勝みなみにとって、国内メジャーの日本女子オープンは「夢の舞台」だった。それだけに、アマチュア時代からぜひとも手に入れたいタイトルだった。 栃木県の烏山城CCで争われた今年の大会は第2ラウンドが雨によって中止となり、月曜日に順延された最終ラ…

 勝みなみにとって、国内メジャーの日本女子オープンは「夢の舞台」だった。それだけに、アマチュア時代からぜひとも手に入れたいタイトルだった。

 栃木県の烏山城CCで争われた今年の大会は第2ラウンドが雨によって中止となり、月曜日に順延された最終ラウンドをトップで迎えた勝は、その日も大きくスコアを伸ばして、2位の上田桃子、西郷真央に6打差をつけ、自身初のメジャータイトルを手にした。

「ひとホール終わるごとに、優勝に近づいていることがうれしかったし、今日はすごくナイスプレーができました。最後はパーで上がりたかったけど、『メジャーで勝つのはどんな気持ちなんだろう』とか、いろいろと考えてしまって(笑)」

 最終ホールこそ、この日唯一のボギーを叩いたものの、ただひとり4日間すべてで60台をマークし、通算14アンダーで圧勝した。



日本女子オープンで圧倒的な強さを見せた勝みなみ

 高校に入学したばかりの2014年4月にKKT杯バンテリンレディスで、アマチュアながらツアー史上最年少で優勝を果たした勝は、続いて日本ジュニア(2014年)、日本女子アマ(2015年)を制し、日本女子オープンのローアマ(2015年)にも輝いた。そして今回、日本女子オープンで優勝を飾って、日本タイトル"四冠"を手にした。この快挙は、宮里藍、諸見里しのぶに続いて3人目だ。

「本当に誇らしい。藍さんもしのぶさんも、ゴルファーとしてだけじゃなく、人としてもすばらしいじゃないですか。そのふたりと並んだことは、素直にうれしいし、私も偉大な人になりたいな」

 同会場で女子オープンが開催された5年前はアマチュアの立場で出場し、2日間で12オーバーと叩いて、予選落ちを喫した。

「リベンジできました。ここはアップダウンがあって、グリーンも小さいし、傾斜がきつい。アマチュアの時は飛距離もなかったし、アイアンが得意でもウッドの技術がなかった。今回はグリーンにのせて、バーディーパットも打てていたし、アマチュアの時は気持ちが前面に出すぎていたけど、今回は気楽に臨めていた。コースだけじゃなく、自分の気持ちも攻略できたかなと思います」

 今季2勝目(プロ通算5勝目)を初のメジャー制覇で飾った勝が快進撃の要因として挙げたのは、昨年から積極的に取り組んできた飛距離アップだ。以前に比べてドライバーで約20ヤード、アイアンで10ヤードは伸びていると言い、最終日も同組の西郷をオーバードライブするシーンが目立った。

「去年からトレーニングを週3回に増やして、主にパワーをつけてきたんですけど、ちょっとやりすぎた面があって、うまく身体が動かなくなってしまった。そこで現在は、週1でパワー系、それ以外の日はストレッチ系のトレーニングをやっています。最近、上位で戦う機会が多いのは、今のトレーニングのやり方が合っているのかな、というのを感じ取れた優勝でした」

 飛距離が伸びたことで、視野が広がった。

「今までは(2オンを)狙えなかったロングホールが、飛距離が10ヤード、20ヤード伸びたことで狙えるようになった。結構、ラクにゴルフができていると感じます。ちょっと前には、もっとバカ飛びしていた時期もあったんですけど、今は一段階下の飛距離で安定している。100ヤード以内のアプローチはまだ安定していないけれど、他のアイアンはいい感じです」

 勝は、日本の女子ツアーを牽引する1998年生まれの『黄金世代』で、最初のトーナメント覇者だ。15歳293日でKKT杯バンテリンレディスを制して以降、畑岡奈紗や渋野日向子ら同世代の後塵を拝した時期もあったが、今回の日本女子オープン優勝は、今年23歳となる黄金世代の通算30勝目となった。

 さらにこの優勝によって、国内ツアーでは3年シードの権利も得た。米ツアー挑戦へのあと押しともなる。

「本当は今年、(米ツアーの)QTを受けようと思って、8月に調べたんですけど、ちょうど1週間前に閉め切られていて無理だった。それで『来年のQTを目指して頑張ろうかな』と考えていたところでしたから(この3年シードは大きい)。いずれはアメリカに行く方向で考えています。今は忙しくてなかなかできないけど、英語の勉強もちょっとずつやっていけたら」

 賞金女王レースのトップを走り、8月の東京五輪でも銀メダルを獲得した22歳の稲見萌寧や、今大会で3週連続Vを狙った2歳下の『ミレニアム世代』西村優菜ら、黄金世代よりも若いゴルファーの台頭も目立つなか、日本女子オープンでは渋野も5位タイに入って復調の兆しを見せた。また、前週には畑岡が米女子ツアー、ウォルマート NW アーカンソー選手権で優勝した。

 百花繚乱の女子ゴルフ界で、改めて「黄金世代強し」を印象づけた勝の優勝だった。