来季のF1世界選手権のドライバー陣容が固まった。セカンドドライバーが唯一未定だったアルファロメオが16日、中国人ドライバーの周冠宇(22)を起用すると正式発表した。中国選手がF1チームのレギュラードライバーとなるのは初めてで、メルセデスか…

 来季のF1世界選手権のドライバー陣容が固まった。セカンドドライバーが唯一未定だったアルファロメオが16日、中国人ドライバーの周冠宇(22)を起用すると正式発表した。中国選手がF1チームのレギュラードライバーとなるのは初めてで、メルセデスから移籍するバルテリ・ボッタス(フィンランド)とコンビを組む。

アルファロメオのシートを射止めた周冠宇(アルファロメオ提供)

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 アルファロメオでは現役最年長のキミ・ライコネン(フィンランド)が今季限りでF1を引退することを表明しており、最後のシートを懸けて周冠宇と現レギュラーのアントニオ・ジョビナッツィ(イタリア)で争われていた。

 仮にジョビナッツィの残留が決まれば、ルーキードライバーがゼロとなるところだった。ちなみに開幕時点でルーキードライバーがゼロだったのは2009年が最後。ただし、その年はシーズン途中で小林可夢偉とハイメ・アルグエルスアリ(スペイン)がF1デビューを飾り、通年ではルーキーはゼロではなかった。

 周冠宇は「小さいころからモータースポーツの世界のできるだけ高いところに駆け登ることを夢見ていたが、今、それがかなった。過去に才能あふれる若手を輩出してきた伝統のチームで走れることは光栄」とコメントした。

 上海出身で8歳でレーシングカートを始めた。12歳で英国に渡り、現地でカートレースを転戦。その後はF4、F3などを経て2019年からF1直下シリーズのF2選手権に参戦中だ。今季は残り2大会でランキング2位につけるなど成績も十分。昨季にルノーのテストドライバーとなり、今季はチーム変更に伴い、アルピーヌの一員として同じ任務を続けている。

 アジアでF1ドライバーを輩出した国は日本以外に、タイ、マレーシア、インド、インドネシア。中国は6カ国目となる。最初にF1中国GPが開催されたのは2004年。18年かかってF1ドライバーが誕生したことになる。

サンパウロGPを走行するアルファロメオのマシン(アルファロメオ提供)


 この間も世界で活躍する中国選手はいた。最もF1に近かったドライバーが董荷斌(タン・ホーピン、38)だ。オランダ生まれの選手で中国のライセンスでレースをしていた。2007、08、10年にはF2の前身シリーズのGP2に参戦し、決勝最高位2位と健闘。米インディカーにもスポット参戦したが、F1シートは得られなかった。

 中国本土生まれでは馬青驊(マ・チンファ、33)もその名が知られている。14年に世界ツーリングカー選手権で優勝し、電動車のフォーミュラEにも参戦。F1のHRTやケータハムでテストドライバーも務めるも、こちらもレギュラードライバーにはなれなかった。

 アルファロメオはスイスに本拠を置くザウバーが運営しているが、ザウバーでF1を振り出した選手は大成するといわれる。

 2001年にデビューしたライコネンはF1チャンピオンとなり、02年にデビューしたフェリペ・マッサ(ブラジル)も08年にフェラーリでシリーズ2位を獲得。その時は王者となったルイス・ハミルトン(英国)にわずか1点差で敗れた。現レッドブル・ホンダで今季初優勝したセルジオ・ペレス(メキシコ)も11年に初参戦した時の所属先がザウバーだった。

 周冠宇は実力も折り紙付きだが、中国のスポンサーもバックについており、3000万ドル相当(約34億円)の資金力を備えているという。各チームに対して予算制限ルールが適用されるものの、中堅チームのアルファロメオにとってはこの持参金が車体開発でプラスに作用するはずだ。

 来季は新型コロナウイルスの影響で母国の中国GPが開催カレンダーから外れてしまったが、周冠宇効果で中国でのF1人気は大幅に高まる見通し。来年初頭には北京冬季五輪も組まれており、感染状況が好転すれば、2023年はおろか、来季のカレンダーに緊急追加されることもあり得るとみている。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

◆2022年F1ラインアップ
▼メルセデス
44 ルイス・ハミルトン
63 ジョージ・ラッセル
▼レッドブル
33 マックス・フェルスタッペン
11 セルジオ・ペレス
▼フェラーリ
16 シャルル・ルクレール
55 カルロス・サインツ
▼マクラーレン
3 ダニエル・リカルド
4 ランド・ノリス
▼アルピーヌ
14 フェルナンド・アロンソ
31 エステバン・オコン
▼アルファタウリ
22 角田裕毅
10 ピエール・ガスリー
▼アストンマーティン
18 ランス・ストロール
5 セバスチャン・ベッテル
▼ウィリアムズ
6 ニコラス・ラティフィ
23 アレクサンダー・アルボン
▼アルファロメオ
77 バルテリ・ボッタス
– 周冠宇
▼ハース
9 ニキータ・マゼピン
47 ミック・シューマッハー

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)



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