約11カ月ぶりの競技会出場となった東京選手権での本田真凜 全日本選手権出場を目指すための地域ブロック大会・東京選手権が、10月8日から10日まで、西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで行なわれた。昨年11月のNHK杯以来、約11カ月ぶり…



約11カ月ぶりの競技会出場となった東京選手権での本田真凜

 全日本選手権出場を目指すための地域ブロック大会・東京選手権が、10月8日から10日まで、西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで行なわれた。昨年11月のNHK杯以来、約11カ月ぶりの公式戦となった2016年世界ジュニア女王の本田真凜が、どんな演技を見せてくれるのか、注目が集まった。

 ショートプログラム(SP)では、冒頭に跳んだトーループの3回転+2回転の連続ジャンプと3回転ループは成功したが、最後の2回転アクセルは両足着氷の回転不足で大幅減点となった。だが、演技は「真凜らしさ」を見せた。映画『Mr.&Mrs.スミス』の音楽『アサシンズ・タンゴ』の、情感たっぷりの曲調に乗り、深紅と黒の衣装をまとった真凜が出だしの振りから見る者をぐっと引き込む滑りだった。

「約1年ぶりの試合で、もちろん緊張感はあったんですけど、久しぶりに落ち着いてできたんじゃないかなと思っています。昨年に比べて練習時間も増えていて、しっかり練習自体はできていました。ですけど、試合が近づいてくるにつれて、1カ月前にできていたものができなくなり、調子の悪い自分に戻りつつあるなか迎えた試合でした。すごく不安があったんですけど、久しぶりの試合で自分らしいというか、自分のよさを生かして滑ろうと(気持ちを)切り替えてできたかなと思います」

 SP7位で迎えたフリーは、ジャンプの精度が悪く得点が伸び悩んで87.12点にとどまり、合計140.70点の総合12位に終わったが、上位15人(シード選手を除く)が出場権を得る11月の東日本選手権(東京)への進出が決まった。

 フリーは、平昌五輪出場を逃した翌2018年-19年シーズンのシニア2年目で使用した『LOVERS』を再演。淡い黄色と黄緑色に色とりどりのスパンコールであしらった可憐な衣装を身にまとい、華麗な舞いを見せた。見る者を引きつける踊りは健在だったが、不安定なジャンプを修正できないままの演技になったのが惜しまれた。演技構成点は50点台だったものの、技術点は30点台にとどまり、ジュニア時代のような輝きは失われている。

「フリーの前は本当にどうなるかなという感じでした。直前の練習で試合の感じをあまりつかめていなくて、6分間練習で全部のジャンプを跳んで仕上げるというのが間に合わなくて、6分間が終わって(その組の)最後の滑走だったので、30分くらい時間があって、どういうふうに自分が過ごしていたのかも、あまりわからなかったです。

 とりあえずは(結果が出たので)ほっとしていて、2週間後に東日本選手権があるので、そこまでには元の構成に戻して、しっかり全日本選手権に行けるようにしたいなと思うので、あと2週間で頑張りたいなと思います」

 昨季は真凜にとっては試練のシーズンだった。10月のこの大会ではフリーの音源が間違って流れるハプニングが。全日本選手権の出場権は獲得したが、大会直前にめまいの症状を発症するアクシデントに見舞われて棄権を余儀なくされた。その後は体調のこともあって、今年3月までジャンプ練習はまったくしなかった。アイスダンスの靴を購入して滑るなど、自分を再確認するための時間を作り、自らの気持ちと向き合った。

「2週間くらい毎日アイスダンスの練習をしていたんですけど、それをきっかけに『あっ、スケートって楽しいんだな』とまた思いました。スケートのなかでも違う競技に出会えてよかったなと思ったんですけど、いろいろ考えた上で、また(シングルの)試合に出て選手としてアスリートとして頑張りたいなという気持ちになったので、大学生が終わるまでしか自分のなかではないかなと思うんですけど、ひとつひとつの試合を全力で、また輝けるように頑張りたいなと思っています」

