8月21日・22日、鈴鹿サーキットにてスーパーGT第3戦が行なわれた。当初は5月末に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて8月下旬に延期。大会の名称としては"第3戦"だが、シーズン前半戦を締めくくるシリーズ4戦目…

 8月21日・22日、鈴鹿サーキットにてスーパーGT第3戦が行なわれた。当初は5月末に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて8月下旬に延期。大会の名称としては"第3戦"だが、シーズン前半戦を締めくくるシリーズ4戦目だ。

 その大会で、日産GT-Rが7年ぶりに表彰台を独占する快挙を成し遂げた。



圧倒的な速さで鈴鹿サーキットを制した日産GT-R

 今季のスーパーGTは、開幕戦から展開は「前年王者ホンダvsリベンジに燃えるトヨタ」の一騎打ち。これまでの3戦を振り返っても、ホンダとトヨタが表彰台の座を奪い合う構図となっていた。

 それに対して日産勢は、開幕戦から歯車が噛み合わずに苦戦の日々。表彰台争いに絡めないレースが続き、パドックでの日産の評価も風当たりが強いものになりつつあった。

 ただ、それでも気持ちをグッと抑え、日産勢が口にしたのは「鈴鹿で巻き返す」という言葉だった。

 というのも、日産勢にとって鈴鹿サーキットは、近年とくに相性のいいコースだからだ。昨年も日産勢は苦戦の続くシーズンのなか、鈴鹿で開催された第3戦、第6戦はともに優勝。とくに第6戦ではワンツーフィニッシュを決めるなど、ライバル陣営も警戒するほどの速さを見せていた。

 8月21日の午後に行なわれた公式予選、その日産勢に対抗したのは鈴鹿をホームグラウンドとするホンダ勢だった。ポールポジションと2位のフロントローを獲得し、5位、6位にもホンダのマシンが名を連ねた。

 しかし、日産勢も負けてない。4台すべてがQ2に進出し、3位、4位、7位、8位を獲得。ホンダを包囲するようなグリッド位置で決勝レースを迎えた。

 そして決勝が始まると、日産は逃げようとするホンダを追い詰めていく走りを披露。各車が途中のピットストップを終えた頃には、日産が驚異のペースアップでトップ4を独占し、後半戦はGT-R同士の優勝争いとなった。

 その4台のGT-Rのなかでも圧巻の走りを見せたのが、日産のエースMOTUL AUTECH GT-R(ナンバー23)を駆る松田次生だ。

 23号車は序盤、ピットストップのタイミングが合わなくて2番手から4番手に後退してしまう。だが、そこから渾身の走りで前方のマシンを次々とパスし、トップを走るCRAFTSPORTS MOTUL GT-R(ナンバー3)の背後に迫った。

 そして残り11周となった時、3号車がGT300車両に引っかかった一瞬の隙を見逃さなかった。松田は一気に勝負に出て、ヘアピンで追い抜きに成功。最後はそのまま逃げ切り、今季初優勝を飾った。

「ピットの作戦が若干失敗したなという感じはあったんですけど、それでも挽回していくことができました。クルマとタイヤが本当によかったですし、チームのみんなの『勝ちたい!』という気持ちが僕の走りにつながった。本当にみんなに感謝しています」(松田)

 三重県出身の松田にとって、鈴鹿は地元コース。年間チャンピオン争いのことを考えると、この1戦は是が非でも勝利を手にする必要があった。それらのプレッシャーにも屈しなかった走りに、2014年から松田とコンビを組むロニー・クインタレッリも驚いていた。

「次生選手の走りはすばらしかった。彼とはもう8年も組んでいますが、久しぶりにドキドキを味わいました。本当にとんでもない走りだったと思います。彼を褒めてあげてください」(クインタレッリ)

 23号車はシーズン序盤、散々なアクシデントに見舞われてきた。第1戦・岡山では他車との接触でリタイアとなり、続く第2戦・富士ではスタート後数周でエンジントラブル。昨年から得意としている今回の鈴鹿サーキットでの勝利は、後半戦に向けた起爆剤となり得るはずだ。

 そしてなにより、モータースポーツファンにとってうれしいのは、日産勢の全車が高いパフォーマンスを示したことだろう。2位には平手晃平/千代勝正の3号車、3位には高星明誠/佐々木大樹のリアライズコーポレーションADVAN GT-R(ナンバー24)が入った。

 日産陣営が表彰台を独占したのは、2014年の第3戦オートポリス以来。実に7年ぶりの快挙だ。レース後、日産のブランドを背負ってきたドライバーたちから、自然と笑顔がこぼれていた。

「日産勢がワンツースリーを獲れたことはすごくうれしい。ここまでの日産は少し元気がないところもあったので、久しぶりにいいニュースを届けられたのでよかった」(千代)

「ここまでやってきたことが、やっと実ったというか、ワンステップ進めることができました。ここから優勝を目指して向かっていけると思います。ひとつ結果を出したことでチームの士気も上がるし、もっとがんばらなきゃいけないという気持ちにもなれます」(佐々木)

 昨年はコロナ禍の影響で大会カレンダーから外れていたスポーツランドSUGO(第5戦)やオートポリス(第6戦)が今年は復活する。鈴鹿サーキットと似た特徴を持つだけに、9月から始まる後半戦では日産がさらに力強い走りを見せてくれることだろう。

 シーズン序盤はホンダとトヨタが主役の座を争ったが、後半戦は再び「三つ巴」の戦いに発展していきそうだ。