樋口久子・三菱電機レディスで優勝、国内ツアー6勝目 女子ゴルフの国内ツアー「樋口久子・三菱電機レディス」は31日、埼玉・武蔵丘GC(6650ヤード、パー72)で最終日が行われた。首位で出た渋野日向子(サントリー)がペ・ソンウ(韓国)とのプレ…

樋口久子・三菱電機レディスで優勝、国内ツアー6勝目

 女子ゴルフの国内ツアー「樋口久子・三菱電機レディス」は31日、埼玉・武蔵丘GC(6650ヤード、パー72)で最終日が行われた。首位で出た渋野日向子(サントリー)がペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフを制し、今季2勝目、国内ツアー6勝目を挙げた。プレーオフでは1ホール目で鮮やかなイーグルを決めて勝利。優勝を争ったソンウとは互いに楽しみ、称えながらラウンドしたが、会見では相手に対する敬意と闘志の一端を見せた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田通斉)

 渋野は3度も2位に後退した。「左足下がりで右へのミスが多かった」。言葉通り、調子は決して良くなかった。ただ、表情はにこやかだった。ソンウとのデッドヒート、プレー、会話を心から楽しんでからだろう。

「ソンウさんとはプレーのリズムがすごく合うので、今日は楽しみにしていましたし、楽しめました」

 1打を争う中でも、ソンウがバーディーを決めると「ナイス」と言って笑顔になった。逆に外せば、膝を折るリアクションで残念がった。ソンウも渋野に対して同様だった。激戦を振り返る優勝会見で「これだけのデッドヒートで相手のミスを待ったり、少し期待したりする思いは」と問うと、渋野は「なかったです」と即答した。

「私としてはスポーツマンシップを大事にしていますし、相手のいいプレーには自分も頑張らなきゃと思わされる。今回もソンウさんは長いパットも入っていて、逆に自分の足りないところが見えるなと思いながら回っていた分、自分は自分と思って回ることができました」

正規18番で追いつきプレーオフ「完全に自分の中に入っていた」

 ただ、正規の最終18番パー5でソンウが1メートルのパーパットを外した際、渋野は無表情だった。「確実に入る」と思い、ソンウの優勝を祝福するつもりが、想定外でプレーオフに突入。この展開に戸惑っていたのだろう。しかし、「相手のことを考えて気が弱くなることはあるか」を問われると、渋野は真剣な表情で言った。

「勝負の世界なので。それが人としては必要な感情かもしれませんが、そういうのは自分を弱くしてしまうと思います。なるべくそこは思わないようにというか、完全に自分の中に入っていました」

 渋野はプレーオフ1ホール目、2オン1パットのイーグルで激戦を制した。2打目は残り210ヤードからピン下3メートルにつけたが、「あの2打目はもう一生打てないと思います」と振り返った。前日の会見では、約2年ぶり2度目となる「予選落ち後、翌週優勝」のチャンスについて問われ「ゴルフ脳が良くなった」と返したが、この日は「最後のホールなんかはイケイケゴーゴー。(ゴルフ脳が働いた場面は)全然ないですね」と笑いながら振り返った。

 戦う相手をリスペクトしつつも、同情はせず、闘志は燃やす。人として、ゴルファーとして、渋野は高いステージにいると感じた一戦だった。(THE ANSWER編集部)