 コロナ禍のために練習拠点を日本に戻し、週末は実家のある関西で本田武史コーチに、東京の大学に通っている時は新横浜を拠点にして佐藤信夫、久美子コーチらに指導してもらうようになった。大学2年生の20歳になった真凜に今季の目標を尋ねたら、こんな答えが返ってきた。

「スケート生活の目標としては、何かの試合で結果を残すよりも、いま自分が一番大事にしているものだったり(を大切にして)、すごく簡単そうで難しいことなんですけど、自分らしく、何の気負いもなくいい演技ができればいいなと思います。

 1カ月くらい前まで、ジュニアの時と同じ構成で練習を詰めていたんですけど、試合が近づいてくるうちにどんどん調子の悪い自分が戻ってきて、試合はちょっと不安のなかという感じでした。まずはトップで戦っていらっしゃる選手のみなさんに近いというか、自分のなかでもマックスでできる構成で練習していって、試合でもそれができるようにしたいなと思います」

 妹の望結があこがれる選手であり続けるためにも、このままで終わらせるわけにはいかないはずだ。

「妹にとって、自分が頼っていた兄のような存在でいたいなと思っています。今回SPで同じグループで滑れたのも、私が不安な部分が多かったので心強かったですし、試合で望結が思いっきりジャンプに挑む姿を見て、さすがだなと思いました。(女優の)お仕事があって練習時間が限られたなかでも、深夜でも早朝でもスケートに向かう姿は、自分にとってもすごくいい影響になっていますし、これからも望結が(スケートを)続けてくれるのであれば、一緒に頑張っていきたいです。抜かされないように私も頑張ろうと思います」
 
 一方、真凜と同じ組で滑る夢を叶えたSPで、本田望結は3つのジャンプのうち2つで転倒するなどミスを連発して21位発進となった。

「決められた時間のなかで、昨年の反省点をちゃんと生かして練習に励めたので、そこはよかったと思いますし、自分は結果とかを言えるような選手ではないので、とにかく大好きなスケートができていることの喜びを感じながら、めげずに挑みました。

 スケートが好きという気持ちがあるからここまでできていると思うので、本当に嫌いになるまで精一杯やるというのが小さい頃から変わらず持っているテーマかなと思います。SPではお姉ちゃんと同じグループで滑るのが夢だったので、それが叶ってよかったです」

 フリーでは太鼓や三味線が響く和テイストの曲に乗って大きな演技を披露した。冒頭の3回転サルコウの着氷が乱れると、続いて跳んだ3回転サルコウでは転倒。連続ジャンプも1回転や2回転にとどまり、ジャンプ7本すべてが精彩を欠く出来で、得点を伸ばすことができなかった。結果はフリー23位の69.66点で、合計111.02点の総合23位となり、東日本選手権の出場権を得られずに今季の敗退が決まった。

「やることはできたんですけど、やることとできることのレベルがまだ低いので。構成も落としていますし、元の構成に戻すことが大事だなとあらためて思いました。やっぱりやりきったと思うまでやり続けたいなと、今日もその気持ちは消えずに滑りました」

 女優業に加えて歌手活動も始めるなど、多才ぶりを発揮している17歳は、スケートに割く時間も限られているはずだ。それでも、大好きなスケートができる喜びと楽しさを込めた演技を最後まで見せていたのが印象的だった。

「ノービスとジュニアの時代は全日本に出なかったことが一度もなくて、毎年全日本に出場できるのが当時は当たり前だと思っていました。それは、周りの方にも認めていただけるくらい努力できていたからだと、あらためて振り返ってみると思います。

 でも、どんどん成長するにあたり、考えも大人になったいまの自分に対して、少し、甘えと言ったら違うかもしれないですけど、やっぱりスケートをやりきったと思うには、小さい頃のようにがむしゃらに努力する必要があると思っています。いま一度、小さい頃の自分を振り返って(初心に戻り)、来年はお姉ちゃんと一緒に全日本に出るという夢を叶えたいです。それまではスケートはやめられないなと思います」

 来季も望結のスケート競技への挑戦は続くことになりそうだ。