F1 2021フォトグラファー対談特別編「前半戦名シーン」対談前編はこちら>>対談後編はこちら>>F1を30年以上撮影してきた日本を代表するフォトグラファーの熱田護氏と桜井淳雄氏が「見たことのない場面が続出して、本当に面白い」と語る2021…

F1 2021フォトグラファー対談
特別編「前半戦名シーン」

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F1を30年以上撮影してきた日本を代表するフォトグラファーの熱田護氏と桜井淳雄氏が「見たことのない場面が続出して、本当に面白い」と語る2021年シーズン。その前半戦を彩った名シーンをふたりの写真とコメントで振り返ろう。


開幕戦バーレーンGP

 角田裕毅選手は撮られていることを意識してくれるので、すごく撮影しやすいです。キミ・ライコネン選手みたいに顔を背けたりしないですから(笑)。経験を積んでどんどん速くなっていくでしょうし、表情ももっとカッコよくなっていくはず。これからがすごく楽しみです。(撮影・熱田護)


開幕戦バーレーンGP

 フェラーリのエースを務めるシャルル・ルクレールは、コースで撮影していてレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとともに今、もっとも速いと感じるドライバーです。まるでマシンをゴーカートのように操るドライビングは驚異的です。(撮影・桜井淳雄)


開幕戦バーレーンGP

 3年振りにF1復帰を果たした40歳のフェルナンド・アロンソ。シーズン前半は久しぶりのF1マシンにまだ慣れていなかったようでしたが、中盤戦に入ると速さを見せつけています。彼の速さやバトルの巧さはいまだに一級品。トップクラスのマシンに乗れば、優勝争いをするだけの力を持っています。(撮影・桜井淳雄)


開幕戦バーレーンGP

 1年ぶりの現場取材となったレース。コロナ以前はドライバーの顔写真やパドックの風景を撮ってからコースに出ていましたが、現在は感染対策のため、僕たちカメラマンはピットやパドックにいっさい入れません。現場に戻れたのはうれしかったですが、疎外感はありましたね。(撮影・桜井淳雄)


第2戦エミリオ・ロマーニャGP

 コロナ禍でカメラマンは基本的にコースだけで撮影し、パドックやピットレーンに入れない状況。イモラではたまたまピットの上からタイヤ交換のシーンを撮影できました。フェラーリは昨年に比べてすごく速くなっており、後半戦が楽しみなチームのひとつ。(撮影・熱田護)


第3戦ポルトガルGP

 レース後の体重測定が終わったあとのピエール・ガスリーです。今季のガスリーは自分がチームを引っ張っていくという意識を持っているようで、角田選手ともよく話していますが、本当に兄弟みたいな感じです。ガスリーは人柄がいいので、角田選手ともそういう関係を築けているんだと思います。(撮影・熱田護)


第4戦スペインGP

 金曜か土曜の夜の12時前くらいに、レッドブルのモーターホームでずっと電話しているホンダのエンジニアの方です。すでにほとんどのスタッフがサーキットを後にしている中で、その日に起こった問題を解決するために日本に電話をしていたのだと思いますが、遅くまでやりとりしている姿を見て、ラストイヤーに賭けるホンダの本気を見た気がしました。(撮影・熱田護)


第4戦スペインGP

 今シーズン、史上最多の8度目の世界王者を目指すルイス・ハミルトン。現在36歳ですが、すばらしいドライビングを見せてくれます。昨年感染した新型コロナの後遺症で苦しんでいると言われていますが、少なくともドライビングに関してはまったく衰えを感じません。(撮影・桜井淳雄)


第4戦スペインGP

 スペインGPで通算100回目のポールポジションを獲得し、決勝でもマックス・フェルスタッペンとのバトルを制して表彰台でシャンパンファイトをするルイス・ハミルトン。コロナ対策のためにコースの外から長いレンズで撮るしかないのですが、本当は表彰台の下でシャンパンのしぶきを浴びながら撮りたかったシーン。(撮影・桜井淳雄)


第5戦モナコGP

 モンテカルロの美しい光のなかを駆け抜けるマクラーレンのマシン。モナコでは、ガルフ・オイルの特別カラーリングが施されたマシンで走っていました。数々のレースで勝利を挙げた、このガルフのカラーリングはカッコよかった。F1マシンは性能だけでなく、カラーリングも重要だと感じました。(撮影・熱田護)


第6戦アゼルバイジャンGP

 アゼルバイジャンの首都バクーに設けられた市街地サーキット。コース脇に立つ建物のバルコニーから撮影したのがレッドブル・ホンダのマシン。レースではクラッシュ続出の荒れたレース展開になりましたが、レッドブルに新加入したセルジオ・ペレスが今季初優勝を飾りました。(撮影・熱田護)


