明治大は10月23日の箱根駅伝予選会で前評判通りの走りで、2位の中央大に4分16秒差をつけて1位通過を果たした。山本佑樹監督は「周りからはトップ通過だと言われていたが、去年の中央学院大(※)のようなこともあるからけっこう慎重でした」と話す…

 明治大は10月23日の箱根駅伝予選会で前評判通りの走りで、2位の中央大に4分16秒差をつけて1位通過を果たした。山本佑樹監督は「周りからはトップ通過だと言われていたが、去年の中央学院大(※)のようなこともあるからけっこう慎重でした」と話す。
※2020年予選会は12位で19年連続出場を逃した



明治大は加藤大誠(7番)を筆頭に大幅に遅れる選手も出ず、しっかりとまとめた

 予選会前は記録会に出なかったこともあり、選手たちは体調が上がらず、10月初旬は自分たちの現状に不安を抱いていた。だが、気温が下がった2週間ほど前からは調子が上向き、戦力は充実してきていた。前方のグループで走った7人は1時間02分47秒で全体9位の加藤大誠(3年)を筆頭に2分台が4人のほか、1時間03分14秒の26位までに3人が入った。この結果を山本監督はこう振り返る。

「62分から62分30秒と設定していたのですが、風が強かったので全員が30秒から1分遅い感じでした。ただ10番目にゴールした尾﨑健斗(1年)までは、風の影響を考えれば設定通りという走りでした」

 前回の箱根駅伝は11月の全日本大学駅伝で3位になっていたことから、3強を脅かす存在と前評判が高かった。だが実際には1区と2区で出遅れて後手に回り、シード権を逃す11位というまさかの結果に終わった。そのショックは1カ月ほど尾を引いたという。

「2月はコロナの影響で練習ができず、3月の学生ハーフでみんなボロボロだったことで、スイッチが入った感じです。それに5月の関東インカレも前年に2部に落ちていたので、1部に上がるというのが競争部全体の目標になっていて。それをクリアしたことで、チームとして士気が上がったところはあります」(山本監督)

 鈴木聖人(4年)が主将になってからは、「記録会で記録は出たが、本当の強さは足りない。それを何とか克服しよう」という目標を明確にした。それをミーティングで話すだけではなく鈴木自身、各レースでタイムではなく順位を狙う走りを見せた。

「鈴木はけっこうほかの選手とコミュニケーションを取るほうなので、同級生や下級生にも言葉で働きかけていました。それに、鈴木と同じくらいの力を持つ4年の手嶋杏承が練習でも鈴木とガチガチにやる感じになったので、それに3年生が引っ張られて......という感じで広がっていきました。それに箱根で一番悔しかったのは、1区16位の児玉真輝(2年)だったと思うので、彼はけっこう内に秘めるほうで気が強いタイプですが、その悔しさをバネにして頑張っていました」

 こう話す山本監督が夏合宿のテーマにしたのは、走行距離を増やすことだった。その基本となるのは、ポイント練習以外の日に行なうジョギングだが、これまでのような時間ではなく、距離を指示するようにした上にアップダウンのきついコースを指定してやらせた。

「予選会も去年のようにすごい記録が出るコンディションを想定するより、風が吹いて暑くなるという最悪の状況をイメージして、それに対してどうやるのかを意識させました。その上で『けっこう走れたよね』という手ごたえも得られたので。悪いコンディションでいかに走るかというのは箱根にもつながるけれど、先を見すぎて予選会で足元をすくわれないようにと、冷静にコントロールした感じです」(山本)

 そんなタフさを求めた練習と、選手たちの強さを求める意識が今回の風が強い中での予選会の結果につながった。チームトップを狙って一度は加藤を抜きながらも、ゴールラインを間違えて日本人4位に落ちてしまったと鈴木は悔しがりつつ、チームについて次のように語った。

「後半失速し始めてきた時に自分が言っていた強さが出てくるのだと思うけれど、20kmでも周りに7人が残っていたので、『本当にみんな強いな。エース級の走りが何人いるんだよ』と思いながら走っていました。去年とは比べ物にならないくらいに層の厚さはあると思うので、箱根が楽しみだなと思ったし、自分もこのままじゃすぐに抜かれるから、もっと強くならないといけないと思いました」

 チーム上位7人の中には、前回の箱根でエントリーメンバーにも入っていなかった4年生の橋本大輝が1時間03分09秒のチーム6位になった。山本監督はそれを含め、予選会の収穫をこう話す。

「橋本は一般入試組ですが、去年の大保海士(全日本で駅伝初出場、箱根8区区間賞)のように4年になって伸びてきて夏合宿もAチームでずっとやっていました。1万mもベストは29分40秒32で、直前練習の1万mのペース走では29分30秒切りくらいでいっていたので驚く結果ではなかったですね。

 あとはチームトップの加藤は、ここ1年半くらいずっとくすぶっていて、夏合宿ではBチームに落としましたが、これで本人も自信を取り戻してくれると思います。それにチーム8位の杉本龍陽(3年)と9位の杉彩文海(2年)は、今回エントリーギリギリのところながらも、最後は頑張って上がってきてくれたので層の厚さが出てくるという部分では大きいですね。特に杉本は、もともと中距離で、それが5000mで13分台を出してハーフマラソンまで来たので、ちょっと面白いのが出てきたという感じです」

 この後は昨年3位になった全日本大学駅伝が控えている。予選会から2週間というハードスケジュールだが、それはこの夏に、タフさを求めてやってきた成果を試される場でもある。各選手が連続する大きなレースで、しっかり2本揃える走りができれば、それは力の証明にもなり、箱根へ向けての大きな自信にもなる。