全国社会人大会優勝9回、日本選手権優勝10回、トップリーグ優勝2回と、輝かしい歴史を持つラグビー界の名門「神戸製鋼コベルコスティーラーズ」が、2022年1月に幕を開ける「ジャパンラグビーリーグワン」への参戦を機に、「コベルコ神戸スティーラー…

全国社会人大会優勝9回、日本選手権優勝10回、トップリーグ優勝2回と、輝かしい歴史を持つラグビー界の名門「神戸製鋼コベルコスティーラーズ」が、2022年1月に幕を開ける「ジャパンラグビーリーグワン」への参戦を機に、「コベルコ神戸スティーラーズ」とチーム名を刷新した。神戸製鋼のみならず、日本代表のトライゲッターとして活躍した後、2011年度よりチームのアンバサダーとして広報活動を担う大畑大介氏が、新チーム名や新エンブレムの印象、チームに期待することなどを語った。(取材日:2021年10月4日)

神戸に錨(いかり)を下ろし、地域に根ざして活動する

 神戸製鋼グループの統一ブランドである「コベルコ」、ホストタウンである「神戸」、チームのアイデンティティであり、チームの愛称として多くのファンに馴染みのある「スティーラーズ」を組み合わせた新チーム名を、「神戸製鋼の選手としてプレーしてきて、神戸という街に特別な思いがあります。ですので、チーム名に『神戸』という地名が入ったことは嬉しかったですね。選手にとっても、神戸を背負って戦うという大きなモチベーションになるのではないでしょうか」と語る。新エンブレムについては「神戸製鋼の象徴である『高炉』と、高炉の中に棲む『サラマンダー』、港町神戸を連想させる『錨(いかり)』。チームの熱さと魂、神戸のモチーフが合わさった素晴らしいロゴができあがりました。神戸に錨(いかり)を下ろして、ここから良いスタートが切れるように思います」と絶賛した。

 新チーム名や新エンブレムに決意を表しているように、コベルコ神戸スティーラーズはより地域に根ざして活動するチームへと生まれ変わった。しかし、これまでもチームは地域との繋がりが深かったと大畑氏は述べる。「僕が入社する3年前の、1995年に阪神淡路大震災がありました。それまでは神戸製鋼のラグビー部という意識が強かったのですが、震災をきっかけに、チームと神戸市民との距離が近くなりました。僕らは、地域の皆さんを『元気づけたい』という思いでプレーしてきましたし、地域の方々からは『頑張りや!』と声をかけていただき元気をもらっていて、互いに支え合っていたように思います。1999年度に、日本一に返り咲いた時は、大勢の方々に喜んでもらえましたね」と回想する。チームは、スポーツ教室、学校訪問事業、医療従事者への支援、地域活性化の取り組みなどを実施してきた。さらなる連携強化を図るため、9月28日、チームと神戸市は事業連携協定を締結。大畑氏は「神戸には数多くのスポーツチームがありますが、市と連携協定を締結したのは、コベルコ神戸スティーラーズが初めてです。9月からコベルコ神戸スティーラーズラグビーアカデミーを開設し、スポーツを通して人材育成に貢献を目指します。また、今後は世界に向けて神戸の魅力を発信していきます」と力強く宣言した。

選手もファンの皆様も笑顔になるシーズンに

 コベルコ神戸スティーラーズのチームビジョンは『笑顔あふれる未来とともに』である。1994年度のV7を最後に、チームは震災の影響を受け、5年間優勝から遠ざかった。その後、2003年度にジャパンラグビートップリーグ初代王者に輝くも、2018年度シーズンの王座奪回まで実に15年間勝てないシーズンが続いた。一方、神戸の街は、阪神淡路大震災に見舞われた。

「僕がチームに入った当時、神戸は復興途中でした。笑顔は人を元気にしますので、自分たちが笑顔になることはもちろん、地域の方々に笑顔になってもらえることを意識し、優勝した時はみんなが笑顔になりました。コロナ禍という今だからこそ、コベルコ神戸スティーラーズのラグビーを見て、笑顔になってもらいたいですね」と、笑顔の持つエネルギーを信じる。

 伝統ある神戸製鋼コベルコスティーラーズのOBとしてチームに継承していってほしいものとは何なのであろうか。大畑氏に問うと、「クリエイティブラグビー」と明言する。「僕たちは、平尾(誠二)さんが掲げた神戸のクリエイティブなラグビーを世界へ発信しようという意識でプレーしてきました。新しいリーグワンというステージでも、スティーラーズらしい独創的なプレーを魅せてほしい。それがコベルコ神戸スティーラーズの役割だと思います」と力を込める。

 1988年から1994年まで変幻自在なラグビーで、黄金期を築いた。1999年度には故平尾誠二氏の発案で、バックスラインを横一列に並べる革新的なフラットラインを導入し、5シーズンぶりの全国社会人大会および日本選手権優勝。2003年度には、萩本光威ヘッドコーチのもと、ボールを動かす神戸製鋼らしいラグビーでトップリーグ初代王者に輝いた。2018年度には、世界的な司令塔、ダン・カーターを中心にV7時代を彷彿させるような展開ラグビーで15シーズンぶりの頂点に立った。

「神戸というチームは、昔から日本のラグビーを牽引してきました。時代とともにラグビー自体も変わってきましたが、神戸が日本のラグビーを引っ張るという意識は持ち続けてほしい。そして、地域とひとつになってリーグワンを戦っていき、選手、ファンの皆様が笑顔になれるシーズンにしてほしいと思います」

 チーム名やエンブレムは刷新したが、コベルコ神戸スティーラーズが目指すものは変わらない。これからもクリエイティブラグビーで観るものを魅了し、日本のラグビー界をリードし続ける。

(プロフィール)
大畑 大介(おおはた だいすけ)

1975年11月11日生まれ、大阪府大阪市出身。現役時代のポジションはWTB・CTB。小学3年からラグビーをはじめ、東海大仰星高校(現・東海大付属大阪仰星高校)、京都産業大学へ。大学3年の時に日本代表入りを果たす。1998年神戸製鋼に入社し、1999年度、2000年度の復活Vに貢献。2001年にオーストラリアのノーザンハンプトン、2002年にフランス・モンフェランでプレーする。2003年度から神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入し、トップリーグ初代王者の原動力となる。日本代表58キャップを誇り、ラグビーワールドカップに2度出場、テストマッチトライ数世界記録「69」を持つ。現役引退後の2011年度からは、神戸製鋼コベルコスティーラーズアンバサダーや「ラグビーワールドカップ2019日本大会」のアンバサダーとして活躍。2016年にはワールドラグビーから日本人として2人目となるラグビー殿堂として表彰される。