ダンスの魅力を多方面から発信し続けるFISHBOYFISHBOY インタビュー③「日本人全員を踊らせる」という野望に向かってまい進する、世界一のダンサーFISHBOY。第一生命 D.LEAGUEに参戦するプロダンスチーム「CyberAgen…



ダンスの魅力を多方面から発信し続けるFISHBOY

FISHBOY インタビュー③

「日本人全員を踊らせる」という野望に向かってまい進する、世界一のダンサーFISHBOY。第一生命 D.LEAGUEに参戦するプロダンスチーム「CyberAgent Legit」のディクレクターとして活動するかたわら、メディア出演やYouTubeチャンネルでの動画配信など、自ら立てた野望のために、多方面からダンスの魅力について発信中だ。

 そんな彼の活動の一つが、実兄・オリエンタルラジオの中田敦彦らとともに結成したダンス&ボーカルグループ「RADIO FISH」だ。2016年にリリースした『パーフェクトヒューマン』が空前の大ヒットとなり、その年の紅白歌合戦にも出場した。兄と組んだRADIO FISHは、FISHBOYにとってどんな意義があったのだろうか。

「まず第一は親孝行なんですけど、僕にとってはものすごく濃い研修期間でしたね。オリエンタルラジオのあの2人(中田敦彦、藤森慎吾)の考え方や、行動を近くで見れたことで、得たものはめちゃめちゃ大きかったです。

 兄はあるプロジェクトがあった場合、失敗をたくさん重ねながらも物凄いスピードで成功に持っていくタイプなんです。だから兄からは、何がなんでも目標を達成する方法を勉強させていただきました。

 藤森さんは、まず人の悪口を言わない。それから話し方とかコミュニケーションの仕方、その駆け引きがすごくうまいんです。僕よりも、コミュニケーションのスキルがスリーランクくらい上なんですよ。それを見ることができてめちゃめちゃ勉強になりましたね」

 FISHBOYの言葉の端々から、オリエンタルラジオへの尊敬の念がひしひしと感じられる。とくに大きな影響を受けたのは兄からだ。FISHBOYが見聞きした兄の言動が、いまでも彼の背中を後押ししている。

「RADIO FISHで一緒に活動していた時に感動したことがあるんです。ライブを行なうことになって、会場を埋めるためにチケットを手売りしたんです。やっぱり泥臭く動くことで熱って伝わりますから、もちろん兄もプライドを捨ててやっていました。

 そんななかで地方ツアーもあって、広島のライブチケットを売らなくてはいけなくなったんです。みんないろんなことをひと通りやって、もうやることがないかなと思っていた時に、兄は『まだやれることがある』と言うんですよ。

 それから兄は品川駅の周辺で売り始めたんです。新幹線で各地方に帰る人がいるから、道行く人に声をかけるんです。『どちらに帰るんですか』と。『広島です』と答えたら、『今度広島でライブがあるんですけど、見に来ませんか』と言ってチケットを売るんですよ。

 だからRADIO FISHは、本気で考えて模索して実行してやっと掴めた成果だなって思います。兄のYouTube登録418万人も、絶対にその精神があったからだと思っています。その考え方は、CyberAgent Legitの運営の中にも息づいている。僕ができることであれば、なんでもやります。僕は『まだもっとやれることはある』っていっぱい思っています」

 ダンスの魅力を多くの人に知ってもらい、「日本人全員を踊らせる」ために、日々やれることを模索し始めてから、今年で12年になる。メディアに出演し、RADIO FISHでパフォーマンスを行ない、YouTubeで配信し、Dリーグチームのディレクターとしてダンサーを指導するなど、積極的に活動を続けてきた。いまでは少しずつ世の中の変化を感じるようになったという。

「僕の力は微々たるものなんですが、社会自体がそういうムーブメントになってきたという実感があります。EXILEさんが広めてくれていることも大きいですし、学校教育にダンスが取り入れられたこともあります。あとはTikTokなどのSNSで、フォロワーを増やすのに、ダンスが有効なツールだと若者に認識されたのもあって、みんながこぞってダンスをするようになった。そういう時代が来たので、自然と若い子たちはダンスをするようになったんですね」

 若者がダンスを行なう文化は少しずつ根づいてきた。では大人はどうだろうか。FISHBOYは、その数は若者に比べて圧倒的に少ないと感じている。どうすれば大人を踊らせることができるのだろうか。そんななかで野望達成の足掛かりとなりそうなダンスを見つけた。それが日本全国で昔から踊られているあれだ。

