竹下佳江さんインタビュー期待の新戦力と日本女子バレーの現状 10月15日に開幕する2021‐2022シーズンのVリーグ女子(V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN)。現役時代に長く日本代表の正セッターとして活躍し、現在はヴィクトリ…

竹下佳江さんインタビュー
期待の新戦力と日本女子バレーの現状

 10月15日に開幕する2021‐2022シーズンのVリーグ女子(V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN)。現役時代に長く日本代表の正セッターとして活躍し、現在はヴィクトリーナ姫路の取締役球団社長付エグゼクティブアドバイザーを務める竹下佳江に、3年後のパリ五輪も見据えた期待の選手たち、さらに、女子バレー界が目指すべき未来について聞いた。



竹下佳江が名前を挙げたセッターのひとり、デンソーの松井珠己

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――3年後のパリ五輪に向けて、竹下さんが期待するセッターはいますか?

「東京五輪で正セッターを務めた籾井あき(20歳・176cm)選手、リオ五輪を経験している岡山シーガルズの宮下遥選手(27歳・177cm)も含め、今のVリーグにはいいセッターが揃っています。東レアローズの関菜々巳選手(22歳・171cm)、デンソーエアリービーズの松井珠己選手(23歳・170cm)も楽しみですし、ヴィクトリーナ姫路の櫻井美樹(25歳・170cm)も期待の選手です。プレーの"質" が高い、バランスのとれた選手たちに期待しています」

――それぞれ、どんな特徴があるセッターですか?

「小学生の頃からセッターのプレー経験があるという東レの関選手は、トスワークが優れている印象があります。東レには昨シーズンから、私もロンドン五輪で一緒に戦った中道瞳がコーチとして入っているので、彼女の指導でより成長していくでしょう。関選手はすごく素直で、いろんなことを吸収する"頭のよさ"を感じます。そういった柔軟な姿勢で練習できる選手は、伸びしろも大きいです。

 デンソーの松井選手は、日本女子体育大学時代にユニバーシアードでセッターを務めるなど、アンダーカテゴリーでの国際大会の経験が豊富です。当時、アンダーカテゴリーの日本代表は現ヴィクトリーナ姫路のGM(安保澄)が監督で、育成に力を入れていた選手でもあります。彼女は、『どう自分が動いて他の選手を生かすべきか』と、チームのためにプレーできる選手。話を聞く限りでは、コミュニケーション能力も高いようです。

 姫路の櫻井は、松井選手が活躍したユニバーシアードでは"3番手"のセッターでした。そういう悔しさと経験を経て、『やるならトップでやりたい』という気持ちを強く持つようになった選手です。ただ、まだまだスパイカーを生かしきれていない印象です」

――籾井選手が所属するJTはリーグ2連覇中で、関選手が所属する東レは昨季にリーグ無敗でした。それぞれ強力なエースがいるチームですが、それが成長にプラスに働くことは?

「JTにはアンドレア・ドルーズ(東京五輪金メダルのアメリカ代表メンバー)、東レには黒後愛選手(しばらく休養をとることを発表)と石川真佑選手という日本代表の主力がいます。そういった選手がチームにいることで、フォローしてもらいながら成長していける部分もあると思います。加えて、ミドルやライトを絡めると攻撃のバリエーションが増えるため、相手としては的を絞りにくい。経験しながら勝つことによって、成長、自信につながっていくのではないでしょうか」

――ちなみに、セッター以外で期待する選手はいますか?

「荒木絵里香さんが引退したミドルブロッカーは、東京五輪を経験したNECレッドロケッツの山田二千華選手(21歳・184cm)やベテランの島村春世選手(29歳・182cm)、ユニバーシアードを経験したデンソーの横田真未選手(23歳・177cm)をはじめ、姫路の荒谷栞(23歳・173cm)にも期待しています。荒谷はミドルの選手としては小柄ですが、ミスが少なくて勝負強く、コート内外でチームのバランスを取れる選手です。同じ姫路の佐々木千紘(23歳・175cm)も楽しみな選手で、サーブとブロックがよく、とても素直でたくさんのことを吸収している選手ですね。

 アタッカーでは、久光スプリングスの井上愛里沙選手(26歳・178cm)や中川美柚選手(21歳・182cm)、PFUブルーキャッツの志摩美古都選手(22歳・175cm)もいい。リベロでは東レの水杉玲奈選手(21歳・164cm)も楽しみな選手です。さらに今季のVリーグで、すばらしい活躍をする選手が出てくることを期待しています。

 日本代表のチームを3年後(パリ五輪)に向けて作っていくことを考えると、若い選手や代表経験が浅い・ない選手だけでは強いチームはできない。東京五輪を経験した選手を中心に、うまく強化していってほしいです」

――東京五輪で苦しい戦いが続いたなかで、古賀選手が存在感を示し、若い選手の中では石川選手が奮闘していたように思います。2人のプレーを振り返るとともに、Vリーグでどんな活躍を期待していますか?

「国民の多くが『女子バレーは物足りなかった』と感じたであろうなかで、古賀選手は韓国戦で"熱さ"を見せてくれました。そういう熱は、テレビ画面越しでも伝わることを実感しましたね。選手としてひと皮もふた皮もむけたのかな、と感じました。

 石川選手に関しては、気持ちの熱さは表に出にくくても胸の内に秘めていて、勝負所で頑張って決めてくれる選手だと思いました。高さはないですが、テクニック面でもっと磨ける部分があるようにも感じます。ただ、サーブに関しては、特に最後のほうで入れにいくだけになっていたのが気になりました」

――それは石川選手本人も、直していかないといけないと口にしていました。具体的にはどういったところを修正すべきなのでしょうか。

「あそこはメンタル的な部分が大きいと思います。試合の勝敗、次の1点が次第に重要になっていくなかで、慎重になりすぎてしまったこともあるかと。技術を高めつつ、そういった場面を想定した練習を重ねるといいのではないかと思います。

 また、前日本代表HCのエディー・ジョーンズさんのもと、2015年のラグビーW杯でメンタルコーチを務めた荒木香織さんのように、ネガティブな心情をポジティブに変えてあげられる存在が必要かもしれません」

――女子バレー界は、ここからどう立て直していけばいいでしょうか、

「私が直接できることは限られているので、あくまで個人的な意見になりますが......大会の振り返り、今後の対策なども話し合われているかもしれません。Vリーグが間もなく始まりますが、日本の女子バレーがどこを目指していくのかといった指針を早く示してほしい。もちろん私を含めた組織側の人間、選手たちも自立して、女子バレーの未来と強化について考えていく必要があります。

 スポーツをする子供たちにバレーボールの魅力を感じてもらいたいですし、誰もが『日本代表を目指したい』と思える魅力的な組織であってほしいと思います。全員で、明るい未来を切り開いていきたいですね」