コロナ禍によって延期された試合もあったものの、9月に入って大学ラグビーが東西でついに開幕。今季も大学王者を巡る戦いの火蓋がいられた。そんななか、9月12日と18日に初戦を迎えた関東大学ラグビー対抗戦から将来有望な「5人のルーキー」を紹介し…

 コロナ禍によって延期された試合もあったものの、9月に入って大学ラグビーが東西でついに開幕。今季も大学王者を巡る戦いの火蓋がいられた。そんななか、9月12日と18日に初戦を迎えた関東大学ラグビー対抗戦から将来有望な「5人のルーキー」を紹介したい。

 まず取り上げたいのは、立教大との開幕戦で「アカクロ」ジャージーに身を包み、早稲田大の8番を背負って登場した「サトケン」ことNo.8(ナンバーエイト)佐藤健次だ。桐蔭学園では入学早々にレギュラーを張り、1年時こそ「花園」全国高校ラグビー大会で準優勝だったが、2年時、そしてキャプテンを務めた3年時は連覇を達成。高校生屈指の突破力を備える花園のスター選手だ。



開幕戦に先発した早稲田大のルーキー佐藤健次

 身長178cmと、No.8として世界的に見れば決して大柄なほうではない。そのため、「大学に入ったらFL(フランカー)やHO(フッカー)など自分の色を出せるポジションを探し、日本代表や世界レベルの選手になりたい」という気概を持って早稲田大学に入学。入部時に提出した希望ポジションは、FW(フォワード)の最前列で背丈がなくても通用できるHOだった。

 しかし、今季より早稲田大を率いる大田尾竜彦監督は「まずは大学の試合に慣れてほしい」と、その提案を一旦却下し、開幕戦では高校時代と同じNo.8として抜擢。佐藤はその期待に応えるように、前半2トライと気を吐いた。ひとつ目のトライはキックパスをキャッチして左隅に飛び込み、ふたつ目のトライは持ち味の豪快なランで中央に飛び込んだ。

 大学入学時に「また取材されるような選手になりたいです!」と話していた佐藤は、それからさらに体重を6kgほど増やして100kgまで体躯を大きくし、開幕戦から言葉どおりの非凡なプレーを見せた。今後はボール近場での力強さ、大きな相手を倒し切るタックルなどに磨きをかけて、よりFWらしい選手に育ってほしい。

 その早稲田大にはもうひとり、存在をアピールしたルーキーがいる。前半2分にいきなり先制トライを挙げたSH(スクラムハーフ)宮尾昌典だ。

 京都成章では高校1年時から花園に出場し、3年時は中軸のひとりとして同校初の決勝進出に貢献。佐藤とともにU17日本代表で活躍するなど、パスさばき、そしてスピードに長けた選手として注目を集めてきた逸材だ。

 宮尾は進学時、当然ながら関西や関東の強豪大から多く声をかけられた。どの大学に進学したらいいかと個人的に聞かれた時、「SHなので試合にたくさん出られそうなところがいいのでは?」と話したこともあった。そんななか、宮尾は伝統的にBKの展開力に長けていて、自身も「憧れていた」という早稲田大を選んだ。

 春季大会、宮尾はケガなどで出遅れたものの、夏には先輩を押しのけて先発の座を掴み、9番のジャージーを獲得。開幕戦では持ち味であるアタックセンスをおおいに披露した。

 このルーキーたちの活躍もあって、早稲田大は12トライを挙げて70−0で立教大に快勝。大田尾監督は「ふたりは非常に能力が高く、公式戦の先発を勝ち取る力があることは間違いない。大学の公式戦、対抗戦の初戦の固さが見られたかなと思いますが、よくやった」と称えた。

 3人目は、昨年度の対抗戦王者・明治大で15番を背負い、ルーキーながら唯一2試合連続(12日・18日)で先発出場を果たしたFB(フルバック)安田昂平だ。

 御所実業の3年時は「もっと安田にボールを持たせたい」というチーム事情により、SO(スタンドオフ)としてプレーした。だが、2年時は身長181cmと大柄ながら50メートル5.9秒の快足を武器にWTB(ウィング)として4トライを挙げるなど、同校の準優勝に大きく貢献した韋駄天である。

 この青山学院大とのデビュー戦でも、時にはWTBのポジションに入り、ボールを持てば持ち前の走力を発揮していた。初の対抗戦を終えて、安田は「自分のできることを探しながらフォーカスし、思い切ってプレーしようと思った。ボールをもらった時にゲインラインをきれたところはよかった」と胸を張った。

 安田はSOよりもスペースのある場所で、バックスリー(WTBとFBの総称)としてボールを持ったほうが活き活きとしたプレーを見せていた。昨季までリコーを率いていた神鳥裕之新監督は「シーズンが深まるにつれて、いいところを出してほしい」と期待を寄せている。

 4人目は、初戦の帝京大で7−17と接戦を演じた筑波大のSO浅見亮太郎だ。流通経済大柏ではロングキックとスピードに長けたFBとして活躍し、共同主将としてチームを引っ張っていた。

 春は同じ1年の堀日向太(中部大春日丘)がSOのポジションを務め、浅見はBチームのCTB(センター)などでプレーしていた。しかし、その堀の負傷もあって浅見がSOにコンバートされると、すぐに頭角を現して1年生ながら10番を与えられた。

 帝京大戦では得意のロングキックだけでなく、長短のパスも交えてゲームメイク、タックルでも体を張った。筑波大の嶋﨑達也監督は浅見について、「落ち着いて主軸のプレーをしているので、1年生という意識はありません。ゲームプラン、戦い方を託しています」と高く評価した。

 対抗戦初先発となった浅見は、「1年生として出場したが、チームとして勝てなかったのは大きかった。個人的には実力がまだまだ足りない。ディフェンスをもっと激しく、そしてペナルティが多かったので、規律を正してもっと強い選手にならないといけない」と前を向く。

 そして最後の5人目は、帝京大のFL青木恵斗だ。開幕戦はゲーム展開的に短い出場時間に終わったが、高校時代は佐藤とともに桐蔭学園の連覇に大きく貢献した選手である。

 高校1年時こそ花園に出場できなかったが2年時からは身長187cm体重100kgながら走れるLO(ロック)として、高校ラグビー界に大きなインパクトを残した。

 トップリーグの強豪からも誘われたほどの逸材は、FWの育成に長けている帝京大に進学。今年はFLとして出場するものの、今後は将来を見据えて左PR(プロップ)やHOなどへコンバートする話もあるという。

 大学ラグビー界の名将・岩出雅之監督は「(青木には)来季、再来年と(チームを)背負ってもらうので、今季は伸び伸びと型にはめずに『楽しめよ』と言っています。持っているものを増やしながら、プレッシャーに対して挑戦してほしい」と目を細めた。

 岩出監督は若手育成に定評があるだけに、これからも青木を積極的に起用していくだろう。青木は「FLに転向して慣れてきました。強みはボールキャリアなので、高校時代は呼ばなくても味方がボールを渡してくれた。ただ、FLでは外にいることが多いので、もっとボールを要求してボールタッチを増やしていきたい」と意気込んでいる。

 今回紹介した5人のルーキーは、今年の大学ラグビーシーンをおおいに盛り上げてくれるはずだ。