バスケットボール女子日本代表町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)インタビュー(後編)前編はこちら>>東京五輪の全6試合でスターターを務め、1試合平均25.6分の出場、7.2得点、12.5アシストを記録。準決勝のフランス戦でオリンピック記録となる…

バスケットボール女子日本代表
町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)インタビュー(後編)

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東京五輪の全6試合でスターターを務め、1試合平均25.6分の出場、7.2得点、12.5アシストを記録。準決勝のフランス戦でオリンピック記録となる1試合18アシストを達成。オールスターファイブにも選出された町田瑠唯に現在の心境を聞いた――。

――改めて銀メダル獲得おめでとうございます。まずは予選リーグから振り返っていただけますか。

「試合を重ねるごとに、いいチームになっていったなと思います。初戦のフランス戦で競り勝ったのが自信になって、勢いをつけられたかなと思います」

――予選リーグ第2戦、アメリカと対戦した際は69-86で敗れています。

「やっぱりアメリカは強いなと思いました。だけど、通用する。がんばれば勝てるな、とも感じました。自分たちが100%以上、全員が全部を出し切れたら、勝てない相手じゃないなと」

――第3戦のナイジェリア戦で町田選手は、この時点でのオリンピックタイ記録となる15アシストを記録しています。

「ナイジェリア戦は、個人的にはよくなくて......。試合の出だしで相手のゾーンを攻略できず、チームのリズムを作ることができませんでした。

 一度ベンチに戻って、冷静になれました。『こうしたらいいのか』、『ここを攻めたらいいのか』って。コートの中にいるからわかること、感じられることってあるんです。同じように、ベンチにいるからこそ見える部分もあるので」

――決勝トーナメント初戦のベルギー戦は、残り16秒、林咲希選手の劇的な3ポイントシュートが決まり勝利。アシストをしたのが、町田選手でした。

「打った瞬間、『入った!』と思いました。キキ(※林選手のニックネーム)がよく練習しているステップで、彼女のリズムとフォームで打ったシュートだったので。打った瞬間入るなという感じでしたね」

――予選のフランス戦に続き、ベルギー戦でも接戦を押しきる強さが今大会の日本代表にはありました。

「我慢ができましたね。自分たちのリズムじゃない時も流れがくるまでディフェンスをがんばれた。チームの長所を3Pシュートだと言ってくれる人も多いんですが、やっぱり日本はディフェンスのチームなので。自分たちのディフェンスを続けることが、自分たちのリズムを作り、相手のリズムを壊すことにつながるので」

――初の準決勝進出。その準決勝のフランス戦は、2Q(クォーター)途中まではリードを許す苦しい展開でした。

「予選リーグに続き2度目の対戦だったこともあり、フランスの負けたくないという気持ちが強くて、流れを最初に持っていかれた感じがありましたね。

 でも、日本は後半に強いと信じていました。しっかり後半も走れる。逆に相手は運動量が落ちてくる。だから、とにかくどんどん走ることを意識しました。みんなの動きがすごくよくて、緊張感のある試合でしたが、すごい楽しかったです」

――決勝のアメリカ戦はいかがでしたか。

「やっぱりすごいなって。世界一のチームはやっぱりすごい。高さがあるけど、小さいチーム顔負けの走力もある。何よりシュートの精度。日本もシュートに関しては負けてはいなかった部分はあったと思うんですが、ノーマークを絶対外さないこと、タフシュートでも決めきる強さが、アメリカにはありましたね。ただ、予選の対戦時に感じたように、勝てる可能性はあるとも思いました」

――改めて、今大会の日本代表はどんなチームでしたか?

「トムさん(トム・ホーバスHC)が『スーパースターはいないけど、スーパーチーム』と言ってくれたんですが、本当にそのとおりだなと。今回のチームは本当にチームとして戦えたなと思います」

――大勢の人に祝福されたと思いますが、誰からの祝福が最もうれしかったですか。

「う~ん、やっぱり本川(紗奈生※)かな。LINEで『おめでとう』ってひと言送ってくれました。私も彼女と一緒にオリンピックでプレーしたかったという気持ちもありましたし、本川にとっては悔しい気持ちもあるだろうなと。その気持ちがわかっていたからこそ、『おめでとう』のひと言がうれしかったというか、短いメッセージだからこそ、いろんな気持ちが沸き起こりましたね」
※本川紗奈生=町田が札幌山の手高校で高校3年間をともにし、3年時に高校三冠を達成したチームメイト。本川はドライブを武器にリオデジャネイロ五輪で活躍も、3Pを重視するHCの方針に合わず、東京五輪メンバーからは落選。



日本の銀メダル獲得に大いに貢献した町田瑠唯

――3年後のパリ五輪では、日本は追われる側に回りますね。

「毎年、日本だけでなく、他国もメンバーもスタイルも変わります。追われる立場になったとしても、いつもチャレンジャーだという気持ちが強いです。もちろん、日本のバスケットをもっといいものにしていく。チームとしても個人としてもレベルアップしていかないといけないと思います」

――米プロリーグWNBAの複数のクラブが町田選手の獲得に興味を示していると囁かれています。

「(所属する)富士通で優勝するのが目標であることは変わりません。ただ、Wリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)とWNBAはシーズンの時期がかぶらないので、挑戦できる可能性は十分あると思います。『絶対に行く!』とまでは言えないですけど、興味はありますね。英語は全然できないですけど(笑)」

――オリンピックのアシスト記録を樹立し、アシスト王にも輝きました。アシストの秘訣を教えてください。

「『視野めっちゃ広いですね!』とか言われるんですけど、視野はみんなと同じだと思います。『後ろまで見えてる』なんて言ってもらえたりもしますけど、さすがに後ろには目がないですからね(笑)。

 大事なのは、予測することかなと思います。後ろから味方が走ってきているから、私がドリブルでここまで行ったら、ここに来るなとか。ディフェンスの位置がこうなっているから、この選手ならこうやって動いてくれるだろうなと。そういう予測があってのアシストだと思うので」

――なるほど。

「ただアシストというのは、自分一人でつけられる記録じゃないです。パスを受けてシュートを決めてくれるチームメイトがいるから、アシストが記録されるわけです。私にとっては、アシストよりシュートを決めるほうが難しいので、みんなの動きとシュートがあってのアシストです。

 なので、オリンピックのアシスト記録も、それを評価してもらって選出していただいたベスト5も、私がどうこうというより、チームでもらったアシスト記録であり、ベスト5だと思っています」

――オリンピック期間中、勝ち進むにつれて世の中の注目度が増していくのは感じましたか。

「はい。試合ごとに私だけじゃなく、みんなのSNSのフォロワー数がすごい増えていってビックリしました。芸能人の方や著名人の方が『女子バスケすごい!』って書き込んでくださったりもして。

 インスタのフォロワー数が五輪前は3万人いかないくらいだったのが、今は16.4万人(インタビュー当時)まで増えました。大勢の人に試合を見てもらえたんだなと、すごくありがたいです。オリンピックを通して、女子バスケを知ってもらい、面白さ、楽しさを少しでも伝えられたかなと。

 10月に始まるWリーグで、もう一度、女子バスケを盛り上げ、より多くの人に女子バスケを見てもらいたいです。自分たちはバスケットをするしかできないので、これからも『女子バスケ面白い!』『バスケって楽しい!』って感じてもらえるプレーを続けていきたいです」

(おわり)

町田瑠唯(まちだ・るい)
1993年3月8日生まれ。北海道出身。Wリーグの富士通レッドウェーブ所属。ポジション=PG。身長162㎝。A型