「ある時ふとお祭りをやっているところを通りかかったら、盆踊りをやっていたんですよ。そこには老若男女いました。僕は大人を踊らせたいと常々思っていたのですが、なかなか踊ってくれないんですね。だから盆踊りを見た時、すごいなって思ったんです。盆踊りだったら、恥ずかしくなく踊れるんです。その盆踊りの正体を研究してやろうと思ったんです」

 FISHBOYはまず「恥ずかしさ」のメカニズムについて学び始めた。そして実際にその熱狂を体感するために、盆踊りの渦の中に自ら飛び込んだ。

「旅をしました。これまで行けたのは、日本三大盆踊りのうちの二つ、郡上踊り、阿波踊りで、そのほかの祭りにも行きました。郡上踊りでは、まず下駄 を作ったんですが、そこからもう楽しいんです。かっぽかっぽ音を出しながら歩くと、もう別世界なんですよ。音が鳴るだけでエンターテイメントになるし、人によっては浴衣、着物も着ているし、その雰囲気づくりからして掴みはOKでした。

 郡上踊りのすごく面白いところは、音が8拍でループするとしたら、踊りの振り付けが11拍でループしたりするんです。そうすると、徐々にズレていくんですね。そのズレによって、凝り固まった頭がほぐされていくんですよ。フワッとしてきて、瞑想状態に入っていくような感覚になるんです。

 阿波踊りの振り付けは、ワンツーワンツーって2個で終わりなんですね。だから誰でもすぐに参加できるんです。阿波踊りはやぐらを回る盆踊りとは違って、パレードなので、町の風景が変わるんですね。2個しかない振り付けを同じ場所でやっていたら、めっちゃ飽きるじゃないですか。だから景色で味替えする。その仕組みが面白かったです。

 それから阿波踊りは『やっとさーやっとやっとー』とひたすら言うんです。決まりきったものをずっとやっていると、何も考えなくても腕が上がってくるし、足も出てくるんですよ。自動で体が動いて、街の景色が変わっていく。それが続くとマインドフルネスな感じになります。とてもよかったですね」

 大人もシチュエーションがそろえば踊ることがあるし、そこには恥ずかしさもない。FISHBOYは盆踊りで確かな手ごたえを掴むとともに、活動の幅をさらに広げていった。

「まず、『踊る大人集まれ』と言ってコミュニティーを作ったんですね。それで2021年1月に感染対策を万全にしたうえで、大人が作るダンスイベント『STAY GOLD』をやったんです。大人たちが恥ずかしがることもなく、ワッーと楽しんでいるステージを作りました。

 そして2回目の『STAY GOLD』は、踊っている大人って実在しているんですよ、というのを映像で見せます。YouTubeでずっとアーカイブしておくことで、踊りたいなと思った大人が見た時に、『こんな人たちがいるんだ』とホッとして、始めやすくします。そうなってくると、コミュニティーをもっと広げたり、回数を増やしていくことになると思います。それはこの2回目が終わった後のフェーズ3でやっていく予定ですね」

 大人が踊るイベント『STAY GOLD』の第2弾は12月3日に配信する予定だ。このように少しずつダンスの輪を広げているFISHBOYに、最後に改めてダンスの魅力について聞いてみた。

「ダンスには、メリットがたくさんあるんです。まずは仲間が見つかります。あと、いまは若者のほうがダンスをやっていて、大人はそれほどやっていませんので、ダンスをやれば大人が若者と話せる共通言語になります。

 それから難易度が設定できるので、初心者でも楽しめるし、ベテランでも楽しめる。あとは他のスポーツと違って、毎年のように数えきれないほどの曲がリリースされるので、飽きがこないんですよ。それに健康にもいいですよね」

 仲間が増えて、若者と話せて、飽きがこなくて、健康にいい――。いまは現実味を感じない大人がいたとしても、若者世代が少しずつ大人となり、日本全員がダンサー化していく世界に変わっていく可能性は大いにある。そのとき世の中はどう変わっているのだろうか。いまから楽しみでならない。

(インタビュー①)

(インタビュー②)

【Profile】
FISHBOY
1985年12月19日生まれ、山口県 出身。世界をでも活躍しているPOPPINGダンサー。10代から頭角を現し、black D.O.G.S.として各世代で全国的なダンスコンテストで優勝。23歳の時に出場した、世界大会JUSTE DEBOUTで優勝した経歴を持つ。2014年に実兄(オリエンタルラジオ中田敦彦)とともに、6人のダンス&ボーカルグループRADIO FISHを結成。『パーフェクトヒューマン』が大ヒットし、紅白歌合戦への出演を果たした。現在はCyberAgent Legitのディレクターを務める。

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