14と追い上げた。

 残り35分、明治大には十分に逆転の時間があった。飯沼主将も「相手に隙ができたら『メイジタイム』で走り勝つ。前半どんな状況になっても(後半)チャンスは転がっている」と、逆転する自信があった。

 昨年度の大学選手権・準決勝、初優勝した天理大に15−41で大敗したことが、今季の明治大のスタートだった。伝統的に武器とするFWのセットプレー、フィジカルの強化はもちろんのこと、試合終盤まで走り勝つために、春から走りに走ってきた。

 8月上旬に福島・Jビレッジで1週間の合宿を行ない、そこでの走行距離は昨年度の1.5倍にあたる35kmほどだったという。「走り勝つ」ことを今季の大きなテーマのひとつに掲げ、前半最後の10分、後半最後の20分をチーム内で「メイジタイム」と呼び、フィットネスのスイッチを一段上げる合言葉となっていた。

 後半20分以降、その「メイジタイム」を迎えて、紫紺のジャージーは果敢にアタックを続けた。PG(ペナルティゴール)も狙わず攻め続けた。だが、深紅のジャージーもディフェンスで粘りを見せて、最後までゴールラインを割らせなかった。

 結局、試合はそのまま7−14でノーサイド。飯沼主将は「リードされることも想定していたが、後半、流れに乗った時にトライを取りきれなかった」と唇を噛んだ。

 今季の対抗戦で初黒星を喫してしまった明治大だが、12月5日には早稲田大と伝統の「早明戦」がある。そしてそのあとには、大学選手権も控えている。下を向いている時間はない。勝ち進んで行けば、帝京大と再戦する可能性もあるだろう。

 明治大は今季、4年生で話し合ってスローガンを「MEIJI PRIDE」と定めた。飯沼主将の代は1年時=大学選手権優勝、2年時=準優勝、昨年度=ベスト4と結果を下げている。そこで「もう1回、強い明治を作り上げて、優勝して明治のプライドを取り戻す」(飯沼主将)という意味を込めた。

 3年ぶりの大学王者奪還へ----。この敗戦を胸に刻み、紫紺の軍団は再び「前へ」と走り出す。