いよいよ強いシブコが戻ってきた。 樋口久子 三菱電機レディース(埼玉・武蔵丘GC)で、渋野日向子が今季2勝目(ツアー通算6勝目)を飾った。有観客での優勝となると、実に2年ぶりだ。ペ・ソンウとの競り合いを制して今季ツアー2勝目を飾った渋野日…

 いよいよ強いシブコが戻ってきた。

 樋口久子 三菱電機レディース(埼玉・武蔵丘GC)で、渋野日向子が今季2勝目(ツアー通算6勝目)を飾った。有観客での優勝となると、実に2年ぶりだ。



ペ・ソンウとの競り合いを制して今季ツアー2勝目を飾った渋野日向子

「最終組にはかなりたくさんの方がついて見てくださっていた。私がパターを外せば、『あー』って(落胆の)タメ息も聞こえるし、バーディーが入れば『ナイスバーディー!』という(歓喜の)声も聞くことができる。そういう反応を耳にしながらゴルフができるのは幸せなこと。やっぱり楽しいし、何かしら見えない力が働くんだなと思います」

 そして突如、今季米ツアー参戦時に思い描いたという、理想のゴルファー像についても口にした。

「私は"面白いゴルファー"になりたい。今日は見ている側からすると、ハラハラ、ドキドキするようなゴルフで、面白い勝ち方ができたと思う。暖かく見守っていただけるとうれしいです」

 確かに、ペ・ソンウと並んで通算7アンダーの首位タイで迎えた最終日は、渋野が抜け出せば、ペ・ソンウが食らいつき、そして逆転するというスリリングな展開となった。渋野は出だしの1番、2番と連続バーディーを奪ってペ・ソンウに2打差をつけたものの、4番、5番と今度は連続ボギーを叩いてしまう。7番を終えると、バーディーを奪ったペ・ソンウに1打差の2位に後退した。

「ゴルフ自体の調子は悪くないけど、ショットでギリギリのミスが多かった。緊張感があって、その緊張感によってミスしてしまうような。何よりパッティングで、外したくない距離をことごとく外していた。メンタル的には(きつい状況が)きていましたね」

 その後も一進一退の展開が続いたが、ペ・ソンウが17番でバーディーを奪って2打差をつけられる。優勝に向けてまさに窮地に立っていた渋野だったが、18番ロングでティーショットをマン振り。残り200ヤードを切る位置にまで運んで、第2打を7Wで放って2オンに成功した。

「もうイーグルしかないので、スイッチを入れたというか、ギアを外したというか......あっ、ギアを入れたのか。外してどうする(笑)。イーグルパットを決められなかった時は、きっと悔しい顔をしていましたよね。打った瞬間からショートするのがわかった。ほんと悔いの残るパットでした」

 しかし、このホールをボギーとしたペ・ソンウに対し、渋野は悠々とバーディーを奪う。両者は通算9アンダーで並び、勝負の行方は同じ18番で行なわれるプレーオフへ。

「ソンウさんと回ると、すごく自分のリズムがよくなりますし、楽しく回れる。だからこそ、(同じ最終組だった)今日は楽しみにしていましたし、やっぱり楽しかった」

 勝負を決めたのは、プレーオフ1ホール目の2打目だ。残り220ヤードの距離で3Wを振り抜き、グリーン手前のカラーで左に跳ねたボールはピンに寄っていった。ペ・ソンウも2オンに成功したものの、長いイーグルパットは大きくショート。対して、3mにつけていた渋野は表情を変えずに繊細なタッチでボールを転がし、見事カップイン。渋野は右拳を小さく、それでいて力強く突き上げた。

「2打目は本当に紙一重の位置だった。もうっちょっと左に出ていたらバンカーですし、ピンの左につけられたこと自体、もうあれは一生打てないと思います」

 思い返せば、2019年の初優勝時、そして1年11カ月ぶりの優勝となった先日のスタンレーレディスの優勝も、ペ・ソンウと競り合って手にしたものだった。さらに、スタンレーレディスに続いて、今回もプレーオフによる勝利。そこでの強さはつまり、ゴルファーとしての勝負強さだろう。

「基本的にはプレーオフも楽しんでいますね。この間の勝利は、3打目に繊細なショットを求められる戦いだった。今日はガンガン打っていけるパー5だったので、その分、気持ち的には集中して......一球入魂!」

 賛否両論が渦巻いた渋野のスイング改造も、10月の2勝で批判の声はすっかり消えた印象もある。

「まだまだ完成度は50%ぐらい。毎回毎回、同じようにスイングできているかと言われるとできていない。私はパーオン率が高い人が強いと思っています。パーオンすることでボギーの数を減らせると思いますから、今はパーオン率を追求していて、その成果は少しずつ出ているかなと」

 目下の目標は12月の米ツアーのQスクール(予選会)通過。10月に飾った2勝の勢いのまま米国に乗り込みたいところだろう。