第6戦アゼルバイジャンGP

 バクー市街地のコースにはモスクや博物館などさまざまな建物が立っています。アゼルバイジャン大統領府の建物の間からF1マシンが走る姿が見えます。何回もチャレンジして、ちょうどマシン(写真右下)がきれいに見える瞬間をとらえることができました。こういうチャレンジはやっぱり面白いです。(撮影・桜井淳雄)


第6戦アゼルバイジャンGP

 レース序盤にトップに立つと、チームメイトのセルジオ・ペレスを従えて快調に飛ばすマックス・フェルスタッペン。しかし突然、タイヤがバーストし、レッドブル・ホンダのマシンはコンクリートウォールにヒットしてストップした瞬間です。その後、マシンを降りたフェルスタッペンは感情をあらわにして、パンクしたタイヤを蹴っていました。(撮影・桜井淳雄)


第6戦アゼルバイジャンGP

 前半戦で印象的だったのはハンガリーGPでのルイス・ハミルトンの1台スタートと、このアゼルバイジャンGPの残り2周の超スプリントレース。すでにレースが成立するだけの周回数を走行しており、以前だとそのまま終了していたはずですが、残り2周でもレースを再開したのは驚きました。こんなシーンは初めてで、興奮しながらシャッターを切りました。F1は2016年からアメリカ資本となり、エンターテイメントを重視するようになりました。今までとは考え方は大きく違うんだなとあらためて感じました。(撮影・桜井淳雄)


第7戦フランスGP

 ランオフエリアに青と赤の縞模様が描かれているのが特徴のポールリカールで開催されたフランスGP。このレースではマックス・フェルスタッペンが残り2周でルイス・ハミルトンを逆転し、3勝目を飾りました。レッドブル・ホンダのパッケージとしての強さを目の当たりにし、タイトル獲得の可能性を感じた1戦でした。(撮影・熱田護)


第9戦オーストリアGP

 第8戦シュタイアーマルクGP、第9戦オーストリアGPの2連戦が行なわれた初夏のレッドブルリンクは最も美しいサーキットのひとつ。菜の花が咲く丘陵地帯にあるコースをF1マシンがハイスピードで駆け抜けていきます。前半戦でもっとも光ったドライバーの一人がマクラーレンのランド・ノリス。予選でも決勝でも安定して速く、オーストリアGPでも3位表彰台を獲得しました。(撮影・熱田護)


第10戦イギリスGP

 母国で通算99勝目を達成したハミルトン。レース後、絶対にファンの前に出てくると予想し待ち構えていました。実際にハミルトンが出てきた時は「やっぱり来たな」と思いつつ、シャッターを切りました。イギリスまではレッドブル・ホンダが5連勝中で、もしかしたら今年は勝てないと思っていたのか、ハミルトンのいつも以上に喜ぶ姿が印象的でした。(撮影・熱田護)


第11戦ハンガリーGP

 大荒れのハンガリーGPでフランス人のエステバン・オコンが自身初優勝を達成し、アルピーヌF1チームにも初めての勝利をもたらしました。2位にはセバスチャン・ベッテルが入り(後に失格)、アルピーヌとアストンマーティンのメカニックたちがゴール前のウォールに登って大喜びするシーンは感動的で僕もうれしくなりました。(撮影・熱田護)


第11戦ハンガリーGP

 年に数回ある荒れたレースでチャンスをつかめる選手が本物のドライバーだと思います。ハンガリーGPでアルピーヌのエステバン・オコンがチャンスをものにして初優勝を手にしました。このレースで角田選手は一時4位を走行していました(結果は7位)。いつかチャンスをつかんで、表彰台に上がってほしいですね。(撮影・桜井淳雄)


第11戦ハンガリーGP

 雨の中で始まったレースはスタート直後にクラッシュが発生。レースは赤旗中断の再スタートとなりました。路面が乾き始めたために各車がピットインしタイヤ交換をしますが、トップのハミルトンだけはそのままグリッドに着きました。長いことF1を取材していますが、1台だけのスタートは初めてのシーンでした。(撮影・桜井淳雄)


第11戦ハンガリーGP

 ハンガリーGPではスタンドに大勢の観客が集まりました。僕はお客さんもF1グランプリの一部だと思っていますので、ファンがサーキットに戻ってきたのはうれしいです。でもファンとドライバーたちが触れ合うシーンや、僕がお客さんのなかに入ってスタンドから撮影することはまだできません。一日でも早くそういう日が戻ってほしいです。(撮影・桜井淳雄)

【profile】 
熱田 護 あつた・まもる 
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦した後、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。取材500戦を超える日本を代表するF1カメラマンのひとり。自身の誕生日の9月28日に、ラストイヤーを迎えたホンダF1の戦いをまとめた2022年カレンダー『Honda Last Battle』(インプレス刊)を発売する。

桜井淳雄 さくらい・あつお 
1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。新型コロナの影響で昨シーズンの現場での取材を断念したが、今季からは再開。現在、鈴鹿サーキットの公式サイトで特別企画「写真で振り返る2021年シーズン」を連載中。