学生三大駅伝の幕開けとなる出雲駅伝が10月10日に行なわれる。昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止になったため、2年ぶりの開催。今回は、昨季の全日本駅伝と箱根駅伝を制した駒澤大がV候補の筆頭になる。3年の田澤廉(左)や2年の…

 学生三大駅伝の幕開けとなる出雲駅伝が10月10日に行なわれる。昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止になったため、2年ぶりの開催。今回は、昨季の全日本駅伝と箱根駅伝を制した駒澤大がV候補の筆頭になる。



3年の田澤廉(左)や2年の鈴木芽吹(右)など、充実の駒澤大を脅かす大学はあるか

 駒澤大はスピードで他校を圧倒している。5月の日本選手権10000mで田澤廉(3年)が日本人学生歴代2位の27分39秒21、鈴木芽吹(2年)が同3位の27分41秒68をマーク。2位と3位に入り、この種目では大迫傑以来(早稲田大3、4年時)となる"大学生表彰台"となった。

 田澤を温存する形になった関東インカレは、2部10000mで唐澤拓海(2年)が日本人トップを奪い、同5000mでは唐澤と鈴木が日本人ワン・ツーを飾っている。9月の日本インカレ5000mでは篠原倖太朗(1年)が2位に食い込むと、9月19日の日体大長距離競技会5000mで安原太陽(2年)が13分43秒65の自己ベストをマークした。

 出雲は1区8.0km、2区5.8km、3区8.5 km、4区6.2 km、5区6.4 km、6区10.2 kmの6区間45.1 km。駒澤大は田澤、鈴木、唐澤の3本柱が超強力で、順当なら1、3、6区のロング区間を3人が担うことになるだろう。つなぎの区間も5000m13分40秒台の実力を持つ選手が入るため、隙が見当たらない。

 学生駅伝3連勝を狙う駒澤大に勝負を仕掛けたいのが、「駅伝3冠」を目標に掲げる青学大と早稲田大、そして初出場で初優勝を目指す東京国際大だ。

 青学大は、近藤幸太郎(3年)が今季5000m(13分34秒88)と10000m(28分10秒50)で青学大記録を塗り替えるなどエースに成長。学生駅伝で主要区間を務めてきた湯原慶吾(4年)、岸本大紀(3年)、中村唯翔(3年)は登録メンバーから外れたが、原晋監督は選手を試すことはせず、ベストメンバーを組んできた。学生駅伝未経験の選手のなかでは、関東インカレ2部ハーフマラソンを制した西久保遼(3年)、5000mで13分41秒32のタイムを持つ若林宏樹(1年)がどんな走りを見せるのかに注目したい。

 9月の日本インカレで5000mを制した近藤は、「チームとしては駅伝3冠を目標にしています。その実現には、自分がエース区間でしっかりと走らないといけません。正直、東京国際大のヴィンセント選手や駒澤大の田澤廉選手には勝てないと思うので、実際には30秒~1分は(リードが)ほしいですね(笑)」と話していた。田澤はアンカーに入る可能性が高い。青学大が3年ぶりの出雲制覇を果たすには、5区終了時までに駒澤大からリードを奪っておきたいところだ。

 早稲田大は中谷雄飛(4年)、太田直希(4年)、井川龍人(3年)の10000m27分台トリオ、今季5000mで13分31秒51をマークしている千明龍之佑(4年)、5000mで13分36秒57を持つ伊藤大志(1年)とスピードランナーが揃う。区間距離を考えると、最もフィットする大学だ。しかし、エースの中谷が日本インカレ5000mを途中棄権しており、どこまで調子を合わせてこられるのかがカギになりそうだ。

 爆発力のある中谷が万全な状態なら、ロング区間で駒澤大に先行できる可能性がある。千明をショート区間に回すことができれば、その区間でも攻撃できる。11年ぶりの出雲Vはエースの完全復活にかかっている。

 そして今回、台風の目になりそうなのが東京国際大だ。

 何よりイェゴン・ヴィンセント(3年)の走力がずば抜けている。箱根駅伝は1年時に3区で、2年時は2区で区間記録を樹立。2年連続で同じ区間になった田澤を相手に、それぞれ2分00秒、1分38秒差をつける圧倒的な差で勝利している。また、5月の関東インカレ(2部)でも5000mと10000mで完勝。10000mでは日本人選手に35秒以上の大差をつけた。

 出雲駅伝6区の区間記録はギタウ・ダニエル(日本大4年時)が2009年に記録した28分17秒。同区間の日本人最高は土方英和(國學院大4年時)が2019年に記録した29分05秒だ。ヴィンセントは区間記録を、田澤も日本人最高記録を塗り替えるような快走が予想される。ヴィンセントは田澤が相手でも、30~40秒差なら追いつくことができるだろう。

 東京国際大はヴィンセント以外も戦力が充実している。丹所健(3年)が日本インカレ5000mで3位に入るなど日本人エースに成長。山谷昌也(3年)は10000m28分29秒36のタイムを持っている。他に佐藤榛紀、白井勇佑というルーキーを含めて5000m13分台を4人登録。つなぎ区間でも駒澤大に大きく引き離されることはないだろう。ヴィンセントが3区に入った場合、東京国際大がトップに立つ可能性が高く、最終6区の起用なら大逆転のドラマを生むかもしれない。

 その他にも、日本インカレの長距離種目(1500m、5000m、10000m、3000m障害)で5人の入賞者を出した順天堂大は、地元・島根県出身の三浦龍司(2年)が1区に入ることが有力視されている。その場合、東京五輪3000m障害で7位入賞を果たしたスピードで強烈なスタートダッシュを披露するだろう。また、正月の箱根駅伝で準優勝に大躍進した創価大は、日本インカレ10000m2位のフィリップ・ムルワ(3年)、同6位(日本人2位)の嶋津雄大(4年)のWエースが強力。初出場となる出雲でどんなインパクトを残すのか。 

 神在月の出雲から始まる学生ランナーたちの熱いドラマが、間もなく幕を開ける。